しばらく更新できず・・・・羽もげの話が頓挫しておりました。

続きです・・・・・


この病院のギャラは破格であった。


救急外来は一番不人気な部署で、きつい、きたない、苦しい、恐い、心の葛藤がある(優しくなれない私・・・みたいな)・・・・あげればキリがない。


それに救急車来院数が恐ろしく多い。


月に300~500件。殆どがホームレスであり、泥酔状態。


そして汚れている。


それも同じ人が日に何回も来たりする。そう・・・・タクシー変わりである。


ここいらのホームレス達はどのようにして治療費を支払うのか、、、、、もちろん国である。


このあいりん地区のシステムが少し一般と違う。


私達は【行旅:こうろう】と読んでいたが正式には【行旅病人及行旅死亡人取扱法】とい(こうりょ)と読む。



【行旅病人及行旅死亡人取扱法】とは・・・


 旅行中に病気になり行き倒れになった人の救護や、死亡した人の埋葬などに関する 取り決めに「行旅病人及行旅死亡人取扱法」(以下、行旅法という)があります。


行旅法は各市町村によって実施されています。住所がなく(例:誰かの家に居候をしている。)、また本人の代わりに医療費を払ってくれるような身寄りのない人が救急車で運び込まれたりした場合にこの制度の適用が考えられます。


また、市町村によっては「必要に応じて、外国人への行旅法の適用に際し、出身国の大使館に連絡をする」と定めているところもあるので、「難民認定申請をしているので、大使館には知らせないで下さい」と伝えることが大切です。


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と・・・難しく書いてあるが、要は住所不定無職でお金がない人が病気になって、救急車で運ばれた場合には国が面倒を見ますよ。という法律なのである。


治療費は全額が国から出る。また入院した場合に、日用品代として3万円程度が1人に支給される。


この日用品は入院してから何週間かしないともらえないので、皆それが出るまで辛抱して病院にいるのである。


この日用品はオムツ代や洗濯代など入院に必要な雑費に充当するため、支給されるまでは病院が負担をする。


この日用品代は彼達にとってはとってもすごい収入源で、これがあるから嫌な検査も採血も我慢できるのである。


このシステムを利用するには、必ず救急車に乗ってこないと適応されないのである。


救急隊員から運びましたという証明を出してもらう必要があるのである。


だから皆、救急車を呼ぶのだ・・・・寒くでアオカン(外で寝ること)が辛いと救急車を呼び、暑くてたまらんと救急車を呼ぶ・・・・


もちろん皆、酒びたりで不衛生、不摂生な生活で栄養状態も悪いから体のどこかは悪い。


殆どの人が肝硬変と慢性アルコール中毒、びらん性胃炎という病名がついている。


しかしこんな法律があることを殆どの人が知らない。


西成の病院ではこの法律が健康保険や国民保険よりも一般化されており、時々保険書をを持っている患者さんがいると、「へぇ~保険書久しぶりに見た~」と珍しがる私達であった。


先ほども「アオカン」と書いたが、ここ西成も芸能界のような略語が多数存在する。


一部一般的(西成的)な用語として私達に日常使っていたものをあげると・・・


「アオカン」・・・外で寝ること(野宿)・・・なんでって?「青空簡易宿泊」の略らしい。


「ドヤ」は「宿」の事、単に反対読み。簡易宿泊所を一般的(西成的)には言う。


入院するときに患者さんから色々と聞くのだが、これらの用語を使った方が聞き取りが早いのである。


「どこで寝てたん?アオカン?ドヤ?」


「・・・・・アオカン」


「ふーん・・・どの変で寝てたん?」


「四角公園とこ」(あいりん地区の小さい公園)


「そうか・・・・」


「ドヤに泊まれへんようになって何日」


「正月臨泊におってそれからずっとアオカンや」(臨泊とは正月だけ作られる宿泊所で南港の出島みたいなところ)


「センターは行ってないのん?」


センターとは日雇いの仕事をもらえるところで上には病院もある。ここもタダで診てくれるが、酒を飲んでいると入れてもらえない。殆どの人が酒を飲んでるからいけない。


「そんな行ったって仕事あらへんがな」


「そやな・・・でもアオカンしとったらシノギにやられるで」


シノギ・・・説明が難しいがホームレス専門に襲う暴漢みたいなもの。


入院するとアナムネーゼという患者さんの病歴や家族、嗜好など詳しい背景を聞いて記載する紙があるが。。。。。一般とかかけ離れていて慣れるまでに時間がかかった。


、例えば来院までの経過には「シノギにやられて頭部外傷」とか、睡眠という項目には普通は睡眠時間8時間とか書くのだけども、アオカンでずっと寝てるとか・・・・


排泄なんか聞いても答えれない、失禁状態だったり、トイレでしないからだ。


家族も【ない】が普通。  


食事・・・・「あるときに食べる」とか「炊き出し」とか・・・・


炊き出しとはボランティアグループが朝と夕にホームレス達に食事を配るシステム。


こんな所での病院勤め、ほんま目からウロコが毎日で私の既成概念がどんどん書き換えられたのである。