僕は自分の靴のつま先を
先生の靴と同じように
玄関のほうに向けて
置きなおした。

「そう。よくできました。

進ちゃん

こうしたらどうでしょう。

靴を脱ぐ。
先生のお家に上がる。

そしたら?

そうね。

体を
ぐるぐるっと玄関のほうにむける。

そう

先生のお家の
玄関のドアのほうに
お顔がいくようにしてごらん。

それから靴をドアのほうに向けて揃える。」

先生は
もう一度靴を戻して

「今先生が言ったことをやってみましょう。

いいわよ。ゆっくりやりましょう。

できなくても大丈夫。
やってみようか。

分からなかったら
分からないって言うのよ。

先生は進ちゃんが
できるまで教えるから。

大丈夫。

先生はあなたのピアノの先生だから。

ゆっくり
やってごらん。」