うつ病の診断書があれば休職できる?休職期間の給料は?
うつ病にかかる方が増えている中、休職をせずに、治療を受け続けながら、働いている方がかなりの数おられるようです。
ある調査結果によると、うつ病治療中の方で休職制度を利用して、休職している方は全体の5%ほどに過ぎないという報告もあります。*1
ということは、現実には、休職せずに、仕事をしながら治療を並行して行っている方がほとんどであるということでしょうか。
しかし、うつ病になってしまった原因が、職場にあるストレスが大きい場合、その原因のある場所で頑張り続けることは、治療上、回復への期間を長くするだけではないでしょうか?
そこで、今回は、「うつ病の診断書があれば休職できる?休職期間の給料は?」ということで、まずは、休職することの是非について考え、そして、休職するならば必要となるものなどについて整理し、最後に、休職期間の給料はどうなるのかについて触れてみたいと思います。
うつ病の治療に「休職」は必要なことか?
まず初めに、「休職」という制度は、大抵の会社に設けられているものでありますが、法律で定められた制度ではありません。
ですから、この制度を設けていない企業もあるでしょうし、「休職」に関する細かな規定も、企業ごとに異なります。
まずは、自分の勤め先には「休職制度」はあるのか、そして、その詳細な規定についても、よく就業規則を読んで、チェックする必要があります。
それを踏まえた上で、「うつ病」治療における「休職」の必要性について、考えてみたいと思います。
うつ病の治療の基本は、薬物療法と精神療法、それに、休養でしょうか。
この休養のために、人によっては、「休職」が必要になる場合もあるかと思います。
しかし、すべてのうつ病の方にとって、休養する方法として「休職」が必要になるわけではありません。
職場から離れる、つまり、環境調整という意味で、「休職」したほうが治療上、望ましいと考えられる場合には、「休職」という制度を利用することになるかと思います。
ここで指す「うつ病」を従来からある「定型うつ病」であると考えた場合、うつ病患者さん本人が「休職」を望む場合は少なく、実際には、医師の判断により「休職」に至ることの方が多いように思われます。
しかし、昨今話題になり、増えつつある「非定型うつ病(新型うつ病)」の場合、従来型のうつ病のケースとは、また、「休職」に対する考えが異なってくるように思われます。
つまり、患者さんの側から、「休職」したいと医師に申し出た場合、うつ病を治したいために「休職」を望んでいると考えるより、単に「休みたいだけ」という理由で「休職」を考えているケースが多いのではと思われるからです。
この辺りのことについては、うつ病の治療にあたっている精神科医も、「休職」をしたいと申し出られた会社側も、その判断に慎重にならざるを得ない立場に置かれていると思われます。
「休職」と簡単に言いますが、「休職」ということに関しては、休職する患者さんの方にも、休まれる会社側にとっても、それ相応のデメリットが伴うものです。
「休職」することが、うつ病の回復につながり、意味のあることと、患者も会社側も、そして医師も考えるならば、「休職」をすることは良い決断だと思います。
しかしながら、この三者のうち、いずれかが難色を示した場合は、「休職」について、再度、よく検討して見る必要があると思います。
うつ病のタイプによっては、休むことが、うつ病の回復にマイナスにつながる場合もあると思われるからです。
ですから、単に、「休みたい」が目的の「休職」はあまりオススメは出来ません。
ある研究によると、休職した方のうち、休職中あるいは復職後に、結局、約4割の方が退職することになるとの結果も出ています。*1
*1:関連記事:「うつ病患者の再就職を支援してくれる機関はあるの?」
ですから、「休職」については、より一層、慎重に判断していただきたいのです。
しかし、明らかに従来型のうつ病である場合は、十分な休養を取り、会社のことを忘れて、「休職」することはプラスに働く選択であると思います。
ここまでのことをまとめますと、休職に入る場合は、患者、医師、会社の三者が「休職」について合意した上で、この制度を利用することが、治療上も、休職後の復職の際にも、重要なポイントになわれます。
とにかく、「休職」するか否かについては、慎重に判断して下さい。
「うつ病との診断書」があれば休職は可能なのか?
では、本当に、「うつ病」との診断書があれば、休職は出来るのでしょうか?
先に述べたように、既に、三者間で休職することに合意が得られているのであれば、診断書があれば、休職は可能であると思います。
この際、医師が、まだ、「うつ病」との確定診断が出来ていない段階であったならば、「うつ病」との診断書は書けない場合もあるかと思います。
その場合は、「うつ状態」との診断書であっても、会社に提出する診断書としては十分機能すると思われます。
しかし、三者間での合意が出来ていない場合や、患者の「休みたい」気持ちばかり先行している場合は、医師は患者の「休みたい」が故の診断書は書けない、書いていただけないと思います。
医師は、患者の休みたいという意志よりも、治療上、休養が必要であると判断した場合に、休職の必要性を記した診断書を書いて下さるわけです。
ですから、医師が休職してまでの休養は必要ないと判断すれば、診断書は書いていただけないでしょう。
ですが、最近は、医師によっては、診断書は保険の利かないものですから、診断書を書けば、書いた分だけそっくりその代金が医師の手元に入ってくるわけです。
そのような点を悪用(?)して、患者に言われたままの診断書を書く医師も存在するようですし、患者の方も、何軒も医療機関を巡って、「休養のために休職が必要」との診断書を書いてくれる医師を探し求めるというケースもあるそうです。
このような医師や患者がいるため、会社側の対策としては、会社が指定する医師や医療機関、あるいは、会社の産業医による診察を再度受けるように指示する場合もあるようです。
このような現実もあるので、「うつ病の診断書」の存在云々だけで「休職」が必ずしも可能であるとは言い切れないのが現状であると思います。
休職前にすべきこと、準備するものなど
いざ休職が決まったら、休職前にすることは、提出書類の準備です。
その書類とは、
- ・休職願
- ・診断書
- ・傷病手当金関係の申請書類
といったところでしょうか?
休職中の給料についての法的な決まりはありませんが、大抵の会社では無給のようです。
これを補ってくれるのが、「傷病手当金」です。
これは、会社が支払ってくれるのではなく、健康保険の中の制度の一部です。
金額的には、給与の2/3の額が毎月、支払われます。
期間は、最長1年半です。
ただし、この傷病手当金を受け取るためにも条件がありますので、自分がその条件に該当するかどうかを、前もって確認しておいて下さい。
傷病手当金の詳細については、以下のサイトをご覧下さい。
参考サイト:「全国健康保険協会 病気やケガで会社を休んだとき」
まとめ
以上にまとめましたように、「うつ病の診断書があれば休職できる?」ということについては、状況によりけりで、一概に、うつ病の診断書があることが、休職の決め手にはならないといったところでしょうか。
また、「休職中の給料は?」ということに関しても、大抵の会社は、休職中の給与の支給は行っておりませんので、健康保険内の制度である「傷病手当金」が給料の代わりとなり、これを生活費に当てることになると思います。
しかし、この傷病手当金を受給するためにも条件がありますので、確認をして下さい。
いずれにしましても、「休職」という行為には、それなりのデメリットが伴います。
治療上、どうしても「休職」が必要な場合もあると思いますが、単に休みたいがためという理由などで休むことは、百害あって一利なしではないかと思います。
この辺りのことについても、よく検討した上で、「休職」するかどうかを考えて下さい。
そして、一般的な常識的な医師が診断書は書けないという場合に、無条件に患者の言うとおりに診断書を書いてくれる医師を探し求めて、診断書を得るというような行為は、謹んだ方が、後々のためにもよろしいのではないかと思います。
このようなケースは、医師・患者双方にとって、最終的に良い結果はもたらさないと思いますので。
最後に、休職から「復帰をされた後」の職場内での処遇をご心配されてる方、上司や同僚の方はおそらくこのような本を読んでいるのではないでしょうか。