おとみおエッセイ
『一輪花』
「ひとりで靴が履けてえらいね」
「上手にスプーンが使えてすごいね」
「自分でお布団に入ってえらいね」
子どもの頃は何でも褒められて
「走ったら転んだね、危ないから歩こうね」
「こぼれちゃうから、両手で持つんだよ」
失敗しても優しく教えてもらえて
何度でも繰り返し教えてもらえて
ダメダメって頭ごなしに
叱った所で成長しないことだって
大人は気がついている
だから特別な一輪の花を愛でるように
言葉という栄養を与え 水のように愛情を注ぎ
枯らさないように見守って 陽を当てて
何色の花が咲くかと 心を躍らせる
けれど大人になれば
「大人のクセに」「大人なんだから」って
何でもできて当たり前
他と違う色を出せば 根ごと摘みとられてしまう
みんなと同じように動け
イヤなことがあっても笑顔を絶やすな
これが常識なのだろうか
失敗して怒られて
失敗しなくても怒られる
困っていても 助けてほしくても
「自分で答えを探しなさい」の一点張り
答えなんてどこにも転がってやしないのに
それは教育ですか?躾ですか?
せめてヒントのひとつでも
応援してるのひと言でも
与えることは難しいのだろうか
大人になればなるほど 雑草のように
踏まれても挫けない力が必要で
雨も嵐も上に伸びる力に変えることが必要で
いつからか花のような可憐さではなく
強い雑草になれたらと願う 自分がいる
子どもの頃は 失敗して泣いて挫けても
大人に応援されて 手を差し伸べられて
次の瞬間には忘れて笑顔になって
またひとつ またひとつ 強くなった
教わらないことも平気でやった
それが正解かわからなくても
失敗を恐れることもしなかった
踏まれる痛みを知った大人にこそ
失敗するリスクを知った大人にこそ
もっと胸を張って咲き誇れるように
特別な一輪の花として大切にすることが出来たなら
となりで無邪気に笑う子ども達と同じように
真実の『華』として輝くことができるだろう
作:おとはたみおり