優子ママのこと ③はコチラ

お焼香をさせてもらおうと、
優子ママのいるお部屋に行くと、
優子ママの妹さんが挨拶に来てくれた。



わざわざありがとうございます。
楽しい事が好きだった人なので、明るく送ってあげたいんです。
どうか、顔見て行ってあげてくださいね。
本当にもう、わーって、楽しい人だったんで。


涙声でそう言われながら、

久しぶりに会う優子さんは、
私の憧れた、真紅の口紅をつけ
美しい顔で眠っていた。

優子さんは、あの頃のまま、
棺に納められても、ただ眠っているだけに見えた。
久しぶりに優子さんに会ったのに、
それは、もう話すことも、笑うことも出来ない状況だった。

優子さんは
死にたいと思うほどの世界にいたのに、
それに気がつかなかった自分を軽蔑した。
きっと何度もやり直そうと、自分を励ましながら、
頑張らなくちゃいけないと、自分を追い詰めただろう。

やり直そうとしていたのに、
私は優子さんを拒絶してしまった。
弱い優子さんを、私は受け入れることが出来なかった。

後悔しても仕方がない。
何も出来なかったくせに、後悔するなんてズルイ。
こんな状況になってから、今さら都合よく悲しんでも、
なんの力にもならない。


私は帰りの車の中で、
ただただ、ひたすら泣いた。
途中FMで、「TRF」の“寒い夜だから”が流れて
この曲は、優子さんと何度も一緒に歌った曲で、
その歌声を思い出して、
自分でも、どうしようもないほどに涙が出てきてしょうがなかった。

彼はそんな私を見守るしかなくて、
ずっと背中を撫でてくれていた。

人なんて、何を考えているか、
本当のことはわからない。
相手を理解したつもりでいても、
きっとそれは自己満足でしかないのかもしれない。

人間なんて、自分の利益を満たすことに必死だ。
でも、その利益が何なのか、気がつくことなく、
今どうしたらいいのか、それを明確に認識することも出来ずに、
自分の人生をリセットしてしまう人もいる。

死を選ぶことは、必ずしも悪いことではない。
死に解決を求めること、
自殺は人間だけに与えられた特権だ。

私がもし、ずっと優子さんと仲良くしていたとしても、
あの頃の私では、優子さんの支えにはなれなかっただろう。

生きているから、疲れる事もある。
思いやりを持つ余裕のない時もある。
自分のことだけでいっぱいになる時だってある。
そんなことさえ、私は気がついてあげられなかった。


優子さんは、私にとって忘れることのない人。
あの輝くような笑顔を、私は今でも思い出す。
あなたという人を文章に残したかった。



もう何処にも いる場所さえなくて
都会の合鍵は 今は置きざりで
もし とても傷ついた羽癒す役目を
あなたが今でも持ってくれたなら・・・

trf
/小室哲也  「寒い夜だから」