推定14歳
交換日記の自分の日記


中学2年の時に、
友達と3人で交換した交換日記だ。

1冊のノートだが、
1行飛びに書いてある上に、
まともなことが書いていないので
1冊すぐ読み終わる内容になっている。

ただでさえ中身がないのに、
そのほとんどは彼氏が欲しいとか、
先生が嫌いとか、
好きになった歌手の歌の詞とかを
ヘタ字・色ペンでどうでもいい事を読みづらく書いてある。

「私ね、直人(ナオト)と付き合うことになるかもしれない」

ノート1ページ目から、3人共に口をそろえて
彼氏が欲しいデートしたい
と熱望しており、
ようやくその願いは叶えられたようだ。

美奈子昨日、直人に電話してたね。
すっごいがんばってるじゃん!


相変わらず、頑張る矛先は勉強以外だ。
どうでもいいことに熱心な様子が伺える。

友達の書き込みを見ると
私は積極的に直人にアプローチしたようだ。

 
その友達の書き込みから二日後・・・。

私は直人と明るい青春を迎えます。
昨日、直人から電話があったんだよ。」


直人:「ずっと前から言おうと思ってたんだけど、
    美奈子が一人になっている時がないから言えなかった。
    付き合ってくれる?」

私がふざけていると、

直人:「俺マジだよ。」

やめときなさい。
その女は、ろくな女じゃないから。

だってさ、そんなこと言われたら
別れる時、別れられないよ。
直人って優しいから、人の気持ち優先しちゃうし。
何今から別れること心配しているんだろう・・・。


ほら、言っただろ!
ろくな女じゃない。


このノートでは、その後直人とのことに触れていないが、
私の弱い脳細胞の記憶では、
何度かデートした後、
直人とはすぐに別れてしまったと思う。

別れたというより、友達に戻ったのだ。
もともと友達の延長のようなもので、
愛や恋と言うよりも、恋愛ごっこという言葉がふさわしい関係だった。

もちろん、キスどころか、手も繋がなかった。
と、
思う。


その後、私と直人は現在も
大切な親友というポジションを、ずっと維持している。

彼の中で私は、
あの電話での告白以来、
女というカテゴリーには所属していないのだ。
いや、あの告白自体、間違いだったのかもしれない。

私はよく、直人の家に泊まったり、
一緒に旅行をしたこともあるが、
チラリとも、一切怪しい瞬間を迎えたことはない。

直人のパジャマのシャツを私が着て、
直人がズボンを着て、同じベッドに寝るという
恋人たちにしか起こらない、“パジャマ共有の時
を迎えたこともあるが
間違いが起ったことは、1度たりともない。

特に大きな声で言う必要もないと思うが、
自分を励ます意味でも注意書きしておきたい。

※おそらく、私の体は
 成人男性の性欲を刺激するに足りるだけの
 必要最低限の要素は装備されている。

思春期の、多感な年頃を一緒に過ごしたにも関わらず、
いい加減、何も起らないことを少し疑問に思ったこともあり
直人ホモ説も浮上したが、
彼は23歳の時に結婚し、1児の父にもなった。
直人の下半身センサーに異常はなく、
ホモ説は却下された。

彼の中で、私は本当に友達なのだ。
その証拠に、朝まで飲んでいた帰りに
吉牛へ連れて行かれ、朝定を割り勘で食べたこともある。

後にも先にも、
私を吉牛へ連れて行ったのは、直人だけであろう。

直人は結婚してから少し疎遠になったが、
2年前離婚をし、またよく遊ぶようになった。
直人の子供は奥さんが引き取った。

最近では、お互い老後の心配をするようになり、

40歳、いや50歳になってもお互い独身だったら、
籍しよう。

と言っている。

老後の備えは万全です。