推定15歳
清子嬢との交換日記より
自分の恥さらしポエム


私は今夜、M町の坂をのぼっていって
Aくんとの思い出に浸ってきた、未練がましい女です。

私はふられたようだ。
その悲しみをポエム調に書いている。

自分で書いたわりには、ふられた悲しみが伝わってきて、

今更ながら自分をなぐさめたい。
確かAくんは神奈川からの転校生だったと思う。
私にしては直球で勝負したようで、
すぐに告白したが、すぐにふられたのだった。

どうでもいいが失恋の痛手を背負い
夜フラフラ出歩いている自分が心配だ。


あの日の出来事がまるで
昨日のことのように、
目をつぶると熱くなって思い出すの。

もうすでに恥ずかしい。
ノートを閉じてしまいたい。
昨日のことのように、とか言いながら

あの日から今日まで数日しか経っていないに決まっている。

難破船を歌いながら自転車で坂を上って・・・
あの時、私がここで、あの人がここで
やっぱり未練ぽくて
でもその時だけって思って
あなたの座っていた場所に座りました。

未練がましい!
暗い、暗すぎる!
苦しい恋を忘れるために
彼との思い出の場所に行くなんて、
悲しすぎる!
しかも、Aくんとの思い出の場所はそこだけ!

星好き?
って聞かれて、
やっぱり今夜も星がきれいで
見つめていると涙が出てきちゃうし・・・バカみたい

バカすぎる。
星なんて、オリオン座しか知らない上に、
視力も悪かったから見えていないはずだ。

あなたとの思い出を少しずつ消していくことが
あの人をあきらめることになるのかよくわからなくて。
考えれば考えるほど泣きたくて涙出てきて、
ああ、ふられたんだなって思って、
やっぱり軽い子が好きなんだね。

軽い子が好きな男なんてやめておきなさい。

私本当は、おとなしい子じゃないのに
おとなしい子をきどって、
あなたの好きな子になれなくて
もっと本当の自分を見せていれば
こんなことには・・・
ならなかったのかもしれない・・・。

いえ、本当の自分をみせなくて
本当によかったと思うぞ。


この時の苦しみも、悲しみも
この時はきっとつらかっただろうけど、
時間が経てば、痛みは心に馴染み、
いつか忘れていく。
どんなにつらいことも、苦しいことも
いつか自分の一部になって馴染んでいく。

難破船など歌わなくても、
泣いて瞼を腫らさなくても、
こんなにツライ思いをしながらポエムにまでしなくても、
数日たてば、秒速で忘れていることを自分に教えてあげたい。

事実、すでに2ページ後には、

ヴァレンタインデーのチョコレートを
他の男の子、カズ君にあげる決意したポエムを書いている。
なんという切り替えの早さだ。

一人の夜、あなたの夢をみました。
やっぱりあなたをとても好きなんだ。

:Aくんにふられた翌週に書いた、自分の日記である
非常に都合よく気持ちを切り替えているのが笑える。

ひやかされてもいい、あなたに告白したい
でも、過去が怖くて、勇気がなくて
またあなたを追いかけて、後ろ姿を見つめるだけ
また、あなたの靴をそろえるだけ、リボンを直すだけ

下駄箱のうわばきを、キレイに揃えたり、
うわばきのリボンを結びなおしたり、
ロッカーの体育着をたたみ直したりという、
一見不気味なストーカー行為がこの時も行われている。
いくら好きでも、他人の私物にさわってはいけない!
いくら男の子が鈍感でも、

 

ロッカーの体育着がきちんとたたみ直されていたら
絶対気がついて、気持ち悪がられるだろう。
しかし、カズくんとの過去って何なのだろう・・・。


今はまだ、あなたの存在に憧れているだけなのかもしれない
そんな気がする・・・。

存在というより、その恋は妄想だ。
はやく目を覚まして欲しい。