推定15歳
洋子嬢からの手紙

洋子嬢はこの手紙で、また3番が大好きだと言っている。

前回
、洋子が植木君を好きだということが発覚し、
私は非常に驚いたので、
この3番への思いは大変疑わしい。

15年以上時を経てなお、あらためて植木君ファンとなった私としては
洋子嬢の気の多さに軽い殺意さえ芽生える。


3番に彼女が出来たことをひどく悲しんでいるようだ。
その彼女は、ユリちゃんという後輩らしい。

ユリのお姉ちゃんはすごく怖いし、
私が3番を好きなことがばれたら、絶対呼び出されてしまう

と書いている。

ユリちゃんのお姉ちゃんは、すっごい怖いヤンキーらしい。
当時のヤンキーは本当に怖かったのだ。

ただ好きなだけなのに、
呼び出されるという理不尽なリスクを背負わされて気の毒だ。


多分、植木君を好きだと言っていたのは、
3番を好きになる少し前だろう。

私の植木君より、3番が魅力的と言うことに納得いかない。
15年以上時を経て、いつのまにか私は
すっかり植木君びいきだ。


3番が好きでたまらないと、何度も書いているが、
植木君への思いを知っている今の私は、
いまひとつ素直に応援できない。


私に好きだと熱烈に気持ちを伝えるくらいなら、
怖いお姉ちゃんの呼び出し覚悟で
3番にラブレターでも書いて玉砕したほうが、
目に見えた効果が期待できるはずなのでお勧めしたい。


3番は、運動会でケガをしたらしい。
グルグル巻きの包帯が痛々しいと書いている。

お風呂の時が大変そうだと、どうでもいい事まで心配している。


私はみそっぴにするか、黒田君にするか悩んでいるらしい。
もう、悩む時点ですでにおかしい。

付き合う人を悩むならともかく、
好きになる人をどっちにしようか悩んでいるのだから
勘違いにも程がある。

そんなのは好きではないのだ。

そんなどうでもいい悩み事に
洋子嬢は真剣に答えてくれていて申し訳ない。

ハンバーグにするか、
トンカツにするか迷っているのと同レベルなので
ほっといてよい。


恋愛というものをどう考えているのか、
15歳の自分を問い詰めたい。


みそっぴと黒田君は、現在記憶にもないくらいだから、
それほど好きでもなかったのは明確だ。

手紙でわざわざ悩んでいるあたり、
好きな人のことで友達と共感を得たかったのだろう。

誰か好きな人がいれば盛り上がれた、どうでもいい時期だ。


無理やり誰かを好きになるという得意技は、
大人になってから発揮することが望ましいが
その能力は記憶とともに消えた。


この手紙の最後に、こんな質問が書き記されている。

Q1
ある日、美奈子はデートしているところをフォーカスされてしまい
学校中に知られてしまいます。

さてあなたはどうしますか?
次の中から選んでください。

① 私に似た人だと言い張る
② 素直に認める
③ 写真を破いて、撮ったやつを殺してやると叫ぶ



「うーん、ばれてもいいんで、自慢します。」
じゃだめですか?


これは、心理テストでもないようで、
聞いてどうするつもりなのか
質問の意図がよくわからない。

フォーカスするという言葉が時代を物語っていて寒気がする。

何の脈絡もないどうでもいい質問で答える気にもならないが
15歳の自分はなんて答えていたのだろう。
③でないことを祈る。


しかし、
この質問の意味は、次に手にした手紙であきらかになっている。