推定14歳
洋子からの手紙



この手紙には、洋子嬢の新しく好きになった男の子の事が書いてある。

どうやら、前に書いた跳び箱に隠れている暇人の男子らしい。
ならばあの手紙で心配していた、
里恵ちゃんとの夏祭りのその後が気になる。

しかし、
私はもっと気になる文字を見つけた。

植木のこと、
私、本気っぽいんだよ。





・・・・・・・・。


洋子の新しく好きになった人。
それは、植木君だったのである。

初耳で非常に驚いたが、
15歳だった自分はどう思ったのだろう。

今の今まで、洋子が植木君を好きだったという事実は
私の記憶庫に存在しなかった。

わたしがみそっぴという、
記憶にもないどうでもいい男の子を好きになっている間に
洋子嬢は植木君に思いを寄せていたようだ。

あれほど好きだった植木君なのに、
私は何事もなかったように、
洋子嬢と植木君の恋愛がうまくいくことを応援していたのだろうか。


それでいいのか自分!
考え直せ!


その手紙には、
これ読んだら、細かくちぎってゴミ箱に捨ててね
と書いてあるのに、私はちぎるどころか捨ててもいない。

洋子嬢も、15年の時を越えて、
捨てて欲しいほど恥ずかしい内容の手紙を、
大人になった美奈子に読み返され、
尚且つ他人に公表されているということまでは、
当時想像出来なかったであろう。


希望に添えずに申し訳なく思う。


というか、手紙をちぎる意味がわからない。


私は植木君のことをもう忘れてしまっているのだろうか?
大人になっても植木君を思い出すほどに好きだったはずなのに!

自分で自分を疑う。

植木君なら尚更、里恵嬢なんかとデートさせてはいけないじゃないか!

里恵嬢にリードされてキスしていたら、私だって泣いてしまう。
15歳の自分には、昔好きだった人をもう少し気にしてほしいが、
自分の気持ちの切り替えの早さを、今は尊敬する。


私が行って阻止したいが、どうにもならない自分がとてももどかしい!


跳び箱に隠れていた暇人が植木君だったのもショックだが
植木君には跳び箱なんかに隠れていないで、
野球部の練習を真剣にやってレギュラーになって欲しい。


植木君は里恵嬢と、お祭りに行ったのだろうか。
今更ながらとても気になる・・・。