推定14歳
サヤカからの手紙



サヤカは泣く子も黙る、いわゆるヤンキーだった。
学校にもあんまり来なくて
授業に出てくることはほとんど無かった。

色が白くて、さらさらの脱色した髪が光に透けて、それが妙に色っぽかった。
制服で学校に来ることもなければ、上履きも置いてなくて
いつも学校の来客用のスリッパを履いていた。
同じクラスで家が近所だったから、学校に来ているときにはよく話をした。

彼女を学校で見かける時はいつも
トイレか中庭の隅でタバコを吸って仲間と固まって時間を潰していて、
給食を食べたら家に帰るような、私よりもいい加減な生活だったが
彼女の投げやりの潔さには感心するばかりだ。

今、無理やり社会の授業に出させられてさ、
つまんないし、わかんないから手紙書いてまーす。

哲男のこと、ほんと頑張んなよ!
アイツ、あんがいシャイなのよー。
でもって、優しいところもあるんだよー。
ま、そんなのどうでもいいけど、ヨロシクやんなねー

サヤカが取り持ってあげるからさ!


手紙の最後はこう括られている。

気にいんねーやつがいたら、サヤカに言いなよ!
シメテやるからさ!



ありがたいんですが、怖いです。


いい子だった。
サヤカは優しい子だった。

私が具合悪くて早退する時も、
家まで送ってくれてずっと心配してくれたし、
いつも遠くから、ずっと私を見守ってくれていたように思う。


彼女は人一倍淋しがり屋だった。
だから相手が淋しがっているということを、とても敏感に感じたのだと思う。


彼女はある日、手が付けられないほどに学校で暴れ、
しばらく学校に出てこなかった。
そして親戚のいる、大分の叔母さんの家に預けられることになり、
誰にも挨拶することなく転校していった。

私は彼女の寂しさがわかるほど、自分に余裕が無かった。
彼女の痛みも、悲しみも、何ひとつわかってあげられなかった
とても未熟で弱かった私。

元気でいるかな。
暴れていないかな。