推定15歳
千葉県 真理子嬢からの手紙


歌手の尾崎豊さんが逮捕された頃のようだ。

合格おめでとう」で始まっている。
私は高校に合格したようだ。
おめでとう。

真理子嬢は、もう学校に行きたくないと書いている。
もう受験も終わって毎日自習なのだそうだ。

自習中に彼女がしていることが書かれている。

雑誌を読みながら、ウォークマンでバービーボーイズを聞いて、
スカートの裾上げしてたの。


おまえ、自分の部屋でやれ!

どう考えても教室でやる行為ではない。
裾上げなんて家でやれ!

案の定、先生に怒られ、すべて没収されたことをかなり怒っている。
短いスカートを注意され、今度は長いスカートで行ってやるとも書いている。
先生に対するその反抗の熱意は別のものに向けるべきだ。

この手紙は“ムカつく“のオンパレードだ。
こんなにムカつかれて、読んでいるこっちがムカついてくる。
そんなに怒らなくても、もうすぐ卒業だから安心しろ。

先生も嫌い、学校も嫌い。毎日つまらなくてしょうがないらしい。
まだ15年しか生きていないのに、
かなり深刻に人生に絶望している彼女が心配だ。

どうやら彼女は、進学を望んでいた可愛い制服の高校には残念ながら落ちてしまい、
私とそう変わらない、"普通っぽくてどこの高校だかわかんない制服"
の高校に進学が決まったらしい。

かなりヤケクソな心理状態が手紙から読み取れる。
この時の手紙にも、「学校は絶対制服だよ!」と彼女は、
気に入らない制服で3年も過ごさなくてはならない学生生活の苦痛を、
しきりに訴えている。

おかげさまで私は、
前回の彼女の発言から、その苦痛をすでに経験していたのだが、
やっと同じ気持ちになれて嬉しく思う。

ちなみに前回彼女に批判された、私の進学する高校の制服について、
訂正された文章が書いてある。
そこの夏服、襟が丸くてかわいいね」だそうだ。

褒めるところがそんなになかったのかと悲しくなる。
ご丁寧に、私の進学する制服が雑誌に載ったらしく、
記事の切抜きを送ってくれている。

今見ても、どこの制服なのかよくわからないという彼女の指摘は正しい。。
思えば当時、全国の高校の制服を特集したページのある雑誌があった気がする。

しかし、制服、制服って、
あなたはイメクラで看護士や客室乗務員を熱望するおっさんか?

無事高校に合格し進路が決まった私だが、
当時の私は、まったく進路というものに関心がなかった。
高校は行かなくちゃならない雰囲気で、親もそれを望んでいた。
だから担任と相談して、担任の薦める高校を受験し進路を決めた。

やりたいことなんて何もなかったし、学びたいことも何もなかった。
自分という小さな世界で生き、世の中を広く知ろうともしなかった私は
自分がどんなことが好きで、何をして生きたいのか、とか、
そういう自分の進路について考えた事がなかった。
自分自身について考えたことがなかったのだ。

学校の行事も一度も頑張ってやったことはない。
だから思い出にさえなっていない。
部活も勉強も学校行事も、すべて適当にやっていた。
授業はいつも、時間が過ぎることだけを考え、ほとんど瞑想の時間だった。
このままではいけない。とさえ思わなかった私は、
結局自分の環境に甘えていたのだろう。
自分の為に頑張るということがどんなことなのか、よくわからなかった。

例えば今、0歳から人生をやり直したとしても、
15歳の時に広く多くのことを学ぶ意味に気がつかないなら、
15歳の私はまた同じ決断をする。

私は後悔していないし、やり直したいと思ったことはない。
その時私は幸せだったし、自分の生きてきた人生だから。
15歳の私が、今の私に繋がっている。

だから、過去にどんな決断をして生きてきたとしても、
自分自身を否定するような後悔だけはしたくない。

当時を振り返って、勉強以外のことに非常に熱心だった私に残るものは、
自分の青春をドブに捨てたという事実だけである。