Otojiro Log

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前回の記事に、「いまいち知恵の使いどころがわからない」というお声が多かった。
雑にまとめてしまうと、「答えの出ていないこと」全般に使うのだ。
たとえば「未来」とか。
関東に住む人ならば、すでに随分前から予測されている大地震におびやかされ、さらに福島原発の核燃料庫の崩落するか否やの状況にも震えている。
そんな中、子供を持つ多くの友人が仕事を捨てて国外へ避難した。
報道されない事実を集め、未来を想像し、どう切り抜け、どう生き抜くか、知恵を絞ったのだ。
「海外移住なんておおげさだよ」と笑う人もいよう。
「それで何も起きなかったらどうするんだ」と思う人もいよう。
何も起きないならそんないいことはない。
海外で楽しく暮らすいいキッカケだったと思うだけだ。
しかし、もし何か起きてしまったなら、笑った人々に未来はやってこないかもしれない。
どちらに転んでもいいように知恵を絞った人々は生き残っていける。

知恵を絞って何かを解決すると、新しい疑問が生まれる。
そうすることで毎日違うことを考えることになり、発見と感動の螺旋に入る。
毎日同じ疑問にぶつかっているのに目を背けていると、新しい疑問にたどりつかない。
すると堂々巡りの思考に囚われて、やらない言い訳やできない言い訳ばかり考えるようになり、とうとう悩みのひとつも解決しない。
面白いことに、前者はノーテンキだと思われ、後者は「考えすぎ」と言われる。
本当は前者はとても真剣に考えてるし、本当は後者は深刻になってるだけで何も考えていないのに。

【記録】
「重力ってなんなんでしょうか?」
カウンセリング中に唐突にこういうことを訊かれる。
もちろん私の専門外の話だ。
そもそも重力について科学的な証明がなされているのかどうかすら知らない。
「私も知識としてはまったくわからないので、私の考えでいいかな?」
「はい、むしろそれをお聞きしたいです」
相手の言葉を受けて、少し考えることにした。
こういうときは知恵に頼るしかない。
とても面倒くさいが自分の頭で演算するわけだ。
数秒沈黙してから、私は人差し指を空中に回しながら話しはじめた。
「湯船につかっているとき、指で水面に円を描くと、渦ができるでしょ?」
私が自分でも想像しながら言うと、相手は静かにうなずく。
「それが重力だよ」
私はあっさり話を終えてしまった。
「え……?」
相手がキョトンとするので、もう少し丁寧に話したほうがよさそうだと思って、つづける。
「渦をつくってると、自分が描いた大きな円の外側に、逆回転する小さな渦がときどきできるんだけど、それも重力」
「えええ……?」
私は相手の反応が見たくてちょくちょく会話を切るクセがある。
「じゃあ、想像してみよう。湯船に描いた大きな渦が銀河系で、それによって発生した小さな渦が惑星だ」
相手が空中を見はじめたので、想像をしているのだと確認できた。
「渦は中心に向かって力が流動しているわけだけど、宇宙空間でこれが起きると周囲にある物質をどんどん集めていく。そうして固まってできたのが星というわけだね」
なるほどという顔で見ている相手の目を見てからさらにつづける。
「渦の力が大きければより遠くから物質を集められるから大きな星になりやすく、結果として大きな星ほど重力が強い傾向にあるだろう。もちろん集めた物質によって、たとえば気体を多く集めてしまった星なんかは重力の割にとても大きく見えるだろうし、個体差は著しそうだ」
「あ、じゃあ自転が速いほど重力が強いんですか?」
ここではじめて相手からの解釈がついた。
非常にいい流れだと思い、私は嬉しくなってきた。
「いいこと言うね。そうだと思う。ちなみに同じ銀河系の星はおそらくほとんどが同じ方向に自転していると思うけど、稀に逆方向に自転しているものもあると思う。その星は最初の大きな渦、つまり公転の力とケンカになって、徐々に自転の速度を遅くしていくことになるんだろう。星ができたときはそれなりに力があったから、ある程度の大きさを作れたものの、速度が遅くなるにつれて重力はどんどん小さくなっているはず。だから大きさの割にとても重力の弱い星になっちゃうわけだね」
「その渦ってそもそもどうやってできたんですかね?」
人はひとつ自分の中で何かが解決すると、次の疑問を生む。
進化はこうして生まれるのかもしれない。
「噂では、ものすごい昔、大爆発が起きて宇宙ができたとか。その爆発によって大宇宙という渦、銀河系という渦、惑星という渦、衛星という渦が、順次誘発されて生まれたんじゃないかな。銀河系の上位にもっと大きな単位の集合体があるかもしれないけども」
「あ、ビッグバンですか!」
「そうそう、それが起きる前の宇宙がどうだったのかとか、なんで起きたのかとかはまったく想像がつかないけど、とにかくそれによって湯船の中のお湯にあたる『宇宙』という物質が一気にばら撒かれて渦を描いたんじゃないかな」
この『宇宙』という物質については、存在すら認められていないし、はたして物質という概念で語っていいものかもわからないが、渦を生む媒体となる何かが宇宙を満たしていないと、私の説は成り立たない。
「湯船って考えると想像しやすいですね」
途方もなく大きなものを考えるときは、できるだけ身近な小さなものに置き換えるといい。
「うんうん。面白いのが、星の内側にはいまだに当時の爆発熱を持った物質が眠ってるってところだよね」
「マグマですか?」
「そうそう」
「あれ? そういえばなんでマグマって地球の内側にしかないんですか?」
「それは焼き芋と同じで、ほっとけば外側は冷めてくるよね」
最初、ほとんどの星はマグマの塊でブヨブヨした物体だったのだろう。
宇宙空間の寒さで冷やされなくては大地すら望めない。
「アハハ、たしかに焼き芋はふたつに割ると外側が冷めてても内側はホクホクしてますね」
「でも、もちろんどんどん冷めていくし、冷めたら熱膨張ならぬ冷収縮が起きて星は小さくなっていく。地球も年々小さくなってるはずだよ。まあすべて冷めきるには、文字通り天文学的な年数を必要とするだろうけどね」
「なるほどなあ……。ずっと星そのものに重力があるんだと思ってました」
「今のはあくまでも私の考えであって、有力な学説や真実とは違うかもしれないよ」
「でも重力が先にあって、そこに星ができあがったっていうのは面白いと思います」
私が持論を語るためには、超えなくてはならないハードルがある。
「それ以外、自分を納得させられるアイデアが出てこなかったんだよ」

自分をも納得させられる自分だけのアイデアを出してみよう。
学校のテストで、正解がわからなくてもとりあえず回答用紙を埋めようというのと似ている。
間違ってもいいんだったらそれほど難しいことじゃない。
日本に残るか国外に避難するか、どちらが正解かなんてまだわからないだろう?
だから正解にこだわるんじゃなく、自分なりの知恵を出そう。
自分が練り上げたアイデアなら、少なくとも自分は納得できるはずだ。
せめて、自分の人生に投げかけられた問いに、空白の回答欄をつくらぬよう。