16年前のオタクの日誌
Amebaでブログを始めよう!

新学期

 冬休みが終わって、今日から登校。道ばたの凍った水たまりで遊びながら、学校まで歩いていく。

 もう学校の隣のガム工場は稼働を始めていて、僕の嫌いなミントのにおいが流れてきている。まあ、しかし、この工場は「迷惑をかけているお詫び」と言って時々給食用に雪見大福をくれるから、いいとしよう。

 学校では平成になったことは全然話題になっておらず、(親が)金持ちのサクマがメガドライブの自慢をしていた。

「とにかくなあ、メガドラはすげーんだぜ。動きも色もファミコンとは桁違いだ」

へー、いいなあ、と言っている級友達を横目に、僕はぼそっと呟く。

「でも、ソフトほとんどねーじゃん。お前の持ってのも、スペースハリヤーⅡだけだろ。PCエンジンと一緒であんまソフトでねーよ」

「う、うるせー。今年はなあ、パソコンでしかできない大戦略もでるんだぜ」

大戦略。本当にお前、やりたいのかよ。ファミコンウォーズさえ、ロクにクリアできないその頭で大戦略はむりだろ。

しかし、大戦略はともかく、パソコンは欲しい。僕が渋々ながらも受験することにしたのは、親の「受かったらパソコンを買ってやる」の一言だった。それからというもの、MSX、PC88、PC98、X68000、はてはFM-TOWNSまであらゆるパソコンのパンフを集め始めた。

ほとんどさわったこともないくせに、機能を徹底比較し「この機種CPUがV30だけど、最新の3.5インチフロッピードライブを積んでいるからなあ…」などと日夜楽しんでいる。

ああ、早く買いたいなあ。






メーカー: メディアカイト
タイトル: Ultra2000 大戦略 For Windows

新元号は平成

 新しい元号は平成。何だか、昭和に比べると重みがない感じがする。この新しい元号のことは、受験に出るのだろうか。

 街はネオンが一切なくなり、完全な自粛モード。新鮮でかえっていい感じだ。環境にも優しそうだし。

 テレビはひたすら皇居前の中継。「今、○○議員の車が皇居に入りました」というのをとってつけたようなクラシック音楽をバックにして、延々と映し出す。当然、飽きる。

 テレビ好きの母も、さすがにテレビを見るのをやめて赤川次郎を読んでいる。おかげで、ファミコンが好きなときに(と言っても、直前講習がほとんど1日中あるからヒマがないけど)のがうれしい。今はまっているのは、「信長の野望」。

長宗我部で一回全国統一した後は、弱小大名・かきざき(漢字わからん)で統一を目指している。でも、本当に弱くてすぐに最上あたりに攻め込まれて負けてしまうのが、くやしい。ゲームバランス悪くないか? 

時々、あまりの弱さにむかつくときはカセットを引っこ抜いて、「燃えプロ」を入れてバントホームランとファールの後はどこ投げてもストライク技(バグととも言う)を使って、ヤクルトで巨人に30-0で勝ってストレス解消。

メーカー: ジャレコ
タイトル: 燃えろプロ野球

昭和が終わった、らしい

 中学受験まで、あと1ヶ月を切り、今日も僕は冬期講習の早朝特訓を受けていた。朝7時から苦手な算数の講習を受ける。今日は、特に苦手なつるかめ算のところだ。

別に、鶴の足が2本だろうが、亀の4本だろうが、どうでもいいではないか。だいたい、鶴なんて本物を見たこともない。ひょっとしたら、足は3本かもしれない。

 いつものように講義の後、小テスト。狭い部屋に40人以上も詰め込まれた僕と同じ年のガキ共が、妙に目をぎらつかせて鉛筆を走らせる。勘弁して欲しい。

 暖房と人いきれに窒息しそうになっていると、教室の外が変に騒がしいことに気がついた。どうも隣の教室から生徒が出てきて居るみたいだ。何かあったんだろうか? 

僕たちのクラスの担任も不審に思ったらしく、教室のドアを開けて外をのぞく。そのドアから漏れてくるざわめきから、どうも、みんな先生達の部屋のテレビを見ているらしいことがわかる。

「ああ、ついにねえ」

隣の教室の担任の、そんなため息まじりの声が妙にはっきりと聞こえた。教室がざわめく。ついに、昭和が終わったらしい。毎日毎日、ニュースや新聞で脈拍数や血圧の数字を見るのも、終わりなんだよなあ。僕は、つるかめ算で混乱した頭で、まず、そんなことをぼんやり思った。


著者: 黒田 勝弘, 畑 好秀
タイトル: 昭和天皇語録