【名門対決の果てに】

今大会、なんと言っても大注目だったのが


福大大濠(福岡)

       vs

九州学院(熊本)


の頂上決戦である。



選抜、魁星旗、玉竜旗の全ての大会において

決勝の舞台に立ち続け、内2大会を制した

福大大濠


魁星旗、玉竜旗と決勝で福大大濠に敗れ、

13年振りに無冠でインターハイを迎える

九州学院



両校は予選リーグを危なげなく突破した。

(福大大濠は負け無し、九州学院に至っては1本も取られること無く突破した)




そして大事件が起きていた。



全九州大会に続き、九州学院の大将に

石橋智紀(2年)

が鎮座しているのだ。



選抜では日章学園の原田恵杜を

全九州では選抜優勝の立役者、相原右京と

個人チャンピオンとなる森大颯を破った。


団体戦は代表戦となり、代表戦は

森大颯に軍配が上がり準優勝となったが

石橋智紀という怪物の存在感を示すには十分であった。



実力は十分。しかし実力のみで座れるほど

九州学院・大将の席は安くない。



4大大会で九州学院の大将を任された2年生は

オタ剣が知りうる限りでは

西村英久と持原大希

の2名のみである(20代のオタ剣はこれ以上過去の正確なデータは持ち合わせていないのである( ; ; ))



オタ剣が過去憧れた怪童、東郷知大

史上最年少の日本代表、山田凌平

九州学院 最高傑作の怪物、星子啓太


のいずれも2年生から主力として活躍したが

大将の椅子には座らなかった。


石橋の大将抜擢はそれだけイレギュラー

なのである。



恐らくは全九州の大会結果を受け、

福大大濠との対決を見据えた米田監督が

仕掛けた大勝負である。




話を戻そう。



九州学院(赤)vs福大大濠(白)


九州学院

先鋒 安方(3年)

次鋒 中村(3年)

中堅 米田(3年)

副将 島村(3年)

大将 石橋(2年)


福大大濠

先鋒 三宅(2年)

次鋒 野口(3年)

中堅 矢野(3年)

副将 林(3年)

大将 森(3年)



まさにスーパーチーム同士の対決。

当たり前だが穴がない。



決勝戦と言われても納得である。

これが決勝T1回戦なのだ。

どちらかがここで姿を消す。


正直、「勿体ない」と思ってしまった。


しかしこれが勝負の世界。


両校両雄が整列し、試合が始まる。




先鋒

安方(3年)×三宅(2年)


玉竜旗、魁星旗で対戦歴のあるふたり。

どちらも2年生の三宅に軍配が上がったが

九州学院キャプテンとして意地を見せたい安方


両名とも手堅い剣道をする。


鉄壁の守りの中でわずかな隙を探らなくては

ならない。



安方が思い切ったメンに飛ぶ

三宅もそれに応じるように技を繰り出す


福大大濠の歓声が、九州学院の歓声が

熱を帯びる。


両校選手以外もここが大きな山場であることを

痛いほど分かっているようだ。




ビーーーーーッ

試合終了の合図


まずは先鋒戦、両者引き分け。



次鋒

中村(3年)×野口(3年)


ここから福大大濠は3年生が登場。

大型次鋒の野口


対するは中学時代、島村に続いて

全中個人準優勝の中村


体格差のある両名の試合が始まる。


開始早々、中村が思い切った担ぎメンに飛ぶ


しかし野口もそれを上手くいなす。



「止め!!」「合議!!」


主審の声が響き、試合が一時中断される。


間合いの反則についてだろうか、数秒の合議

の末に、両者反則なしで試合が再開される。



「始め!」


試合が止まったあとの初太刀というのは

大変重要である。



当然、野口も中村もそれが分かっている。


ジリッ…ジリッ…とお互い間合いを詰め


野口がメンに飛んだ!!

しかし中村も待っていたかのような返しドウ!


パチィーーンッ!!!

野口の胴が痛快な音を鳴らし、

赤旗が3本上がる。



「二本目!!」


中村がコテに飛ぶ!

それに合わせるように野口がコテメン!


合いコテメンだ!



しかしこれは中村の竹刀が野口の道着に

引っかかり、結果的に打突部位をずらした。


取り返したい野口、体格を活かした

豪快な攻めを見せる。

対する中村も攻めの手を休めない。


互いに惜しい技を繰り出すも、試合時間終了。


中村の一本勝ちにより九州学院がリード。



中堅

米田(3年)×矢野(3年)


福大大濠は昨年、中尾、関らと日本一を経験

した三羽烏が登場。

九州学院は名将の血を引く米田が登場。


何としても試合をタイに戻したい福大大濠

リードを守り、あわよくば広げたい九州学院


米田、矢野共に慎重に試合を進めるも、

有効打は生まれず。


若干米田優勢で引き分けとなった。



副将

島村(3年)×林(3年)


九州学院リードで迎えた副将戦だが

ここからでもひっくり返して来るのが

今年の福大大濠である。


九州学院はここから全中個人チャンピオンが2人

福大大濠はこの後IH個人決勝の舞台に立つ2人


間違いなくここからが九州学院にとって

正念場となる。


林の剣道は見ていて惚れ惚れする。

引き技を主軸とし、揺さぶりながら思い切った技を出す。

そして、驚異的な身を寄せる速さ。


いくら島村とはいえ、苦戦は間違いないだろう。



試合中盤

林がググッ…っと間合いを詰める。

島村も反応し、竹刀を担ぐ。



…担いだままメンを振り切った!!


ばこんっ




赤旗3本


島村が一本を取った!



さぁ後が無くなった林。

このまま島村が逃げ切ったらその瞬間、

九州学院の勝利が確定する。



「二本目!」



バチィーーン!!


見事な逆ドウを決めたのは



林だった。

打って変わって白旗が3本上がる。


なんと恐ろしい事か。

なぜあの状況で逆ドウを振り抜けるのか。



これが福大大濠の双璧の一人である。



依然九州学院リードに変わりは無いが、

この林のドウはし九州学院に傾いた試合の

流れを変えるだけのインパクトがあった。



もう一本を取り試合をタイに戻したい林

何とかチームのリードを守りたい島村


両者の思いがぶつかる。

そして


試合終了。


両者引き分け。

九州学院リードで大将戦を迎える。



大将

石橋(2年)×森(3年)


両校の顔ともいえる両名が登場。

森は全九州個人チャンピオン、間違いなく

今世代の「顔」と呼ぶに相応しい選手だろう。



石橋は全九州から大将を任される。

名門 九州学院の大将のプレッシャーは

半端ではない。

それがこの2年生に乗っかっているのだ。



先に現時点でのスコアを見ておこう。



九州学院×福大大濠


先鋒 安方 × 三宅

次鋒 中村ド × 野口

中堅 米田 × 矢野

副将 島村メ × ド林

総スコア 1(2)× 0(1)


とロースコア。

実力が拮抗しているということだ。

逃げる九州学院、追う福大大濠と

今までにない展開である。


大将戦の結果で試合が左右する。

石橋が勝ちor引き分けで九州学院の勝利。

森が一本勝ちなら代表戦

      二本勝ちなら逆転勝利となる。



試合が始まる。


「始め!!」



試合開始早々の事であった。


表裏と竹刀が混じり合い、間合いが深くなる。


森がメンに飛んだ。



白旗が3本上がる。


森が一本を決めた。


なんということだ。

試合開始数秒で九州学院のしっぽを捉えた。



「二本目!!」


石橋がコテに飛ぶが引っかかった!

森もそれを見逃さず大ぶりの返しメンだ!


あわや一本となる打突だったが、旗は上がらず…


恐ろしい。

これが福大大濠の大将、森大颯なのだ。


森が攻める。石橋が守る。


そして



ビーーーーーッ



時間が来た


森の一本勝ち


先鋒 安方 × 三宅

次鋒 中村ド × 野口

中堅 米田 × 矢野

副将 島村メ × ド林

大将 石橋 × メ森

総スコア1(2)×1(2)


代表戦となる。


選出は…


石橋×森


大将戦と同じカードとなった。



「始め!」


正真正銘、雌雄を決する戦いが始まった。



大将戦とは打って変わって静かに攻める森


しかし、


石橋のキレが良くなってきた。


パシッと伸びのあるメンに飛ぶ。

九州学院陣営が前のめりになる。


日本一を渇望し続けたチームの大一番

ピリピリとした時間が流れる。



時間内で決着が付かず、延長戦となる。




延長戦


両者変わらず静かな攻めぎ合いが続く。


2人の一挙手一投足を全員が固唾を飲んで

見守っていた。



延長戦から2分が過ぎた頃



お互い攻めあぐね、鍔迫り合いが増える。


遠間から森が静かに間合いに入り、

竹刀がグッ…と下に沈む。



…打ち込む



石橋もそれに呼応するように竹刀を沈ませる。



両者の呼吸が合う。



両者が同時に飛んだ。



スパーーンッ!



合い面だ!!




その瞬間、赤旗が3本上がる。



石橋の、九州学院の勝ちだ!!



九州学院陣営の身体が浮く。

割れんばかりの拍手。


練習試合ですら一度も勝てなかった相手に

この大一番で勝利したのだ。



九州学院の底力、そして石橋智紀という

怪物が誕生した瞬間を見た。





しかしここで終わりではない。


まだ決勝T1回戦なのだ。



大舞台で強豪との試合に勝利した事で

燃え尽きたかのように散った選手、チームを

幾度となく見てきた。



九州学院の次の相手は


高松宥人率いる明豊(大分)である。



創部1年目にオール1年生でインターハイ出場

を決めた今後の高校剣道界を担う名門校である。



インターハイ初優勝に向け、気合十分。



もちろん油断は許されない。

まだまだ苦戦が予想される。






長くなりましたが、福大大濠vs九州学院の

試合レポは以上になります!!



お付き合い頂きありがとうございました!



2025年インターハイのレポ記事はあと数本

出す予定ですので、またお付き合い頂けますと

嬉しいです!



ではまた!!