リーside


絶賛、勉強中の俺ら…


小さなテーブルに期末テスト範囲の

課題をひろげて黙々と問題を解くのみ。

学年1位のひろむくんが


「ちょっと、教えて♡」


何て言う筈もなく、

それなら俺から…教えてもらうかな、

そうだなぁ…


とにかく、ひろむくんの部屋は

想像通りのシンプルで生活に

必要なモノしか、ない…


趣味的なモノもコトも想像することも

出来ない

机、ベッド、簡易的なクローゼット…

ビジネスホテル一式に見える…っていうか

いつでも引越せる、いや帰るべき所があるって

思い知らされるんだ…


あ〜、ダメだ、ダメだ!


夏休みの予定…進学のこと、

いつまで、ここにいるの?とか、聞きたいことは

いっぱいあるのに、何ひとつも聞けない…


ピンポーン、ピンポーン


「誰、だろ?」


ひろむくんが

ちょっとだけ、玄関のドアスコープを

覗いた


「あっ!尾崎くん!と彼女だ」


あいつら、何でここに?


「やっほー!おじゃまだった?」

 ニッコリ笑う、尾崎の彼女…

何か言いたそうだけど、俺の顔を見て

フフンと笑った…


「はい、これ。

差し入れねー」


「あ、ドーナツとソーダだ!ありがと」

ひろむくんは、紙皿と紙コップを持ってきた


「ねー、しばらくはココにいるんでしょ」


「うん。そうだね」


そうなんだ。


「大学とかさ、決めてるの?

やっぱ、東京なんだよね」


速球で聞いてるー!


「いや、まだ迷ってるんだ。

東京とか限定してないし」


そうなんだ…、東京に帰るとか決めてないんだ…


「ねー、ひろむくん。

彼女とかいないの?」


尾崎の彼女、直球過ぎ!


「…いないけど」


「ふーん」


ちらっと俺の方を見る尾崎の彼女…

何なんだ。何だよ!


「ちょっとTVつけていい?」


抜群のタイミングで尾崎がリモコンを

取ってきた


「来月デビューするアイドルグループがさ、

超可愛いだよねー

俺の推しがさ、リーダーのユリちゃん」


尾崎の彼女の顔が険しくなってる…


日本の実力派ガールズグループ特集!

尾崎…コレが見たくて、ひろむくんちに

寄ったのか…


「あ、この子が推しのユリちゃん。

ダンスも歌も最高だけどさ、

何より、作詞作曲もできるスーパーアイドル

なんだ!みて、ビジュも最高だよね

デビュー曲は世界水泳のテーマソングにも

大抜擢されてるし、あ、もちろんユリちゃんの

作詞作曲ね、


暑い、いや、熱く語る尾崎を冷めた目で見つめる

尾崎の彼女…

ケンカにならなきゃ、いいけど


とりあえず、ドーナツ食べて、休憩するか…


「このチョコドーナツ美味しいよ

ひろむくん?」


TVの画面をジッと見つめる、ひろむくん…


まさかの一目惚れなのか?