リーside


コンビニでお菓子やら飲み物を買って

ひろむくんのマンションに到着した


また、来るなんて思わなかったな

お互いの第一印象は最悪だったのに

人生分かんないもんだ


エントランスに入ると、一匹の犬が

じっと見つめてきた

真っ白な毛並みに大きな瞳が可愛い

ポメラニアン…


この犬が噂のとらちゃんか?

管理人さんちの愛犬で、ひろむくんが

散歩に連れていってる犬だ…

ちょっと、俺…威嚇されてる?


「と、とらちゃん…こんにちは」

思い切りの愛想笑いも

キャンキャンキャン!

めちゃくちゃ、吠えられた… 

キャンキャン!

俺、めちゃくちゃ嫌われてる…


「りひと〜、早かったねー」

天の助け〜、学校で会ったばかりだけど

やっぱ可愛いわ

ん?ひろむくんの手には犬のリード…


「勉強の前にとらちゃんと散歩の約束してたから、

りひとも一緒に行こうか?」


「あ、はい、かわいい犬ですね」


「なんで、棒読み?」


クスクス笑いながら、慣れた手付きで

首輪にリードを付けられるとらちゃんは

マジで嬉しそう…

尻尾もMAXに振り切ってるし


うんうん、とらちゃんの気持ち分かるよ


日差しがまだ強いのに、

お決まりの散歩コースなんだろうな

とらちゃんは躊躇なく走っていく

近くの公園には、お散歩仲間らしい

おばあさんや中学生らしい女の子達が愛犬と

ベンチに集まってた


「ひろむくん、お友達ですか?」


女子中学生らしい子達の一人が

話しかけてきた


「うん、高校のクラスメイト」


クラスメイトね…

まぁ、ひろむくんにとっては

俺はクラスメイトか、

せめて、仲のいい友達とかさ言ってくれても

いいのに…


「お友達もかっこいいです!」


可愛い女子達にイケメンだの、彼女いるんですか?

キャーキャー質問責めされて

ちょっと嬉しくなってきた


「みんな中学生?」


「はい。J中です」


「後輩だ」


「キャー、先輩じゃないですか〜」


思いの外、盛り上がってしまって

買ってきた飲み物とかお菓子を女子中学生に

渡してしまった


公園を走り回ってた、とらちゃんは疲れたのか

いつの間にひろむくんの腕に抱かれていて

何かちょっとムカつく…

いやいや、ポメラニアンに嫉妬してどーなんだよ


「とらちゃん疲れたみたいだから、帰るね

りひとは後輩ちゃん達とゆっくり話して」


散歩仲間達にニッコリ笑って手を振ったけど

スタスタ、、めちゃくちゃ早歩きで公園を出てていった


やばい、ひろむくん…

怒ってる…?

何で?はしゃぎ過ぎたかな?


「またねー!」

後輩達に挨拶して、急いでひろむくんを

追っだけど、いない…?


やばい…見失った。

ボーゼンと立ちつく俺…

やっちまった…

せっかく、ひろむくんとの距離も近くなったのに

バカだぁー、冷や汗なんだか暑いせいなのか

嫌な汗が、じんわりと額を流れる


「りひと!はい」


「冷たっ!」


頬に冷たい感触を感じて振り返ったら

ひろむくんがペットボトルをくっつけてた


「りひと、お疲れ。暑いだろ」


へへ、って笑いながらも

ひろむくんの方が汗をかいてて

片腕にはとらちゃんをしっかり抱えるから

そりゃ、暑いよね


とらちゃん抱えてたから自販機で

1本しか買えなかった、って照れわらい


「りひと、飲みな」


ペットボトルを渡されたから

キャップを開けた

強炭酸水の泡がシュワシュワ溢れそう


「ひろむくん、先に飲んで」


ペットボトルを口につけたら

驚いたように目をパチパチさせるから

ちょっと可愛いすぎ


炭酸のシュワシュワの音とゴクゴク飲んでる

ひろむくんにちょっと目が離せなくて

なぜにドキドキする俺…


やばいやばい…

マジでヤバい…


ちょっと苦しそうな表情になった

ひろむくんの口から、そっとペットボトルを

はずしたら炭酸の泡が口元から流れそうに

なるのを無意識に指で拭った


指が唇にあたっちゃたし、

何だ、何だ、柔らかい感触に

ちょっと恥ずいやら…


思わず、そのままペットボトルの炭酸水を

一気に飲んだら

強炭酸水過ぎて、ゲホゲホむせた


カッコ悪すぎるし、なんか恥ずいし

あー、何だよー俺…


「慌てすぎだし」


ひろむくんに大笑いされて


「もうちょっと、ちょうだい」


俺の手からペットボトルを

取って、ゴクゴク飲んだ


あー、関節キスってわかってる?

てか、気にしてないのか…

気にしてたの俺だけなのか…


あれ、ひろむくんの耳が真っ赤になってる…


何かだかニヤけてしまう、俺



今から、勉強大丈夫か?