皆さんは、宮沢賢治の『よだかの星』をご存じですか?
醜いよだかは鳥の仲間の誰からも相手にされず、ついには自分の居場所を失って
夜空をとび続けお星さまになってしまう、あのお話です。

『宇宙を駆けるよだか』は『よだかの星』をモチーフにした作品と思われます。




一言で言うと、美女と醜い女の子の体入れ替え物語です。
なのでファンタジー色が強いのですがそれ以上に、ミステリー要素多めです。
また繊細な美男美女の絵と対照的な、まるで水木シゲルの絵のような醜い少女のギャップがなんともいえない違和感をよんでいて、普通の少女漫画らしからぬ雰囲気を作っています。

読み進めるうちに、全体的な疾走感につられてページを繰る手がどんどん早くなってくる、
気付けば最後まで一気読み、そんな作品です。


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主人公あゆみは、ある赤月が見える日、醜い容姿をしたクラスメイトの「海根(うみね)」から電話をもらう。
それは幼馴染のしろちゃんと想いが通じた、はじめてのデートの日だったが
「私、これから死ぬから…」との海根の言葉に驚き、なんとか自殺を止めようとする。
しかし、海根は「そこに居て、こっちを見てて」と告げ、あゆみの見ている前でビルの屋上から飛び降りてしまう。


気が付くとそこは病院の白い天井。
どうも体の様子がおかしい。

ビルから飛び降りた海根が無事だったのかを看護師に聞くと
「海根さんはあなたですよね」と。

鏡を見ると、海根になっている自分がいた。
母親と名乗る女性が迎えにくるも混乱したまま一日を終え、翌日学校に行くと…

「あゆみ」としてしろちゃんの隣にいる海根を見つける。
体が入れ替わった事実を知ってもらいたくて話をするも、誰一人真実に気付いてくれない。
「あゆみ」となった海根からは、単に偶然ではなく、故意にあゆみと入れ替わったことを告げられるのだった。

自分の体としろちゃんを取り戻す決意をかため、まずは接点を持とうと、文化祭の役割分担で
しろちゃんと同じ大道具係になる。
しかし、そうとは知らないしろちゃんは、「海根」が自分に好意をもって行き過ぎた行動に及んでいると、不信感を持ち警戒していたため親友の火賀と係を代わってしまう。

「姿が違うだけでこんなに世界が変わっちゃうんだ」
「自分でも自分を証明できない」
「私ってなんなんだろう」

落ち込むあゆみだが、しろちゃんに代わって大道具係として「海根」に接しているうちに、しだいに違和感を感じ始め
ついにはあゆみであることを確信していくのだった。

加賀に理解されたことで前進し、醜い姿のまま、まわりの友達とも打ち解けられるようなってきたあゆみに対し、容姿がすべてと思い、あゆみの苦しむ姿を望んでいた海根は、いらだちを隠せない。

あゆみは、海根に「元に戻る方法を教えてほしい」と詰め寄るも、衝撃的な事実が。
しろちゃんはあゆみと海根が入れ替わったことを知っている。それでも、海根が入ったあゆみでいい、と言ってるというのだ。

恋人に裏切られて落ち込むあゆみだが、気を取り直し、元に戻る方法を探し始める…。


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ウィキペディアより『よだかの星』あらすじ引照

「よだかは、美しいはちすずめやかわせみの兄でありながら、
容姿が醜く不格好なゆえに鳥の仲間から嫌われ、
鷹からも「たか」の名前を使うな「市蔵」にせよと改名を強要され、故郷を捨てる。
自分が生きるためにたくさんの虫の命を食べるために奪っていることを嫌悪して、
彼はついに生きることに絶望し、太陽へ向かって飛びながら、
焼け死んでもいいからあなたの所へ行かせて下さいと願う。
太陽に、お前は夜の鳥だから星に頼んでごらんと言われて、
星々にその願いを叶えてもらおうとするが、相手にされない。
居場所を失い、命をかけて夜空を飛び続けたよだかは、
いつしか青白く燃え上がる「よだかの星」となり、今でも夜空で燃える存在となる。」