俺の子供時代、今から思うと本当に貧しい食生活だった。 ど田舎だったせいなのか、戦後の食糧難時代だったせいなのか、それとも親父の絵のせいで実家が貧しかったせいなのか、おそらくその全部が答えだったのだろう。

とにかく肉といえば缶詰だけ。鯉、ナマズがお祝い時の贅沢な一品だった。生卵、隣からたまに締めた鶏の差し入れがあれば大喜びだった。、学生時代、県庁所在地の町に出て「ホルモン定食」を食った。 人生初めての「カルチャーショック」。  何せ今までのご馳走は、喜多方へバスで行っての「支那そば」しか知らなかったからだ。

4年生の時今の女房と知り合って、彼女の女川の実家で気のすむまで食べさせて貰った、刺身やウニ、ホタテ、これも人生初体験。  魚介がこんなにうまいものだって、、、。


就職してボーナスが入ると先輩に連れて行ってもらった「ステーキハウス」で舌のとろけるような「肉との遭遇!」、俺はこれほどわが身の幸せに陶然となったことはなかった。  それ以来職種が営業だったこともあり、お客さんへの「接待」で美味しい食事、有名なレストランに行くことができた。 また10年近い欧米での赴任や中国、アジア各国への出張で「エスニック料理」の精髄にも出会えた。

その中でも特に「肉料理」が大好きだった。 どこを訪れてもメインには肉をもってきたもんだ。 700Gのメデイアムレア、それに合う赤ワイン、前菜はオリーブオイルとガーリックのエスカルゴ、デザートは大きいパイ、それで太らないのがおかしい!  こういう食生活は50代まで続いた 今思うと無茶だったよなあ!


今はどうだ! 一寸食べても胃にもたれる、吐き気がする、胃や腸で消化が出来なくなったのだろう。炒め物(天ぷら、フライ、油いため)も好物だったがそれらも同様だ。食欲があってもいざ食べる段になると一品でギブアップ、情けない話だ。前は量も人の2倍、「特盛」が普通でそれも密かな「自慢?」だったのにそれも過去の話。  しかしそれがなかなか痩せない! ミステリーだ。


ガキの時の貧しい食への「復讐」は、見事に「糖尿病」や「高血圧」「肥満」という形で返ってきた。

タバコもやめた! 「大食いも」やめた! 肉もたまにしか食べない! でも一度なったものは治らない。

まあ努力して止めたわけでなく、食べられなくなって「止めた」だけなんだが、、、。  

医者は「お酒を減らしたらもっといいんですがねえ」 という。


ダメ!酒だけは今、俺がやれる唯一の楽しみだぞ!  それと酒の肴を少々、、、。


「あなた!いつまで食べているの! もうやめなさい! 私食べようとしたら何もないじゃない!」