俺は元は日本酒党だった。日本酒はアルコール度数で言うと15度以下で、大体この15度前後というのが一番飲みやすい強さなんだそうだ。原酒、濁り酒も好きだが、日本酒の場合は、そう度数が上がるわけでないから、生で十分飲める。


これが焼酎になると、25度が一般的で、原酒になると37度以上、ウィスキーに近くなる。

25度でもアルコール分解能力が低い日本人は生ではそう飲めるもんでない。おのずと水やお湯で割る。


俺がイギリスに駐在していたころ、会社の連中のホームパーテイに呼ばれたことがある。アルコールが強い彼らは40度のモルトをくいくい飲む。そして俺をからかう。 「生が旨いよ!水で割ってどこが美味しいんだ?きつかったら後で水を飲んだらいい」。


俺ら日本人はそうはいかない。しかしこの「酒に弱い」体質のお蔭で、欧米人と比べアルコール中毒に苦しむ人の数は圧倒的に少ない(ハズ)。

俺も酒は「生」で飲むのが一番だと思う。ただ日本酒やワインは飲みすぎると体に悪い。おまけに二日酔いがひどい。ということで年齢も考えて焼酎党になったわけ。


お湯で割ると酔いにくい。日本酒だって熱燗したらそうなる。しかし俺らが普通スーパーで入手できる手頃な焼酎はそのお湯割りに堪えられない。薄いアルコールを飲んでいるみたいで、香りも味もなくなってしまうのだ。麦焼酎に比べて芋のほうがまだましという理由で「惰性」で芋を飲んでいた。


この「暗黒の時代」から解き放ってくれたのが、「プレミア焼酎」だ。今不況のせいなのか、芋焼酎ブームが去って行こうとしてるのか、オークションでも値が下がって、我々でも手が届く。定価に近いものもいっぱいある。この中にお湯割りでもうまい!いやむしろお湯割りだから旨いものがある!


プレミアだったらどれでもというものでもない。いくつかのキーワードがあってそれで検索すると(値段にかかわらず)旨い酒を見つけることが出来る。

まず「甕壺仕込み」だ。鹿児島では多くの酒蔵があるが、麹を仕込む一次と主原料のさつま芋を麹と混ぜ発酵させる2次しこみこれを甕壺でする蔵は8社にすぎないという。手間がかかる割に少量しか造れないからだ。

これらの蔵で作る芋焼酎はまず外れが無い。名酒に決まっている。


熟成から蒸留をゆっくりと時間をかけてやっているかも大事だという。ここはプロの世界で、我々素人が口を出せる分野ではないが、木樽とか木桶を使ったり試しながら、村尾の村尾社長は蒸留で50%以上

味が決まるといいきるくらいだから、ここに力を注いでる倉の酒は旨いということになる。


三つ目は倉の主と杜氏によって決まる。焼酎用のさつま芋という保存がきかず傷みやすい原料の管理から、予想につきにくい芋の発酵、これらを正面から受け止めて、寝食を忘れて、発酵、蒸留、熟成に付き合い、何年も旨い酒造りに試行錯誤する、生産性よりも旨いもの造りへの情熱と職人技、こういう人がいて初めて旨い焼酎が生まれる。


それと、いい水、いいさつま芋これが無いと酒造りはない経たない、忘れてはいけない必要条件だ。


現在は、「無ろ過」、「荒漉し」が旨い酒の救世主のようにもてはやされ、その酒は値段も跳びあがる。

濾過で逃げる成分の中に「旨味成分」が含まれているので無ろ過でそれを残すんだという。

単なる濾過のあるなしで全然異なる、生まれ変わる酒もあるそうだ。


しかしこれもその前の工程で発酵が全部に行きとどき、蒸留もゆっくりと成分を吸い上げ、熟成も安定して終了していれば、「全然違う」酒が出来るなんてありえないと思う。確かに旨さは増すだろうが、荒漉しは一時技、時間がたてばそのうまさは消えてしまうものだ。大事なのは基本、それが出来ている酒蔵は「無ろ過」なぞ出さなくてもいつまでも続く美味しいお酒を供給出来ると思う。


「長期b熟成」、「長期貯蔵」もふれこみの一つだが、確かに丸みがうまれ、飲みやすさがよくなると思う。ただ、味とか香ばしさとかが向上する訳ではないから、これだけを売り物にするのは止めたほうがいい。ウィスキーには勝てっこないのだし、、、。


それでも分からないことが多い。例えば「名水」以外はこの屋久島の芋焼酎「三岳」は、上の条件に当てはまっていない。けれどもとてもうまい! 生でもお湯割りでもなんでもウマイ。生産性、量産にも取り組んでいるというのに。何故なんだ!


そんな疑問に溺れそうになりながら、今晩の晩酌を考える。

薩摩茶屋にする?それとも八幡?いや月の中?純黒もいいな、趣向を変えて三岳にしようか?

キミはどれがいいと思う?