「あの人」
ウチには「飼い主」が居る。「飼い主」とは言っても、プレイ上の話である。私はあの人から名前をつけてもらった(せがんだ)。あの人はウチのことを本名で呼んだことがない(はず)。ウチのことを名前で呼びかける時は、必ずそっちの名前で呼ぶ。あの人曰く、ウチは「ペット」らしい。あの人はペットをもう一人飼っている。他にも居る(ペット、彼女 等)ような気はするが、都合悪い話はガン無視するor「知らん・わからん」で対処されるので、確証が取れているのがその一人。あの人と初めて知り合った時、ウチはその人の存在を知らされていなかった。しかし、ひょんなことからその存在が私にバレることになった。初めてそのことを知った時は、内心荒れた。これは彼氏彼女の正当な付き合いではないし、「多頭ではない」とも聞いていなかったから確認を怠った自分にも落ち度はある。それでも、どうにも気持ちの収まりがつかなくて、苦しかった。他に居るだなんて経験は今までなかったから。「本当に罪な男だこの人。」って思った。でも、離れることもできなかった。そんな勇気なかった。あの人は一緒にお昼や夜を食べに行く時、奢ってくれる。ゲームやるとこに誘ってくれるし、帰りに送ってくれる。それはある種の許された甘え行為らしい。面白いし、遊んでくれる。ウチは男友達も居ないし、そもそも人と付き合うのが苦手で普段も男とほとんど話すことはない。だけどプレイは好き。週に3回くらいは必ずと言っていいほど自慰をするし、暇でボーっとしてると悶々として自慰したくなる。ラブホへ行った直後なら、その時の光景を思い出して一人悶えてることもある。目の前に勝手に用意された時には舐めようとは思えなくて、一人になった時に限って思い出して舐めたくなる。踏まれたい。好きです。あの人が好きなはずなんだけど、でも素直に好きだと思えない。こんな関係の中で、まっすぐに好きだと思えば思うほど、苦しくなるのが自分で。泥沼に足を取られるように、もがけばもがくほど苦しい。そして、あの人と自分は対極にある。大きな羨望と微かな劣等感。あの人に、ウチは愛されてるんだろうか。考えるだけ無意味なのはわかっているんだけど、期待とかそういうのじゃなくて。(期待するのは怖い。)あの人とウチがするあの「セックス」は、セックスではないんじゃないかと思う時がある。お互いの性処理行為って言う方が、誤解が少ないような気がしてしっくりくる気がする。今までの男ではそんなこと思ったことないけれど、ウチにはあの人の考えていることが読めないしわからない。好かれてる相手には好意を返すけれど、好かれてるかどうかわからない相手にはどうすればいいのかわからない。惚れたら負け。これは恋愛じゃない。ウチはあの人に囚われている。どうしようもない気持ち、羨望と好意と期待と諦めと不安と猜疑心と上っ面の冷静さを持ち合わせて。それでも、ベッドの上で快楽を与えられている時は幸せを感じられる。そのまま殺されたい、死にたいと思えるだけの快楽の幸福を。