地方にポスドクに行った後輩が久しぶりに帰郷するというので、待ち合わせをするために古巣の研究室を訪れてみた。
大学の研究所に着くなり、今も在籍しているポスドクの先輩から、「ボスが出勤している」と告げられた。これまで度々研究室に訪れているが、たまたまボスが不在で、顔をあわせるのは2年半ぶりになる。ボスは、以前と変わらない柔らかい物腰だったが…。
しばらくして、後輩と別のポスドクの先輩も研究室に到着し、学生時代と同じようにそのまま研究室で飲み始めた。酒が進むにつれ、色々と景気の良くない話が出てきた。
・製薬企業に勤めている先輩が転職活動しているらしい
どうも当該製薬企業が、抜本的な研究開発体制の見直しの結果、研究所を閉鎖するらしい。人件費、アクセスのし易さ、土地代、規制(放射性物質の取り扱いに関するものなど)などを考慮すると、顕著な業績を挙げるか、優秀な人材に恵まれているかしない限り、日本に研究開発部門を置くことのメリットは外資にはあまりない。自分が修士1年時に就職活動に行った企業も、2年後に日本の研究所を閉鎖していた。運良く入社していたら、運悪くその年のうちに失職していたかもしれない。
・大学の研究所が研究テーマの選り好みを促進しているらしい
微生物や植物しか扱わない研究室は、存続することがさらに難しくなっているよう。培養細胞を扱っていれば、創薬につながる(=金になる)機会はあるかもしれないけれど…。研究の「多様性」が失われることには、少し抵抗を感じる。
・若手研究者の自立促進プログラム?
大学の研究所の一画に「…フロンティア…」なる見慣れない札を掲げた部屋があった。もう既に、その制度を利用した研究室は始動しているが、先輩方は、制度自体には懐疑的だった。制度の当否についての判断は、先送りなのだろうか?
…とまあ、明るい話題はない。思うに、累々と屍を積み重ねてもなお、その先にあるかもしれない光明を見出すことができる者だけが、研究者であることが許されるのだろう。未だに学生気分が抜けていないポスドク1年の後輩の行く末が、やや気がかりではある。