『今日やっと水道がでた。明日か明後日には飲める水が出るようになるだろう。今日ニュースで、宮城県で2人が救助されたと放送された。これからももっと多くの人が助かって欲しい、駄目でもせめて家族のもとに帰してあげてほしいと願う。福島にようやく原発の専門家が入り、対策本部のようなものができたようだ。長崎県の方で、原爆やチェルノブイリに関わってきた方達で政府よりずっと信じられると思った。何故政府はこういったことをしてくれないのか。今も現場で頑張ってくれている方達には感謝します。どうか無事に帰ってきて下さい。今日は減っていた大きめの余震が増えた。水、牛乳、野菜から放射性物質がでる。出荷停止。国の補償は...福島は...』



他県の救助状況が報道されるなか、福島の動きは見えなかった。何故なら原発の建物がうつるばかりで、避難状況の報道がされなかったからだ。少なくとも私は聞いたことがなかった。みんな避難していてほしい。でも避難したなら地震や津波に巻き込まれた人は?福島では救助活動はしているの?どうなっているの?疑問と不安ばかりが膨らんだ。

この頃から原発関連の専門家の動きが見えはじめた。が、この頃から様々な話に振り回される日々が始まったのかもしれない。



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『東北、関東に散らばる親戚が、みんな元気にしていると電話で確認できた。まだ行方不明の人達は一人でも多く生きて見つかる事を心から祈る。親戚との電話で新たな風評被害が分かった。原発から30㎞圏内の洋装の下請け会社からは、荷物を受け取らないし工賃も払わないと親会社が言っているらしい。確かに、地震のせいで納期が遅れていたと言うのもあるのだろうが、それでも言い方があるのではないだろうか。政府はぐちぐち仲間割れしてないで被害者救済に力を尽せと言いたい。政府も東京電力も信用できない。北海道に住む友人から、チョコレートや紙コップなど物資が届いた。手紙と5000円が入っていた。言葉が気持ちが何よりも嬉しかった。』



風評かどうかはわからない。事実、この頃は知らなかったが空間線量が高かった。荷物のやり取りでどうなるか…私には言葉にできない。この件は又聞きしただけだし、線量を測ったわけでも詳しい知識があるわけでもない、無責任な言葉を口にしたくない。でも工賃も払わないと本当に言ったのならそれは酷いと感じる。地方の洋裁の下請けなど時給も月給もピンキリあるが、はっきり言って安い。時給でそれなりの金額を稼ぐにはどれだけの時間が必要か、私の知っている会社は時給660円だそうだ。
北海道の友人も東京の友人も、必要なものがあれば送るから何でも言ってと言ってくれていた。食べ物も日用品も、買い物に行くためのガソリンも手に入らないなかで、いざというときは頼っていい人がいるというのは心強かったし、なにより風評という言葉に、実際に起きていた事に打ちのめされていた心を支えてくれた。逆に言えば、連絡をくれた友人以外は誰も、何も信じられなかった。部屋はあるから避難しておいでと言ってくれた友人もいた。でも他県に避難し自分も同じ目にあったらと思うと、怖くてとても避難などできなかった。当時の私の心は、とても人の悪意に耐えられる状態ではなかった。悪意などなくても、ほんの少しの言葉のあやでも耐えられない状態だった。人が、言葉が、誰かの心がとても怖かった。
『そろそろ眠くてふらっとするのか、余震で揺れているなのか分からなくなってきた。弱くなったり強くなったりの繰り返しだ。他の地域でも大きな地震があるが原発と余震でいっぱいいっぱいだ。原発は後手後手にまわり、必要な情報を知らされるのも遅い。外出時は帽子やマスクを着けて肌の露出を抑えるとか、退避を口にした時に一緒に言えばいい。政府の対処が悪いから風評被害が起こるのだ。地震、津波、原発の三重苦の被害者が、スクリーニングの証明書がないと、避難所も受け入れてくれないなんて酷すぎる。風評のせいで福島に物資が入ってこないのに。首都圏に送る電力をつくるために働いていた人達にこの仕打ちはないと思う。新聞が来ない。』



今だからこそ分かる風評と差別と実害の違い。あの頃はまだ分からなかった。原発とも放射線とも無縁の生活を送ってきて知識などなにもなかった。ただ原爆やチェルノブイリや東海村といった言葉が思い浮かぶだけ。せめてSPEEDIが公開されれば、ラジオや市町村単位で住民に知識や状況など説明が呼びかけがあれば、当時から風評と差別と実害の違いが分かっていただろう。一人一人がどうすればいいか分かっていただろう。自分や大切な人達を守る方法を、傷つけない傷つかなくてすむ方法が分かっていただろう。すべてが遅すぎた。今も、これからも続くであろう誤解や悲しみや苦しみがうまれた。真実、事実という光が闇に葬られたことで、暗い現実につつまれている。優しい嘘が必要な時もある。でも嘘や隠蔽では救われない。必要なのは真実、事実。それを知らなければ闘うことも前に進むこともできない。