眠れずに俺は外へ出た。1週間放置している流しから淀んだ空気が漏れ出していたからかもしれない。とにかく家の中にはいたくなかった。しばらく歩き公園に着くと、サイズの合致しないブランコに腰掛けた。







こういうときだけは煙草を吸っている人を羨ましく思ったりする。俺はさっきコンビニで買った少し溶けて柔らかくなったパピコを2つに割り、蓋の部分を切り取ってチューチューし始めた。甘い。が、少しだけ苦い。







余談だが、ときどきパピコの蓋の部分のアイスを食べずにそのまま捨てる人を見かける。同じ人間として決して許せない行為だと思う。







パピコをくわえながらブランコを漕ぐのに夢中になっていると横から声がした。







「お兄さん、ライター持ってない?」







そこには高校生、下手すると中学生くらいの女の子が巷でよく見るスウェット姿でブランコに座っていた。







「持ってないよ。何?君、煙草吸うの?何歳?」



「もしかして説教する気?じゃあいいよ、コンビニで買ってくるから。」







そういうとその子はブランコから立ち上がった。「俺も一応未成年なんだけどなぁ。」と老けて見られたことに若干のショックを受けつつ、俺は言った。







「なあ、パピコあるけどいる?」











その子はブランコに座りなおしてパピコをチューチューしている。







「やっぱ蓋の部分は食べてから捨てるよね。」



「うん。だってそこが一番美味しいとこじゃん!!」



「いつから煙草吸ってんの?」



「1週間前。」



「ふーん。」







きっかけについてはあえて触れないことにした。何かあったのかもしれないし、別に無かったのかもしれない。







「パピコ、美味しい?」



「うーん。ふつう。」



「じゃ、煙草は?」



「まあ、そこそこ。」



「ふーん、そっか。じゃあさ、なんでパピコが二つ一組で売られてるか知ってる?」



「知らない。」



「他の人と分け合って食べれるようにだよ。」



「本当?」



「知らない。」



「えー。何それ。」



「でもそうだったら嬉しいじゃん。」



「ふーん。」







どのくらい時間が経ったのだろうか。時計を付けて来なかったので時間がわからない。月は雲に隠れて見えなかった。







「でも、なんか分かる気がするな。」



「ん?何が?」



「だから他の人と分け合うって話。煙草はひとりで吸ってて楽しいけど、アイスはみんなで食べた方が美味しいもん。」



「そうだね。ピノなら6人で分け合えるしね。」



「1人分の量少なっ!」







そういってその子は歯を見せて笑った。この白い歯が煙草のせいで変色したらもったいないなと思った。











「コツン、コツン、、」という音で目が覚めた。上の方で虫達が街頭に群がっていた。うまく掴まれずに何度もぶつかっている音だった。



俺の手には蓋をまだ開けていないパピコがすっかり液体になって握られていた。口を切って少し舐めてみたが甘すぎてさすがに捨てた。











家に向かって歩く。体の右側の方が少しだけもの足りないような気がした。






【好きなやつ6】


赤い花/フーバーオーバー



たぶん冬の曲だけど。