右翼を自称し、差別撤廃運動に尽力した「タカハシ」の話。 | 徹通塾・芝田晴彦のブログ

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民族自決 戦後体制打破
基地問題を考える愛国者連絡会 / 自由アジア連帯東京会議

戦前、サトカタ・タカハシと呼ばれた日本人の黒人運動指導者がいた。本名は中根中(なかね・なか)。

元・大日本帝国陸軍少佐かつ当時の右翼組織・黒龍会メンバーを自称したタカハシは昭和八年、忽然とデトロイトの街角に姿を現し「打倒白人」を叫び、黒人たちを扇動する。「日本人は黒人同様有色人種、そして白人に抑圧されている。白人を打倒せよ!」と唱えたタカハシの運動は最盛期には10万人を動員したと云う。昭和18年におきた『デトロイトレース暴動』の背後には収監中であったタカハシの存在も囁かれている。因みにマルコムXで有名となるNOI(ネーション・オブ・イスラム)のイライジャ・ムハンマドとタカハシは友人関係であったとのこと。

何故、タカハシが黒人解放運動に没頭したのか、その理由はわからない。ただ、キリスト者となったにも関わらず米国で感じた人種差別や偏見に対する絶望、そして玄洋社の頭山満が顧問を務め、人種的差別撤廃提案の為に尽力した黒龍会のメンバーを名乗ったあたりにその動機の根源を感じる。

黒人達の一部からは「救世主」「神」とあがめられたタカハシ。一方、私生活は放蕩というかロクデナシだったようで、日本に妻を残したままにも関わらず渡米後に現地で白人妻を娶るが、当人の金遣いが荒かったのが原因で間も無く結婚生活は破綻。後に黒人妻と再婚するも他に別の黒人女性と愛人関係にあったようだ。このあたりは、不倫や不特定の女性達との性交に勤しんだキング牧師に通ずるものを感じる。

何度も米国当局によって逮捕・収監され、国外退去も命ぜられたタカハシは、終戦の年である昭和20年、彼の愛したデトロイトの黒人街に戻り、寂しく亡くなったと伝えられている。

今日、1月15日はキング牧師の誕生日。そんな日に、以前本で読んだタカハシこと中根中のこと、そして、同様に「タカハシ」を名乗った、私の友人であったある男のことを思い浮かべた。


(写真:マーティン・ルーサー・キング・ジュニア~画像はウキペより)



[参考]
レジナルド・カーニー:『20世紀の日本人―アメリカ黒人の日本人観 1900‐1945』五月書房
出井康博: 『日本から救世主(メシア)が来た』新潮社