へいタクシー!虎ノ門から八王子までのお客さま

 

信じるも信じないも御自由にお任せします。
物語の1つくらいに読んでもらえればと思います。

僕は東京でタクシードライバーを3年ほどやっていたことがあります。

もう20年ほど前の話しになります。


金曜日の夜と言えば、タクシードライバーにとって稼ぎ時です。
お酒を飲んで終電に間に合わず、タクシーで帰る人が多くなるからです。

銀座・赤坂・六本木…
繁華街にはタクシーがつめかけます。


僕は紳士が多い銀座に行く事が多かったのです。
1人の男性を乗せました。

行先はすぐ近くのオフィス街である虎ノ門。
忘れ物でもしたのでしょうか…

すぐ降車いただき、すぐ銀座に向かうところ、1人の男性がフラフラと歩き手を上げました。

この時間で終電は厳しい。

 

もしや郊外に帰るビジネスマンではないか?

少し期待をしました。



「御乗車ありがとうございます。どちらまで参りましょうか?」

「八王子まで」

「八王子までですね。かしこまりました」

冷静にのっぺりと答えましたが、心の中でヤッタ!っと叫びました。

八王子まで行けば2万は確実に戴けます。
一気に売り上げが上がります

フルコミッションのタクシードライバーにとっては嬉しいお客様です。



車中、男性は黙って窓の外をボヤーっと見ていました。
時おりバックミラーで様子を見ながら、余計な会話はせずに八王子に向かいました。

高速を降りてから道順を教えて頂きました。

「右…左…」

余計な話しはしません。
家の前に着きました。



「待ってて下さい。呼んで来ます」

フラフラ〜とお客様はタクシーを降りました。

ん?お金を持ってなかったんだな。

 

家にお金を取りに行ったんだな。

今はクレジットカードが多いかもしれませんが、当時は現金払いがほとんどでした。

時間は深夜2時過ぎです


 

まさかの無賃乗車!!

 

10分…20分…
待っていてもなかなか出てきません。

 

お金を取りに行くだけにしては遅い。

遅すぎる。

え…まさか無賃乗車?
門の中に入って行ったのは確認したが、玄関に入ったのは確認していません。

「まさかやられたか…」

僕は経験ありませんでしたが、このようなことはたまにあるのです。

「家からお金を取ってくるから待ってて」
と言って、うまく裏から逃げる無賃乗車。



都心から八王子はかなりの距離です。

こんなところまで来て…

 

タクシードライバー経験者なら、このような時の気持ちが分かるかと思います。

単純に2万円盗まれたというようなものです。

 

お金を取りに行くだけなのに、30分もかかりません。

無賃乗車か?はもう確信に変わり、「やられたな」と思いました。

それでも念のため、深夜に関わらずベルを鳴らす事にしました。
全く関係ない人だったら申し訳ないですが、男性は確実に門の中に入って行った。

違っていたら、わけを言って謝ろう。


 

無賃乗車だけど、無賃乗車じゃない


玄関に向かいチャイムを鳴らそうとした瞬間、ガチャッと玄関が開きました。

「キャーーーーーー!!!!」

御婦人がビックリして悲鳴を上げました。

僕もビックリして「うわーーー!!!」と叫んでしまいました。




「な!何ですか!!!誰ですか!!!」

いやいやいや…と、怪しい者ではないと落ち着いて僕は説明しました。

 

「ご主人だと思うのですが、虎ノ門からお客様をお乗せしました。そして、お金が足りなかったようで、こちらのお宅に入っていったのですが…」

「はぁ…あの主人はいませんよ。この家に」

ああ…やっぱりね。

「こんな深夜に大変失礼しました。門を入って行ったのは確認したのですが…どうやら、ご近所の誰かが無賃乗車したようです」



ご婦人は少し間があった後言いました。

「運転手さん。この家の門を入って行ったのですね?じゃあ、きっと主人です。今ここにはいませんけど」

ん?今ここにはいないけど、僕が乗せたのはご主人???

「主人は、あなたが乗せた近くの病院にいるんですよ」

は???

 

男の人って、頑固で素直じゃなくて甘えん坊


御主人は入院していて、もう幾ばくもない命でした。
奥様はなるべく見舞いに行っていたのですが、お子さんの関係とかでしょうか、八王子の家に帰らないわけにもいかない。

病院からとうとうその時が来ました、という電話を受けたばかりでした。

奥様は運転ができない。

深夜2時、当然電車もない。

都心と違ってタクシーが24時間走っているわけでもない。

どうする…どうする…

それで国道まで自転車で行き、都心に帰るタクシーを捕まえようとし玄関を開けたわけです。

そしたら開けた瞬間、タクシーが待っていたというわけです。

それが僕でした。



そこそこ霊感があり、それなりの経験をしてきましたが、ここまでリアルな体験は初めてでした。

都心に向かう車中、奥様は徒然と御主人の話しをしてくれました。



危篤というのに、奥様は少し清々しい空気に感じました。
時おり、フッと笑っています。

笑っているなんて聞くと、不謹慎と感じる人もいるでしょう。

 

 

 

でも、そうではないのです
もうとっくに覚悟は決めていて、とうとうその時が来たということ。


自分の命が幾ばくも無い事が分かりながらも、頑固な御主人は憎まれ口ばかり。
見舞いに行っても「もう帰れ、もう帰れ、オマエがいるとゆっくり眠れない」とうるさい。

でも最後、奥様に会いたかったんでしょうね。
こんな手を使ってタクシードライバーを向かわせました。



あの人、強がってばかりだけどワタシの事が好き好きでしょうがなかったのよね。

本当は凄い甘ったれなのに、頑固で素直じゃない。

でも、最後の最後でどうにかして会いたくなっちゃったのよね。

最初から「会いに来てくれ」って言えばいいのに。
男の人って、頑固で素直じゃなくて。



なのに、いつまでも子供で弱くて甘ったれね。

運転手さんもそうでしょ?(笑)


「はぁ…まぁ…そうですかね~(^^;;」



ご婦人は、深夜で暗い窓の外を眺めながら、それからもご主人の想い出話しを続けました。

 

僕に言っているのか、独り言なのか…

そんな時僕は、なるべく語らず、そこにいないくらい存在を消すようにしています。

 

ご婦人の少し低めのゆっくりした口調は、映画のナレーションのように、僕に映像を映し出させてくれました。

 

 

 


血のつながりのない、違う環境で育った男女が生活を共にし

時には喧嘩したり仲直りしたり

無関心になったり、他の異性に心奪われたり

期待したり諦めたり、依存したり依存されたり

それでも一生添い遂げると決めた相手で、恋い焦がれた時もある相手

夫婦は面倒くさいものであり、だからこそ面白いものであります

 

※下世話な話しですが、タクシー料金は往復でいただきました。

片道だけでいいと伝えたのですが、「主人も乗せたには乗せたのだから」ということでした。

 

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https://www.nakawada.online/michi/

●1月28日・29日
道ひらき数秘術講座 in 茨城県つくば市
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