水仙の花

「ねぇ!見て!」


握った小さい手が僕の手をグイグイ引っ張る。

向かった先は黄色い水仙の花。


誰かが植えたわけではないのかな?空き地に凛と佇む黄色い水仙。


花の事はよく知らない。以前は野に咲く花を切る事に躊躇してしまっていた。


嫁から

「花は摘んであげる事によって、次の花が咲きやすくなる。

摘んで家に飾る事で、花はまた命を吹き返すんだよ」


その言葉を聞いてからは、以前とは違う。



誰が教えたわけでも仕向けたわけでもないが、娘は花が大好きだ。


誰も見向きもしない雑草にまぎれている花でさえ、喜んで摘もうとする。



その感性に僕は父親を忘れて感心する。

自分の存在にこれだけ喜んでくれる。きっと花も嬉しいだろうな…。




放射能だの水だの、なんだか大変な世の中になってしまっている。


安易に楽観はしていません。しかし不安がる生き方もつまらない。


「生きる」という事がどういう事なのか、再確認すべき時かもしれません。




青空の下、凛と咲く水仙に心躍らせて走る娘。

力強く手を引く娘を感じながら、大切な事ってこういう事だな…と感じました。



震災では、このようなささやかな幸せを奪われた方達がいっぱいです。


お亡くなりになられた方・残された方達の代わりにも、

家族・友人・お店に来てくださるクライアントさん・これから出会うべき人達に心を尽くそうと、

あらためて感じてます。



摘んだ水仙を嫁さんがアレンジしてくれました。


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震災でお亡くなりになられた方、心からお悔やみ申し上げます。