シャボン玉

虹色に煌めく無数のシャボン玉に包まれ、君は両手を広げ負けないくらいに光り輝く。


風が杏子の木々を揺らし、サワサワと囁いている。


杏子の木は「こっちにおいで」と声をかけ、煌めく虹色のシャボン玉を呼び寄せる。


君を包んでいたシャボン玉は、杏子の木に向かって羽ばたき、スーっと消えていった。


その光景を君は微動だにせず見つめる。


鳥と木々が美しい音色を奏で、そよ風が長くなった君の髪を揺らしている。


君の後ろ姿は自然に溶け合い、まるで森を舞う妖精のような佇まい。


羽を広げて、森の中に帰ってしまうのでは…と、

あり得ない妄想をして、ギュッと手を握った。



「シャボン玉、お母さんのところに帰ったの?」


「そうだね。帰ったね」



とても美しく綺麗な瞬間だった。


カメラに納められればいいのだが、美しい瞬間はあまりにも儚く突然。


目に焼き付けるだけで精一杯。


目に焼き付けられた記憶は次から次へと積み重ねられ、次から次へと淡く消えていく。


消え失せる前に、できる限りの言葉を尽くそう。


君がとても綺麗な瞬間を残しておこう。



君もいつかは思春期を迎え、大人への階段を登る。


自分は汚れた人間じゃないか?と、自責の念にかられる時が来るかもしれない。



その時はこの日の君を伝えよう。


君が妖精のように綺麗だったこの日の事を。


そして今でもきっと、綺麗な心を持っていると伝えよう。



家庭を持つ事だけが全てではないし、子供がいる生活だけが幸せでもない。


幸せの定義など人それぞれ。


ただ僕のような人間にとっては、この日のような光景をライヴで味わえる事は、

何にも代えられない幸せ。



嫁さんへ

娘を産み、一気に白髪が増えましたね(笑)

そんな事も気にせず、家族の健康第一に食事を作り、

心地よく過ごせる空間を保ってくれ、何よりいつも笑顔でいてくれる。



できそこないの僕には、それが何よりもの救い。



38歳での初産は、もともと虚弱体質な君には命懸けでしたね。


必死で明るい家庭と、家族の時間を守ろうとする姿は、時に頑なようにさえ見えます。



それは君が不遇だった環境で育ったせいだろう。

お金より、見てくれより、見栄より、何が1番大切かを教えてくれました。


その大切な想いが、あの娘の心を作ってくれています。


あの日見た、シャボン玉と杏子の木に現れた妖精は、

君が渾身の力で鮮やかにプロデュースしたアート。


アートは日々の生活そのものからだって生まれる。


そう感じると、なかなか染めようとしない白髪でさえ魅力的です。



クライアントさま・生徒の皆様


皆さまが僕の技術に対価をくださる事で、幸せな毎日を送る事ができます。

心からの感謝と、皆さまが幸福に満ちた毎日であるよう、お祈り申し上げます。