ご無沙汰です。藤村です。

一年って本当にあっという間ですね。

 

さて、19年は消費税が増税しましたね。頭痛が痛い。

増税に先だって、高等教育の一部無償化が約束として挙げられました。(いまいちあんまり注目されませんでしたけど)

その(現時点での)中身はこちら

住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯で、三段階で予算が措置されるとのことです。

 

その予算はどれくらいでしょう?というと、文科省の概算要求にも出てませんでした。

一応、予算枠として「8000億円」とか「7600億円」という数字が、割と早くから出されていたように思います。

 

しかしていまいち、その数字の根拠は出されていませんでした。

そもそも何と何をかけてその数字が出ているのでしょうか・・?と不思議に思っていました。

 

全ては来年、蓋を開けてみないとわからないのですが、蓋の中身を少しでも分析したいというのが今回の記事です。

 

 

まあともあれ、H31年までの奨学金・授業料減免の予算は、以下のような感じでした

 

・給付型奨学金
 ・予算総額140億円・対象41,400人・給付月額2~4万円
 ・1人当たり予算は月額約2万8千円=給付月額とも概ね符合
・国立大学の授業料減免
 ・予算総額365億2100万円・対象6万6千人(学部4万9千、大学院1万7千人)
 ・1人当たり予算は年約55万円=国立大学の年間学費と概ね符合
・私立大学の授業料減免(援助)
 ・予算総額177億円・対象9.6万人

 ・1人あたり予算は年間約18万円=私立大学の学費には遠く及ばない
 

上記の総額は682億円。7600億円ったら、そこから10倍以上に予算枠が増えるということになります

私は割とこれを好意的に見てまして、長年の色んな運動の結実の一つだなあ、と思ってました(ただし消費税増税が財源なので総枠としては反対ですが)。

 

しかし、秋ごろからびっくりするようなニュースも飛び込んできました。

せっかくなのでFREE(高等教育無償化プロジェクト)から引用しましょうか。

「来年度から、新しい修学支援制度が始まるのに伴い、今まで国立大学で行われていた授業料減免の枠が大幅に縮小されてしまいます。全国の国立大学では現在約4.5万人の学生が授業料減免を受けていますが、その半分以上の2.4万人の支援額が削減されてしまいます。

・・・ですと。

 

・・・あれ?

予算枠が約10倍に増えるのに、どうして支給額が削減されてしまう学生が出てくるの・・・・?

実際に削減を検討しているという具体的な話もあるの・・・?どうして・・・?

 

何やら文科省の調査においてもその数字は確かなようで、簡単な話、中所得世帯は対象から外れるからだと。

(中所得といっても二人兄弟で400万円くらいからなので中所得と呼ぶのもおこがましいのですが)

 

さらに言うなら、上述の通り、国立大学への授業料減免予算枠は、私立大学への授業減免予算枠のおおよそ2倍。

私立大学の学生数は国立大学の学生数の3~4倍であるにも関わらず、です。

裏を返すと私立大学への授業料減免があまりに手薄だったということなのですが。

 

ですが今回の新しい奨学金・授業料減免は、国立私立あまり問わず予算が措置されます。むしろ額面上私立大学の方が奨学金額が大きいですね。

こうしてこれまで数字上国立大学側に寄っていた予算が、一気に手薄だった私立大学側へ寄っていき、国立大学の学生の中で「あぶれる」方が出てくるという仕組みです。

 

・・・しかし、ですね。

予算総枠が10倍になるのですよ?「あぶれる」学生が出てくるってことは、低所得世帯学生がどれだけ増えれば計算が合うんですか・・・?

冒頭でも述べましたけども、7600億円ってどんな掛け算をしたんですか・・・?

 

という問いへの答えをしばらく探していたのですが、コレというものが見つかりません。つらみがね、深みざわ。

ですが、一つ二つそれらしきものを見つけました。

 

まずはこちらをご覧ください

H31年2月12日、柴山文部科学大臣の会見より。

「高等教育機関、御案内のとおり、今全世帯で約8割の方々が進学をされるんですけれども、住民税の非課税世帯ではですね、4割程度と推計しており、これ全世帯の半分程度になるんですね。今回の支援措置によってですね、低所得者世帯の進学率が、新入生から順次上昇して全体の進学率に達成するように目指していこうとするものであります。支援対象者は、機械的に算定をいたしますと、高等教育段階の全学生のおよそ2割程度、75万人程度になると想定をしております。」

 

そしてもう一つ、これ。

約7600億円の予算について、「※支援対象となる低所得世帯の生徒の高等教育進学率が全世帯平均(約80%)まで上昇した場合の試算」

 

最後に、これ。

「(独)日本学生支援機構の調査(平成27年)では、
・住民税非課税世帯(世帯年収250万円未満程度)の大学進学率は20%と推計。(全世帯平均52%)
住民税非課税世帯の高等教育進学率(大学、短大、高専、専門学校)は40%と推計。(全世帯平均80%)

 

まとめて日本語訳しますと、

①住民税非課税世帯の高等教育進学率は40%くらいです。

②授業料減免と奨学金を措置すると、住民税非課税世帯(や、それ周辺の世帯)の進学率が80%まで上がるでしょう。

③いずれ75万人が制度の対象となります。そうなると予算が7600億円必要となります。

 (一人当たり年間100万円くらいの予算なのでしょう。7600億円÷75万人=100万円くらい)

 

・・・

 

・・・なにそれ?

 

え、いや、そんな雑な計算なんですか・・・?

 

と取り乱したくなりますが、冷静に突っ込み点を整理してみましょう。大きくはこの二点に集約されます。

①受け入れる側の大学はあるのでしょうか?

②奨学金と授業料減免さえあれば、低所得世帯でも進学率80%はあり得ますか?

 

どうでしょう。もっとも私も、まだ上記二点についてしっかり突っ込みを入れる材料を持ってはいません。

持ってはいませんが、進学率80%はそうそう実現できることではないことはわかります。

まず①受け入れる大学がない時点で、すぐには無理です。無理でしょう。しかもそもそも、今は大学を減らすのがトレンドですし。

②についても、奨学金と授業料減免(つまりありていに言うと金)があれば進学率は80%にまで上がりますか・・・?

地域性や家族文化、生業によるものではないですか・・・?

 

いずれは80%、の「いずれ」がいつになるのか。そもそもそんな日がやってくるのかも懐疑的です。

 

以上が現在の材料から推測する、蓋の中身の予想ですが、

いざ蓋を開けて、来年の予算や決算が出た時、一体どんな数字が出ているのでしょう?

さすがに7600億円ってことはないでしょう。もっともっと小さな金額しか出てこない・・・・・・

 

 

・・・・

 

 

・・・のなら、国立大学の授業料減免の現状水準は保ってやれよ!!!!

365億円あれば現状の中所得世帯対象の授業料減免を削減せずに済むんだよ!

なんだか365億円がすごくちっぽけに見えてきた!

 

今日の結論

国立大学の授業料減免削減に反対するのは、上記の理由からも堂々と、本当に堂々と掲げてよい要求です。

財源論の壁なんてありません。そもそも文科省の作りやがった予算の計算自体が極めてアレなのです。

財源はあります。そもそも消費税を上げやがった口実の一つが奨学金と授業料減免なのです。

せめて、増税前にやると言っていた8000億円はしっかりと措置させないとなりません。蓋開けたら3000億円くらいでした、てへぺろ、では済まされません。