まだまだ暑いですねえ。灰になりそう。

藤村です。

 

最近、日本の研究力低下に関わって、こんな記事が出てきました。

いわく、「人口当たりの修士・博士号取得者が近年、主要国で日本だけ減ったことが、文部科学省科学技術・学術政策研究所の調査で判明した。日本の研究論文の質や量の低下が問題になっているが、大学院に進む若者の数でも「独り負け」で、研究力の衰退を示す結果といえる。」

とのことです。

 

大学院。博士課程。

高学歴ワーキングプア、ポスドク、など、若者の進路の選択肢としてはネガティブな要素も強いものです。しかし明暗も分かれているようで、個別に考えなくてはならないところもあります。

今回は、政策とかは抜きに、単純に数字上での大学院生の数の推移を見ていきます。

ただ単に、博士課程が少ないとかそういう議論だけではすまないようです。

 

※実は今回、ちょっと数字に自信が無いです。間違っているところがあったら指摘してください。

 

①大学院生数の推移

まずは、大学院生数の推移を見てみましょう。だいたい、ここ20年くらいの。

横軸は平成。縦軸は(人)。青線が修士、オレンジ線が博士です。

 

 

文科省調べより作成)

おお、いかんともコメントしにくい。

ともあれ修士も博士も、2000年頃まではそこそこ単調増加でしたが、そこからは伸び悩み、むしろ数を減らしているという傾向です。

次に、専攻科別に見ていきます。こちらは博士。

 

で、修士はこちら。

修士課程生は、H22年。23年にちょっと増えてますが、工学系がこれを押し上げていたようです。

H24年唐突に減ったのは、2011年原発事故のせいでしょうか?考えすぎ?

 

中間結論A:大学院生総数は、修士・博士問わず、ここ20年くらい伸び悩み、微妙な減少傾向にある。

 

②専攻科別の数字も見てみましょう

ではポイントとして、どういったところが特徴的でしょうか?

 

その一つが、文系の衰退です。

多くの専攻科で修士過程・博士課程共に院生数を減らしていますが、

人文学は

修士で、13,452人(H17年)→10,641人(H29年)=ピークの79%

博士で、7,697人(H17年)→5,672人(H29年)=ピークの74%

 

社会科学は

修士で23,457人(H14年)→15,949人(H29年)=ピークの68%←

博士で、7,553人(H17年)→5,953人(H29年)=ピークの79%

と大きく減らしています。

この10年ちょいで、2割以上が削られたわけです。

しかし社会科学修士はいなくなりすぎですね。大学潰れたとかあったっけ。

 

理系はどうかって?

理学は修士でピークの94%・博士で79%

工学は修士でピークの88%・博士で91%

農学は修士でピークの91%・博士で88%。

こちらも1割とかが減っているわけですね。理学博士は何があった。

 

中間結論B:特に人文学系、社会科学系にて減少が見られます。

 

③留学生という評価軸

ストーリーを考えてみましょう。博士課程まで進学するのは、若者にとって魅力的ではない。

それはなぜでしょう?

別に研究したくないし。院生は就職不安だから。学費もかかるから。奨学金は借金だし。

・・・そうすると、院生数を支える屋台骨は何か?

 

答え(の一つ)は、留学生の増加です。

まずはこちら、学生支援機構の調査をご覧ください。(ただし大学院生数というのをどの程度まで含んでいるかわかんないので、まあ、アレです、参考程度に)

この、H11年から29年までを抽出すると、こんな感じ。

 

 

人数にして、22,679人→46,373人。あくまでこの数字、博士と修士を合わせた数字ですが、取り敢えず単調増加しているとは認識してください。

で、前にも書きましたが、院生約25万のうち、4万いくらが留学生という事です。6人に1人と考えると、結構な割合ですね。

 

ではこれ、専攻別・修士博士課程別に考えるとどうなんでしょうか?

・・・と言いたいところですが、そういう調査はあんまりやられていないのかこちらの政府統計でも、留学生の修士・博士別というのは無いようです。誰か見つけておしえて

 

以下の数字は修士も博士も(その他も)ひっくるめた、留学生総数という事でお願いします。

(1)人文科学系

H10年:2,599人

H20年:4,260人

H29年:5,080人

 

(2)社会科学

H10年:5,110人

H20年:9,009人

H29年:10,348人

 

(3)理学

H10年:957人

H20年:971人

H29年:2,451人

 

(4)工学

H10年:5,699人

H20年:7,945人

H29年:11,843人

 

(5)農学

H10年:1,903人

H20年:2,218人

H29年:2,680人

 

増えてますね(小学生並みの感想)

取り敢えず、大学院生の中の留学生数というのは、どの専攻科においてもほぼ単調増加にあると認識してたら間違いないです。果たしてこれは国際化だと喜んでいいのか、日本人が大学院に進まなくなったと嘆くべきか。

それは、専攻科にもよります。H29年の数字を見てみましょう。

 

④専攻科別に、どれくらいの留学生がいるのだろうか

人文科学は

修士で、10,641人中3,789人(3人に1人)

博士で、7,697人中1,643人(4,5人に1人)が「外国人学生(≒留学生)」

 

社会科学は

修士で15,949人中7,996人(2人に1人)

博士で5,953人中1,718人(3,4人に1人)が「外国人学生(≒留学生)」

 

あるえー?待って落ち着こう。

 

理学は

修士で13,795人中1,347人(10人に1人)

博士で4,849人中1,223人(4人に1人)が「外国人学生(≒留学生)」

 

工学は

修士で65,530人中7,274人(9人に1人)

博士で12,690人中4,918人(3人に1人)が以下略

 

農学は

修士で8,826人中1,338(6人に1人)
博士で3,542人中1,415(2,3人に1人)が以下略

 

という計算…?あれ、何か間違ってない?あれ?

社会科学系修士課程で2人に1人って、いくらなんでも、あれ?(´・ω・`)

農学も、あれれれ?

 

中間結論C:(数字間違ってる気もしないではないんですが)人文社会科学系は修士において特に、留学生が占める割合が高い。自然科学系は博士において高い。

 

⑤けつろん

今日の結論です。

前までの記事でも書いていますが、留学生が日本の血税を食い散らかして云々の議論には乗らないことにしています。

しています、

が、

 

これは、日本の大学院に日本人が行かなさ過ぎではないでしょうか。

もちろん国際化の成果とか、あるいは日本人学生は他国に留学しに飛び立っているのです、というのもあるのでしょう。

ですがそれ以上に、日本人学生が日本の大学院・ひいては博士課程・あと人文社会学系に行かない(それもネガティブな理由から)という側面を強く感じます。

日本の大学が魅力的だから大学院に留学生が溢れる、と、日本の大学に魅力が無いから大学院に日本人が行かなくなっている、では問題の重大さが正反対に違います。

 

これから3年、5年と傾向が変わるでしょうか?変わらないでしょう。ますます日本人は大学院に行かなくなり、外国人への依存度を高めていくでしょう。

 

どうしたらいいって?そりゃ、もう、どうしたらいいのかしらね。