『○○、こっちこい!』

夕食後、舎房(部屋)でくつろいでると、いきなり大声で自分の名前が呼ばれ、見ると担当刑務官が窓越しで手招きしていた。

『○○、明日移送な』
『えっ、明日っすか』
『そう明日、朝早いから今の内に準備して直ぐ出れる様にしとけよ』

いきなりの告知にビックリしながら、翌日、面会予定だった内妻の事が頭に浮かんだ。

仕事の有休を取り、電車で一時間以上掛けて会いに来てくれるのに、窓口で移送された事を知って、寂しく帰って行く内妻を思うと、なんとか連絡してやって欲しかったが、無理なこと頼んでも仕方ないのでわかりましたと返事をした。

『どこに移送ですか?』と聞くと、担当刑務官が書類を見ながら『えーと○○は。。松山や。良かったな』と言った。

何が良いのが解らなかったが、一応うれしそうな顔をして『ありがとうございます』と頭を下げた。

その夜、房の仲間が最後の晩餐(お菓子と珈琲)をしてくれ、みんなとの刑務所話に盛り上がったが、何も知らず面会に来る内妻が可哀想で何度も頭に浮かんだ。



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