大阪ダブル選挙の結果をデータとして纏めた上で、分析をしたいと思います。

・データ

☆中盤電話調査
●読売
大阪W選情勢調査 知事選は吉村氏が先行
http://archive.is/ADoUo
●毎日、産経
大阪府知事選で維新リード、市長選はやや優位 本社情勢調査
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20190331/k00/00m/010/236000c
大阪ダブル選 都構想賛否が投票に影響 本社情勢調査
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20190331/k00/00m/010/247000c
自民「野合批判」払拭に躍起 大阪ダブル選
https://www.sankei.com/politics/amp/190331/plt1903310023-a.html
●朝日
大阪府知事・市長のダブル選挙 情勢調査の結果は・・・ ABCテレビ
http://archive.is/ytlV9
☆当日出口調査
●NHK
大阪知事選の出口調査
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20190407/0014231.html
大阪市長選の出口調査
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20190407/0014232.html
●毎日、産経
自民支持層、反維新へ投票4~5割どまり 勝敗分ける 大阪ダブル選・出口調査
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20190407/k00/00m/010/134000c
自民票、維新へ流れる 大阪ダブル選出口調査
https://www.sankei.com/politics/news/190407/plt1904070035-n1.html
●朝日
維新ダブル勝利、都構想の賛成票が支え 朝日出口調査
http://archive.is/VN6tQ
☆結果

吉村 小西 知事選計 投票率
2,266,103 1,254,200 3,520,303 49.49%
松井 柳本 市長選計 投票率
660,819 476,351 1,137,170 52.70%

 

 

・都構想の賛否と投票先

上記データをもとに、都構想の賛否を見ると下記の通りになります。

    賛成 反対
電話調査 読売3/28~30 40.0% 47.0%
毎日3/29~31 44.2% 41.4%
朝日3/30~31 43.0% 36.0%
出口調査 NHK 58.0% 42.0%
読売 58.9% 41.1%
毎日など 57.6% 40.2%
朝日 6割 4割

△都構想の賛否(市内)

電話調査では賛否が拮抗しているのに対し、出口調査はどれも6:4で賛成派が優勢となっています。
これについては、
①反対層が電話調査に答えただけで投票に行かなかった
②1週間で賛成派に変わった
の2つが考えられます。

普通に考えたら①しかないと思われそうですが、②も一定数加味する必要があると私は考えています。
その根拠は後程触れます。

NHKは出口調査のグラフを出していましたが、目視では都構想賛成の96%程度が松井、反対の82%程度が柳本に入れているようなグラフでした。また、毎日は松井に投票した人の89%が都構想に賛成、柳本に投票した人の92%が反対と答えていると報じます。

これを数字で案分すると下図のようになります。

  都構想賛成 都構想反対
  ①松井 ②柳本 ①+②計 ③松井 ④柳本 ③+④計
NHK 633,176 26,382 659,559 85,970 391,641 477,611
毎日など 588,129 38,108 655,010 72,690 438,243 457,142
2015年住民投票(参考) 694,844     705,585

△都構想賛成票・反対票の投票先(市内)
 

おおむね2社の数字があっているので信憑性はあると言えます。

松井は圧勝したとはいえ、2015年の住民投票の賛成69万票を下回っており、また柳本は反対票を取り込めてない(棄権)傾向が認められます。


・政党支持別投票先

大阪府内の政党支持率はNHKのデータで下の通りになります。

 

  2014衆 2015W 2016参 2017衆 2019W
維新 25% 36% 29% 20% 35%
自民 28% 26% 26% 32% 23%
無党派 29% 24% 20% 24% 21%
公明 9% 4% 11% 8% 8%
共産 9% 5% 7% 6% 6%
立憲       5% 5%
国民 3% 4% 6% 4% 1%

△政党支持率の推移(府・NHK)

自民支持層は25%程度で安定しています(今回の惨敗で減る可能性はある)が、維新支持層はダブル選挙になると急に増える傾向にあります。
政党支持率ってそんなことで動くのか?と思いますが、実際にそういう数字になっています(地方選挙の時は日本維新と大阪維新の合算になるのも多少影響あるかもしれない)。メディア露出が増える事、一騎打ちの状況になることで維新が主役になること、野合批判が効くこと等が理由でしょうか。国政選挙も含めた維新のコア支持率は25%程度と見えます。
あと、公明党支持層は自主投票で臨んだ2015年は半数近くが投票に行ってないと見られます。

また、産経の中盤情勢報道では、政党支持率は自民31.3%、大阪維新18.8%とあり、投票日までの1週間の間に政党支持率がひっくり返った可能性があります。都構想の分析で「反対票が1週間で賛成派に変わった可能性がある」としたのはそのためです。

 

NHK(※概算) 朝日
  支持政党 松井 柳本   支持政党 松井 柳本
維新 39% 97% 3% 維新 44% 97% 3%
自民 23% 35% 65% 自民 21% 33% 67%
無党派 18% 55% 45% 無党派 15% 50% 50%
公明 7% 15% 85% その他 20% 20% 80%
共産 6% 25% 75%  
立憲 5% 25% 75%
国民 1% 25% 75%
               
  毎日など 読売      
  松井 柳本 松井 柳本      
維新 98.2% 1.8% 97.8% 2.2%      
自民 50.0% 50.0% 50.3% 49.7%      
無党派 56.5% 43.5%      
公明 17.0% 83.0% 14.1% 85.9%      
共産 27.8% 72.2% 18.8% 81.3%      
立憲 32.2% 67.8% 37.3% 62.7%      
国民 33.0% 67.0% 28.6% 71.4%      

△政党支持別投票先(市内)

朝日も政党支持率も出してますが、NHKと大きく差はありません。
自民支持層はNHK・朝日は6割半柳本に入れたと報じてますが、毎日・読売は過半数切り崩されたと報じてます。
無党派は4年前は柳本が5割か5割強とも報じられていましたが、今回は松井が5割強固めています。

毎日・読売の数字では立憲支持層の3割が松井に投票し、共産支持層も2割が松井に投票しています。
維新の共産批判戦略は自民支持層には響いても共産支持層にはあまり響いてない、ということでしょうか。

  衆院選
(参考)
NHK(※概算) 朝日
  支持政党 松井 柳本   支持政党 松井 柳本
維新 284,672 443,496 430,191 13,305 維新 500,355 485,344 15,011
自民 268,271 261,549 91,542 170,007 自民 238,806 78,806 160,000
無党派 204,691 112,580 92,111 無党派 170,576 85,288 85,288
公明 170,897 79,602 11,940 67,662 その他 227,434 45,487 181,947
共産 99,872 68,230 17,058 51,173  
立憲 133,936 56,859 14,215 42,644
国民 56,233 11,372 2,843 8,529

△政党支持別投票先・案分(市内)

NHKと朝日のデータを数値に落とし込みました。
維新支持層が40万人以上いてほぼ全員松井に投票している計算になるので、柳本側は自民支持層が切り崩されるともうどうにもならないと言えます。ただ、政党支持率の推移を見ての通り、維新の政党支持率40%の中には浮動票も含まれており、コアな支持率はもう少し少ないと思われます。逆に言えば、数字上では無党派層の票差はそれほど大きくありませんが、実際はもっと離されているとも言えます。

 

  NHK(※概算) 毎日など
  支持政党 吉村 小西 吉村 小西
維新 35% 99% 1% 98.3% 1.7%
自民 23% 55% 45% 56.2% 43.8%
無党派 21% 60% 40% 61.5% 38.5%
公明 8% 25% 75% 22.8% 77.2%
共産 6% 33% 67% 29.0% 71.0%
立憲 5% 36% 64% 30.4% 69.6%
国民 1% 25% 75% 38.0% 63.0%

△政党支持別投票先(府内)

知事選はこんな感じです。知名度不足もあり、柳本を一回り劣勢にした感じです。それにしても自民…。

 

  17衆院
得票
17政党
支持
19政党
支持
吉村 小西
維新 934,972 688,718 1,232,106 1,211,160 20,946
自民 943,711 1,101,948 809,670 455,034 354,635
無党派   826,461 739,264 454,647 284,616
公明 553,451 275,487 281,624 64,210 217,414
共産 316,651 206,615 211,218 61,253 149,965
立憲 486,253 172,179 176,015 53,509 122,507
国民 208,550 137,744 35,203 13,377 22,178

△政党支持別投票先・案分(府内)

NHKの政党支持率に朝日の投票先割合を掛けてます。
2017年衆院選の得票、およびNHK調査の政党支持率の案分も併せて載せています。


・まとめとして

維新の勝因は駅立ち・市政報告会・どぶ板、さらには統一行動デーなどをまめにやって、政党としての足元がしっかりしている所に加え、空中戦もうまく成功した事であると考えられます。内容の真偽はともかく、徹底的に数字を盛り込んだビラも効果的でした。
対する自民側は、地上戦もそうですが、維新ビラの検証など空中戦の対応でも情報発信が十分でなかったように思います。

>自民市議団の川嶋広稔副幹事長は、取材に「地元での普段の取り組みが弱かった」と敗因を分析。
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20190408/k00/00m/010/110000c

これに尽きるのでしょう。

また、非維新で共闘して自民支持層が半数離反した割には共産立憲は支持を固めておらず、自民はダブル選挙の野合批判に引っ張られて府市議選も惨敗したとあっては、もういい加減共闘は止めるべきではないでしょうか。連合を選挙に組み込んでおきながら後になって共闘否定するなど対応のブレも致命的でした。
都構想の賛否というワンイシューであれば自民と共産がそれぞれの考え方から同じ結論になることもありますが、首長選はそれとは異なります。維新は「都構想のために辞職する」とワンイシューのような選挙を仕掛けながら、相手側がそれならと共闘を始めると都構想の話は控えめにして、経済成長の話や福祉医療の話、共闘批判に持っていく。なかなかよく考えたなあと思います。

またこのことから、この圧勝から都構想の住民投票でも圧倒的賛成多数になると捉えるのは間違っていると考えています。NHKでも「都構想は反対だが維新に投票した」という有権者の話を繰り返し報じていました(上の分析でも反対票の7万票以上が松井に投票してる計算なので実際そうだろう)。ただ、少なくとも前回の否決は上書きされた形になり維新の戦略勝ちと言えます。
住民投票で実際に自治体の制度が変わるとなり、自分の生活に直結する話になるともう少し有権者の投票行動の傾向は変わるのかな、とは思います。ただ自民党は足腰となる地方議員が壊滅している状態で、有権者も勝ち馬を好みますので、そこがどうなるかな、といった所でしょうか。


・蛇足

あと、分析と称したいい加減な記事が出回ってるのでついでに否定しておきたいと思います。

なぜ維新は逆風の中で勝ったのかーー大阪ダブル選 三浦 瑠麗
http://lullymiura.hatenadiary.jp/entry/2019/04/07/201701
https://twitter.com/kyoneshige/status/1115182308431032321

米重氏も触れてますが当初松井が逆風であったという認識からすでにずれており(日刊ゲンダイ等はともかく、大手メディアは一度も柳本優勢と報じてない)、さらに酷いのは「景気対策を重視する層が維新に多く投票した」とするデータが無いのに、「投票した人の重視した点も、維新の主張も、成長の重視でした」と総括しています。
まあ三浦さんは維新政治塾の講師なので中立の人ではないんですが、これが国際政治学者ってのもなあって感じです。


維新はなぜ大阪で勝ち続けるのか?(古谷経衡) - Y!ニュース 
https://news.yahoo.co.jp/byline/furuyatsunehira/20190408-00121400/

この記事の人は三浦氏より遥かにヤバい、というかファンタジーの世界にいます。
以前の記事で維新が「自らの改革」と主張しているものは關や平松の頃からの案件も多いと書きましたが、天王寺公園のホームレス問題に至っては磯村の時代の話です。これが「維新のおかげ」になるんだから歴史捏造もいいとこです。御堂筋がビジネス道路になったのも維新のおかげらしいです。なんともまあ。


橋下徹氏「大阪市では年間約3万人が死亡(高齢者以外含む)、約2万人が誕生。どんどん人口構成が変わり、それが新しい時代というもの。今後、益々都構想賛成派が増加する。」
https://twitter.com/hashimoto_lo/status/1115564250871685120

次は維新創業者の橋下氏。この氏の発言については倫理的な問題はともかく、データ的な解析でも間違っています。
分析に書いた通り「都構想反対派は柳本に入れずに棄権した」が維新圧勝の実体であり、賛否を住民投票とダブル選で単純比較すること自体好ましくないのですが、年代別の傾向で見ても決して「都構想否決はシルバー民主主義」とは言えないからです。

2015年に産経が行った調査では20代では反対が圧倒的多数だとする調査もありました。
https://www.sankei.com/west/news/150511/wst1505110012-n1.html

また、人口比から考えて70代の方「だけ」の反対で否決はあり得ないことは下記のblogの方が詳しく解析しています。
https://blog.goo.ne.jp/akira45/e/2b8b4d5f6e75eb5445dece6fc3b5c0de

そもそも維新が「若者政党」という認識は必ずしも正しくなく、確かに今回の出口調査や衆院選などでも確かに傾向としては60代以上よりは30代・40代の支持が高いですが、10代・20代の支持は大体どのデータでも30代・40代に比べて落ち込んでいます。橋下氏が引用しているデータでも同様の傾向が読み取れます。というか、橋下氏が引用してるデータだと、4年前に比べて20代の都構想賛成が8ポイント以上も減ってるということになるのですが・・・。
ちなみに、毎日では唯一都構想反対が多かった年代が10代であると報じています。このことからも橋下氏の高齢者叩きの馬鹿馬鹿しさが分かるかと思います。
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20190407/k00/00m/010/134000c


誰が「維新」を支持したか――大阪・首長ダブル選挙の光景から
https://hbol.jp/189858

最後に、この松本創氏の分析はまだ自分の実感と近く、同意できるものもありましたので紹介しておきます。

 

(5/4追記)

毎日新聞が検証記事を上げていました。これも自分の実感と近いので紹介します。

 

大阪ダブル選、府・市議選に衆院補選…次々と勝利する維新の強さ、その要因は

https://mainichi.jp/articles/20190502/k00/00m/010/119000c

検証:強い維新、裏に「市場調査」 「二重行政」「民営化」…響く言葉分析 大阪で連戦連勝

https://mainichi.jp/senkyo/articles/20190503/ddm/005/010/052000c

 

>「マーケティング」と圧倒的活動量

>「二重行政」「民営化」「大阪の成長戦略」「大阪万博誘致」「大阪都構想」。無党派層の関心を引く五つのキーワードを織り交ぜた演説モデルも添え、府議選や大阪市議選の候補者に参考にするよう促した。

>これらのワードは維新の大阪都構想戦略本部が主体となり、インターネット調査などから導いたとされる。維新の戦略は、商品を売るために市場調査や販売戦略を駆使するマーケティングと似ている。

 

>メディア戦略の巧みさに目を奪われがちだが、維新の強さを支えるのは、圧倒的な活動量だ。過去2戦2敗だった衆院大阪12区補選では、統一地方選前半戦を終えたばかりの府議ら約50人を応援に投入。ベテランであっても街へ飛び出し、ノルマを課して街頭で政策ビラを配布するのが維新のスタイルだ。

>大阪維新の会は2010年4月に自民党を離党した地方議員らで結成。自民党出身者以外の割合が増しているが、地道な選挙を重んじる姿勢はぶれていない。当時を知る衆院議員は「仲間の選挙を自分の選挙のようにやれるのが強みだ」と結束に自信を見せる。

 

>維新が一枚岩で戦ったのに対し、自民の選対スタッフは「選挙を仕切る中心人物がおらず、演説内容を分析して指摘する人間もいなかった」と嘆き、「戦略も活動量もなかった。負けるべくして負けた」と振り返った。