『寅さん』を見終わった

何回目だろうか

同じ映画を繰り返し何回も観るのは『寅さん』だけかもしれない

『寅さん』

『男はつらいよ』

この映画に惹かれるようになったのは50才を過ぎた頃からで、以前は面白い映画だとは思っていたがここまで感情移入はしていなかった

心理学を勉強して心理カウンセラーになった今自分を分析して思うことは

私は寅さんに憧れを抱いているのかもしれない

正確には寅さんを囲む濃密な人間関係に憧れを抱いているのだろう

私の人生の記憶は寅さんの故郷である葛飾柴又から始まる

『男はつらいよ』の第1作は1969年に公開されている

私が柴又に住んでいたのは1967年頃

柴又の駅から歩いて10分ほどにあるアパート

六畳と四畳半に小さな台所、トイレは共同でまだ汲み取り式だった、勿論風呂は無い

電話は無く洗濯機も無かったテレビは白黒があったように記憶している

父は会社を起業したばかりで母は上野の畳屋で事務員をしていて兄は小学校5年生

そんな状況から私の人生の記憶は始まる

まだ、『寅さん』の撮影は始まっていない

兄は毎日保育園に私を迎えに来てくれていた

そして母が帰ってくるまで私の面倒を見てくれていた

学校が終わって友だちと遊ぶこともせず毎日幼い弟の世話をする

大変だったろうと思う

それなのに幼い私は母恋しさから時折兄の目を盗んでトイレに行く振りをしてアパートと抜け出して、柴又駅へ母を迎えに一人で歩いて行ったのを覚えている

駅の改札口にしがみついて母が電車から降りてくるのを待っていた

駅員もまた来てると思ったのかよく話し掛けてくれた

そこへ兄が追いかけてきて、不思議なことにこの事で兄に怒られた記憶は無い

二人で母を待っていた

本当は兄も早く母に会いたかったのではなかったのか、今はそう思っている

兄だって小学校5年生の子供だったのだ

『男はつらいよ』で柴又駅が映ると当時のことが思い出される

あの駅は寅さんにとってどんな場所だったのだろうか

私にとって柴又駅は母と兄と一体となって思い出される場所だ

『男はつらいよ』の撮影が始まったのは

たぶんこういう出来事の一年後位だと思う

その頃私は小学校に入学し、二年生になって上野に引っ越し転校した

『男はつらいよ』の第1作はその頃に公開された

柴又で覚えている記憶はこのくらいか

残念ながら小学校の入学式も保育園の卒園式も私の記憶には無い

1985年の柴又駅(葛飾区史より)　　

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