自分の利益を優先する人、そのために他人を支配したり手下、奴隷のように扱う人、というのは、自己愛性パーソナリティー障害か、その傾向が強く出ている人といえるのは、ほぼ確実です。

利益追求というと、金銭的利益と考えてしまいがちですが、相手を苦しめる、困らせる、ということで自分の優越的な立場を確認して「悦に入る」というのもある種の利益獲得といえるでしょう。

今回の話しはあなたが将来、このような事態に遭遇しないための知恵、知識として覚えていてください。

親の取り合い、奪い合いというとすぐに遺産目当てと思ってしまうでしょうが、世の中そうそう単純な話しばかりではありません。

私が探偵として見てきたものの中には、家族、それも年老いた親を人質にするような事案もありました。
見方によっては誘拐とも思えるものです。

こういったことは、年老いた親、それも父親が亡くなり母親だけが1人で暮らしている時、子供である兄弟の間で起きることが、私自身の経験では多くありました。
兄弟間ばかりでなく、親の兄弟、つまりオジサン、オバサンが連れ出す、といったこともありました。

もし、あなたが兄弟や親族との折り合いに問題があって、年老いた親が1人暮らししているのであれば、こういった事件が起きる可能性もありますし、身近な人で、こういった問題を抱えている人もいるかもしれません。


さて、年老いた親を連れ出す、しかも、どこに住んでいるか教えない、知らせない、といったことをする兄弟、身内というのが現実にいます。

いつの間にか、実家だった家から連れ出し、施設に入れる。
入った施設については何も教えない、どうしてそうしたのかも教えない。
こういったことで兄弟間トラブルが大きくなっていきます。

私も最初に受けた時は、財産狙いのトラブルかと思いましたが、その時の親は公営団地に一人住まいという賃貸生活で、年金暮らし。特に目ぼしい財産はありません。
そして、連れ出したのは、依頼人の兄でした。

最初は兄の自宅でその家族と共に暮らしている、という話しでしたが、それはウソで初めから施設に入れていたようです。

その後は、何を聞いても一切答えず、親の持っていた家財の処分についても答えることはありませんでした。

依頼人自身も1人暮らし、家族はいない70歳で、親は90代。
こうなると依頼人も親に会いたくてタマラナイし、会えない、会わせてもらえない、となると会いたい気持ちはさらに膨らみます。
親も高齢なのでいつ亡くなるか判らないので、今のうちに会いたいという気持ちもあるでしょう。
そういったことを兄に話しても、まったく相手にしない、という状態でした。

その兄は母親との仲は、それほど「いい」という状態ではなかったそうですが、なぜ母親を引き取ったのか?疑問が残ります。

依頼人の方が母親とは仲がよく、離れた土地に住んでいて間隔はありましたが訪問もしていました。
しかし、依頼人と兄とは仲が悪く、さらにその妻とも折り合いが悪く、疎遠になっていたのです。

薄っすらと見てくるのは、兄が妹が大切にしているモノを隠してしまった、というケースです。
仲が悪く、昔から兄にいじめられていた妹が大切に思っている母親を隠してしまうことで、妹が悩み苦しむ姿を見たり想像することに快感を覚えているのではないか、と思ってしまったくらいです。


親の取り合い、というのはこういった形で始まり、進行していきます。
兄弟の間での仲の悪さ、相手が苦しむ姿を見ることで快感を覚える、というある種のマウンティングともいえることをしてきます。

今までいくつか受けてきた案件でも、どんなに頼んでも、ゼッタイに親の居場所を教えることはありませんでした。
兄弟の仲が悪い、さらにはその配偶者が唆す、または、いつもウソを吹き込まれることでその配偶者も共謀して合わせない、教えない、ということをします。

自己愛からくるのか、それとも他の原因なのか?
どちらにしても、自分の敵と思っている相手が悩んで苦しんで、会わせて欲しい、とお願いしてくる姿は彼等にとってはこの上ない優越感になります。

それとも、自分が親との関係が悪かったことで、親自身の苦しむ姿を見ることで悦に入っているのか。
それとも何かの復讐なのでしょうか?


兄弟間での奪い合いというのは、このような形ですが、ここに親族、それも年老いた親の兄弟が出てくる場合もあります。

独り暮らししていた子供が知らないうちに、親を施設に入れてしまう、というケースもありました。
ある日突然、親を施設に入れ、そのことだけを連絡してきた親族というのもいました。

これもやはり、どこの施設に入れたかは教えてくれません。
どんな理由なのかも判りません。

このケースでは親自身の蓄えが少しはあったようですが、それを目当てにと思えるほどではありません。
さらには、子供があちこち調べ上げて、ここだと思われる施設に行き当たったところで、転居して他の施設に移ってしまいました。

こうなると「絶対に会わせない」といった強い意思が感じられます。
その親族という人のことを依頼人に詳しく聞いてみると、やはり独善的、自己主張が強く、他人の意見を受け入れることはしない、自分の信念に基づいて行動しそれを他人にも強要する、とのことでした。
依頼人の言葉だけですから事実は判りません、しかし、ここまで会わせないようにするのであれば、納得がいきます。

このケースでもやはり、どんなに話しても頑として口を割りません。
いったいこの姉と依頼人との間に何があったのか、それは判りませんが、姉にとっては気に入らないこと、絶対に許さない気持ちになることがあったのは確実といえます。


二つのケースについてお話ししましたが、これ以外でも似たようなことはあって、そのうちの7割ほどでは、施設側との取り決めで、親との面会ができるのは入れた当事者のみ、という事になっていました。
つまり、親族の誰が来ようと、そこに入れた人、親族代表者となっている人以外は会えない、会うとしても、施設はその人に連絡をしなければならないように取決めていたのです。

これはいったい何を意味するのか?
どう考えても、年老いた親を拉致したか誘拐したか、と思えるような事態です。


このケースとは反対ですが、結婚した子供に生まれた子供、親にとっては孫ですが、それを親に合わせない、写真も見せない、というものも聞くことがあります。
私はまだ経験していませんが、時折そういった話しを聞くことがあります。
いろいろな事情があるのでしょうが、そこにも合わせない理由というものがあるはずです。

自己愛にしろ他の何かにしろ、こういった精神的ストレスを掛ける、希望や願望を打ち砕くようなことをする人というのは少なからずいて、泣いている家族、親族がいるのは事実でしょう。