今では日本でも有名になった「ドリアン」。
以前観たテレビのバツゲームで、食べさせられているタレントがいました。
強烈な臭いがするので、「これが果物の王様???」と思うのですが、食べてみると意外と美味しいのです。
でも、やはり臭いがすごいので、マレーシアの割と高級なホテルでは、「ドリアン持ち込み禁止」の
プレートが貼ってあるのです。
私もマレーシアに住んでいるときに、ドリアンを食べました。
ドリアンの季節になると、ドリアン売りの屋台が、あちこちに出回ります。
種類も多く、味もそれぞれ違うのです。
マレーシア人は、毎年ドリアンの季節をとても楽しみにしていて、物価が安いマレーシアにしては高い果物
なのですが、みんなドリアンを買って、美味しそうに食べています。
お手伝いのジュディさんの家の庭に、1本のドリアンの木があり、毎年たわわに実が実るらしいのです。
私が初めてドリアンを食べたのは、ジュディさんが持ってきてくれたドリアンでした。
「これ、私の家のドリアンです。美味しいので、食べてください。」と持ってきてくれたのは嬉しかったのですが、
さすがにあの臭いには参りました。
ジュディさんにドリアンの剥き方を教えてもらい、密閉のタッパに入れて、すぐに冷蔵庫へ入れました。
そうしないと、部屋中がドリアンの香りで充満してしまうからです。
皮はすぐに、捨てに行きました。
夫は以前、タイで美味しいドリアンを食べたことがあり、ドリアンが好きなので、美味しそうに食べていました。
私にとって、初めてのドリアンは、美味しいようなそうでもないような感じでした。
好んでは食べないけれど、出されたら食べる、くらいの・・・。
それから何日か後、ジュディさんは、ラップに包んだ、茶色の羊羹のようなものを
持ってきてくれました。
「これ、夫が作ったドリアンスティックです。沢山のドリアンを、鍋に入れて、水や砂糖などを加えないで、
火にかけて練ると出来ます。食べてみてください。」
にこにこ笑って、手渡してくれたものは、臭いといい、色といい、まるで・・・・・・・。
「あ、ありがとう。」と言って、せっかく好意で持ってきてくれたので、受け取りました。
夜、夫と一緒にドリアンスティックに挑戦してみましたが、すごい味がしました。
「だめだ・・・。食べられない・・・。」夫もギブアップしてしまい、しばらくは冷蔵庫に中にありましたが、
申し訳ないけれど、ジュディさんにわからないように、捨ててしまいました。
お土産やさんにも、ドリアン羊羹が売っているのですが、友達が興味本位で買って、口に入れた瞬間、
すぐに口から出したそうです。
友達曰く「すごい味がしたわ~。とても食べ物とは思えない!」
でも、食べる人がいるから、売っているのでしょうね。
ドリアン好きのマレーシア人にとっては、美味しいのでしょうか???
2年目のある日、またドリアンの季節がやってきました。
2年目にもなると、学校の役員や、日本人会の集まり、ボランティアなので、家を空けることが多く、
その日も、ジュディさんが来る前に、私は出掛けました。
そして、夕方4時くらいに、家に帰ると、玄関からなんだかガスのような変な臭いが・・・。
「なんだろう?ガス漏れ?」と恐る恐るドアを開けると、なんとテーブルの上に、
一つの大きなドリアンが、乗っていたのです。
ジュディさんが置いていったのでしょう。
「!!!」
私はすぐに窓を開け、ベランダにドリアンを出しました。
もう、部屋中、ドリアンの香りが充満しています。
しばらく窓を開けていましたが、なかなか臭いは逃げて行ってはくれませんでした。
息子や夫が帰ってくるなり「なんだ!この臭い!!」と言うほど、臭いが部屋に残ってしまいました。
以前、事情があり、車のトランクに一晩ドリアンを袋に入れて、しっかり袋を締めて、入れて置いた時も、
1週間くらい、車の中に臭いが籠もってしまいました。
冷蔵庫用の脱臭剤を2,3個入れましたが、1週間は臭っていました。
ある日、ジュディさんが少し寂しそうな顔をして朝、家にやってきました。
「実は、家のドリアンの木を切ってしまったのです。」
「えっ?どうして?すごくいいドリアンがなるのに。」
「2日前、夜中に家の近くで男が騒いでいる声が聞こえたので、起きて見てみると、インド人の男が
二人、言い争いをしていて、一人がもう一人の男をナイフで刺したのです。
警察が来て、大変な騒ぎになりました。
男達がもめた理由は、家のドリアンだったのです。
夜中によく、家のドリアンが盗まれていたのですが、その夜も、男がドリアンを盗もうとして、
ケンカになったらしいのです。
もうこんな騒ぎはごめんなので、思い切って、ドリアンの木を切ってしまったのです。」
ジュディさんは、とても残念そうな表情で、こう話してくれました。
「もう、ドリアンを持ってこれなくなりました・・・」
「そう、残念だけど、しかたがないわね。」
私は言いましたが、少しほっとした気持ちもありました。