アルケンの臭素化 | 有機化学勉強会

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アルケンの臭素化の機構。

ブロモニウムイオン(bromonium ion)中間体を経由する。
2つのブロモ基がトランスの立体化学で導入される(アンチ付加)。
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ブロモニウムイオンへの臭化物イオンの攻撃は、SN2反応と同様に、立体化学の反転を伴って進行する。
 
上の反応機構では、ブロモニウムイオンへの臭化物イオンの攻撃が三員環の上側の炭素で起きている。下側の炭素で起きれば、逆のエナンチオマーが生成する(下式)。どちらのエナンチオマーもトランスのジブロモ体であり、実際は両方のエナンチオマーが同じ量で生じる。つまりジブロモ体はラセミ体として生成する。
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上の例のような単純な反応では、何の工夫もしなければ、ラセミ体が生成することは自明である。そのため、反応式に片方のエナンチオマーしか書かれていなくても(一番上の式のように)、逆のエナンチオマーも同量生成している(つまりラセミ体として生成している)ということを表している。
では、くさび形結合(太線の結合)や破線結合(点線の結合)を使って構造式を書く必要はあるのだろうか。もちろん必要はある。2つのブロモ基が六員環に対してトランス(シスではなく)であることを示しているのである。この場合は、絶対配置ではなく相対配置を表すために、くさび形結合と破線結合を使っているのである。
 
ひとによっては、絶対配置ではなく相対配置を表す場合に、くさび形結合と破線結合の書き方を変えることがある。例えば、下の左側の構造式は絶対配置を表し、右側の構造式は相対配置を表す、というのもである(見やすいように多少極端に書いた)。ただしこの使い分けは、広く一般的に受け入れられているルールではないので、従う必要はない。
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 bromination