寒風吹きすさぶ冬の始まりである。
ついこの前まで残暑で「暑い暑い」と言っていたのが嘘のような冷たい北風が肌を突き刺していく。
そんな寒風の中を、身を縮めるように歩くDK3人。
「さみ~腹減った~」ずっとそれを繰り返すのは坂田銀時。白い髪の毛が異彩を放っている。
「言うな、銀時。余計腹が減る」憮然としてたしなめるのは、腰まで届くようなサラサラの長髪がトレードマークの桂小太郎。
「すまんのう、おまんら。ワシがカード使いすぎて利用停止になってしまったばかりに、今月はもう何も奢ってやれんで」一際背の高い坂本辰馬が二人に申し訳なさそうに告げた。
「ホンットだよ。お前の財布だけが頼りなんだからよ、俺もヅラも。頼むぜ」
「ヅラじゃない。さりげなく俺を巻き込んで、人の財布を当てにするような意地汚いことを言うな。」
「こいつも高杉もオレらと違ってお坊ちゃんなんだから、バイトの金尽きてる時くらいたかったってバチ当たらねぇって」
「またお前は勝手な理屈を・・・」
「そういや、高杉はどないしたぁ。おらんぞ」
「今日は週に一度のそろばん教室の日だから、先に帰ったろ」
「おう、そうじゃった。ワシはすぐ忘れる、いかんいかん。すまん、金時ぃ」
「銀時!」
「あぁいかんいかん、まぁた間違えよった。金時じゃったな、金時」
「銀時だって・・・」
「もういい、どっちでも。聞いてるだけで疲れて余計腹が減る」
二人の言い合いを桂が止めた。
「確かに、今のでどっと疲れて、益々腹減った~」
「わしもじゃ」
3人の腹がグ~ッと切ない音を立てた。
「こうなったら、あそこしかねぇな」
銀時の言葉に、二人が「「うん」」と力強く同意した。
「「「いっただきま~す!!ゴチになりま~す!!」」」
「ゴチになりますじゃないよ、バイト代入ったらちゃんと払いにくんだよ、あんたら全員わかってんのかい、そこんとこ」
「わ~ってるよ、ババァ」
「こら、銀時!お登勢さんはまだ60代だぞ?ババァとは失礼すぎる。お婆さんと言え」
「いやいや、それじゃどっちも一緒じゃろ。お婆さんだけど、ここはお世辞でオネェサン、言わんか、おまんら」
「あんたらまとめてホンット失礼だねぇ。客から貰ったケーキがあるからご馳走してやろうかい思ったけど、やめとこうかね」
「なんだよ、そんないいモンあんなら、もったいぶらねぇでさっさっと出しや・・・」
ガツッ!!
言い終わらないうちに、お登勢の強烈な拳骨が銀時の頭に振り下ろされた。
ここは繁華街、かぶき町、人情家お登勢がママを務める「スナックお登勢」。
どうしてそんな店の店主と知り合いかというと。
施設暮らしの孤児である銀時は、中学生の頃、雇ってくれるバイト先を捜していた。
14歳じゃほとんど雇ってくれるところがないので、繁華街なら、どこかに潜ってバイトさせてくれるところがあるかもしれないとかぶき町へ来て、そして、ここの戸を叩いたのだ。
「進学する為のお金を少しでもいいから自分で貯めたい」
銀時の事情を理解したお登勢は、学校には内緒で夕方の仕込みのバイトをさせてあげていた。
高校生になって堂々とバイトができる身分になった今はもうここで働いてはいないが、面倒見のいいお登勢をそれからも慕って、こうして金がない時はツケでご馳走になったりとか、何かと頼りにしていた。
卒業したら施設は出なきゃいけないので、ここの2階に間借りすることも決まっている。
いずれは大家と店子の関係になるわけだ。
旦那に先立たれ、子供のいないお登勢にとって、こうして懐いてきてくれる子らは内心可愛くて仕方がない。
何より、銀時の一見緩く生きてそうに見えるが、中身はまったく違う、しっかりと芯の通った昔気質の男のコであることは、これからの成長を何より楽しみにさせてくれていた。
死んだ旦那とどこか面影が重なる。
───まぁ、旦那の方が数倍イケメンだったけどさ───
昔を思い出しながら、フフ、と小さく笑った。
そして、ふと、思った。
(イケメンっていやぁ、このコらも中々どうして・・・)
と、思いながら、ケーキを嬉しそうに楽しそうに食べてる3人をマジマジと見ていて、あることに気付いた。
「おや、今日はあの眼帯したコどうしたんだい」
「あ?高杉のことか?あいつは習い事」
「習い事?何のさ」
「そろばん」
「高校生でそろばんって珍しいねぇ。へぇ~、そんな地味な習い事してるなんて、意外だよ」
「あいつ、ヤンキーぽくしてっけど、中身そんなんでもねぇから」プッとからかうように銀時が笑う。
「LINEなんて、既読つくの早いよな。返信もちゃんと返ってくるし」同意するように桂が続く。
「ワシは高校になってからの付き合いじゃけど、昔からあんなんか、高杉は」
「小学生の頃からあんなだよ。親が厳しいとかで年中反抗期みたいなヤツだったけど、実はマジメ」
「そうそう。当番とか決まりごとはきちんとやってたし、班活動の時は班長やることが多かったし。頼りにされるタイプだったよな」
小学生の頃から一緒だった銀時と桂だけが知っている坂本の知らない高杉。
彼の小さな頃の様子が目に浮かぶようで、聞いていて楽しい。
そんな昔話で盛り上がりそうだったところにお登勢が「ところでさ、あんたら」と、流れを変えた。
全員が何の話かと集中する。
「再来週の日曜ってヒマじゃないかい?」
「ヒマじゃねぇよ、バイトだよ、バイト。貧乏人にヒマなんかあるわけねぇだろ」
「俺もバイトです。ウチも決して裕福とはいえない家庭事情なんで」と、桂が苦笑する。
「ワシはヒマじゃけど・・・何か用っちゃ?なんならワシだけでも手伝うぜよ。金時にくっついてくるワシらにまで世話焼いてくれるお登勢さんの頼みじゃ、何でもやるぜよ」
「おや、嬉しいこと言ってくれるねぇ。でも、そうかい、一人だけかい」
「何だよ、人手がそんなにいるのか?」
「う~ん、沢山いるならそれにこしたことはないんだよねぇ」
「用件は?それによっちゃバイト休んでもいいぜ?その分バアさんが払ってくれればいいし」
「そうか、そういう手もあるね。よし、いいよ、アタシがバイト代払うからさ、やっとくれよ。ヅラはどうする?」
「桂です。お登勢さんまでヅラとか言わないでくださいよ」
「細かいこと気にしぃでないよ。で、どうする?あんたも引き受けてくれるなら嬉しいんだけど」
「わかりました。バイトは休ませてもらいます。お登勢さんの用事、引き受けます」
「で、何すんの、オレら」
「その日、近所の老人ホームでお楽しみ会やるんだけどさ、子供らの慰労訪問以外に、もっと大きな子供らと触れ合わせたいから誰かいないかって所長から相談受けてたのさ。どうだい、あんたら、ホームの慰労に行ってくんないかい」
「さって、オレは帰ろうかな。ババァ、悪いけど、この話はなかったということで・・・」
「何だよ、ダメかい」
「何が悲しくて折角の日曜日にババァやジジィの相手せにゃならんのよ」
「どうせバイトじゃないかい」
「その後でバイト仲間らと若者同士の交流があるんだよ」
「あの・・・俺、いいですよ。慰労会、行きます。ご老人の方々と振れ合いたいですし」
「わしもいいぜよ」
「高杉にも声かけようか。きっとあいつも行ってくれると思う」
「ホントにかい?ありがたいねぇ、助かるよ。あんたは?銀時、これでもダメなのかい?」
「勝手にやればいいだろ。オレはいいわ」
「なんでも圧倒的に婆さんが多いから、若いイケメンと触れ合ったら皆喜ぶだろうって所長が言うからさ、あんたらに声かけたんだけど。残念だねぇ、行けないのかい、ホント、折角イケメンのメンツをそろえられると思ったんだけどねぇ。ホント、残念だよ、銀時」
イケメンと連呼されて銀時の耳がピクピク反応する。
「ちっ、しょうがねぇなぁ、ババァどもがイケメンを欲してるっていうなら、オレが行かないわけにはいかねぇよなぁ」
「そうだ、銀時、ここはやはりお前じゃなけりゃあ」
「あぁ、ワシもそう思うぜよ。まっこと、おまんくらいのイケメンはおらん!」
「ババァ、慰問は任せとけ!」ビシッとお登勢に向かって指を差した。
「助かるよ、銀時!期待してるよ!」桂と坂本に向かって、見えないように「グッジョ」と親指を立てる。
「任せときな!で、何すればいいわけよ?」
「持ち時間は15分くらいで、何か派手にお年寄りらが元気になるようなことやって欲しいって言ってたね。そんなカンジのを頼むよ」
「引き受けたはえぇが、実際何すればえいがかぇ」
「う~ん・・・手品でもやる?」
「イケメンのイケてる手品か・・・どうも盛り上がりにかけるのう。なぁ、金時、おまん、何か考えちゅうか」
お登勢の店の帰り、公園に立ち寄って打ち合わせをする3人。だが、銀時はさっきからスマホで動画を見たまま。
「金時、のう、聞いとるのか。返事せんかい」
「うっせぇなぁ、ちゃんと考えてるよ。ババァといえど、元は女だろ?喜ぶことったら一つしかねぇだろ」
「失礼な、今でも女だろう、一応」
「いや、ヅラ、おまんも大概失礼ぜよ」
「そうか?」
「ババァの性別はどうでもいいんだよ。女だろうが元女だったものだろうが、喜ぶことといったらこれしかねぇだろ」と、二人に向かってスマホの画面を向けた。
「これは、なんだ?マンガか?」坂本の横で桂も「?」という顔をしていた。
「今流行のアイドル育成ゲームの一つだよ。二次元だろうと三次元だろうと、女が喜ぶっつったらこういうイケメンアイドルもんだろ。どうだ、オレらで当日限りの地域アイドルやらねぇか。慰問の日まで1週間ちょい、徹底的に踊りを練習して、盛り上げてやろうじゃねぇか」
「面白そうじゃのう」
「あぁ、いいな、確かに喜んで貰えそうだ。踊りなら、俺、得意だぞ。バイトでいつも踊ってるし」
この言葉に銀時の目が険しく光った。
「ヅラ、お前まさか、まだ、あのいかがわしいバイト続けてんのか?」
「いかがわしいとは何だ。変な言い方はよせ」
「いかがわしいだろ!酔っ払いのジジィばっかの店で女の格好して踊ってるなんて!学校にバレたらどうするよ!」
「だから性別ごまかしてんだろ。バレっこないから安心しろ。それにあれは短期で結構な稼ぎになるんだ。婆さまとの生活を俺が支えなきゃならないんだ。大学だって行きたいし、今のうちに稼げるだけ稼いで貯めるだけ貯めないといけない俺の事情、お前だってわかってるだろう」
「だからって、そんな危ないバイト・・・」
「だから危なくなんかないって!」
「危ねぇって言ってんだろ!ワリのいいバイトなら他にだっていくらでもあんだろうが!!何度言ったよ、やめろって!!」
「心配はありがたいが、お前、ちょっとうるさい」
「うるさいだぁ!?」
「あ~はいはい。この話はもうお終い。決めなきゃならんこと他にいっぱいあるしの。金時も、ヅラは子供じゃないんじゃ、本人が大丈夫っていうならそれでいいじゃろ」
「お前が口出すな、坂本!」
「何熱くなりよるんじゃ、金時。ちっくと落ち着け」
「銀時だって言ってんだろ!」
「どっちでもよか!」
「よくねぇよ!」
「お前らが言い争ってどうする。もうやめろ。打ち合わせにならないし」
「元はお前のせいだろが!」
「わかってるよ、安心しろ。ちょっと予定外の出費のせいで、バイト代が足りなくなったから、店長に頼んで、2,3日、臨時で雇わせて貰っただけだ。だから、もうやらない。これで納得したか?」
「本当か?」
「本当だ」
「なら、いい・・・お前の言うこと信じるよ」
腑に落ちないが、とりあえず納得してやる、というような態度。
「ありがとう、銀時」困ったヤツだ、というような顔をして優しく笑った。
「じゃあ、打ち合わせを再開するぜよ。どうじゃ、折角じゃから、全員で衣装もそろえるっちゅうんわ」
「そうだな、その方がアイドルっぽくてババァらも盛り上がってくれるな、きっと」
「目指すはなんちゃってアイドル。なら、これなんかいいんじゃないか。似たような衣装見つけて、なんちゃってコスのつもりで」
桂が指差したのは、二次元アイドルの衣装。
ジャケットにファーがついていて、軍帽を思わせる帽子を被っているキャラたちだった。
「おう、カッコえぇのう。明後日の日曜、早速原宿辺りで捜すぜよ」
「金はどうする。俺も銀時もバイト代入るのは月末だぞ?」
「それくらいの金、ワシが親にちっくと借金ばして用意しちゅう。おまんらはバイト代が入ったら、返してくれればえぇ」
「助かる、悪いが、それで頼む、坂本」
「了解じゃ」
「は?アイドルをやる?」
翌日、学校で銀時ら3人は高杉に昨日の一件を話した。いきなりの突拍子もない話に呆れたような声を上げて、高杉は若干引き気味。
「もう、やる曲も衣装も決めたんだ。お前も頭数に入ってるから頼むな」
「おいおい、何、勝手に決めてんだよ」
「ダメか、高杉。お前なら協力してくれると思ったんだけど・・・」
桂の言葉に、軽く、舌打ち。
「しゃあねぇな。いいよ、ノってやるよ」
「あ?何何、高杉クンってば、もしかして踊りとか自信ない?ならいいぜ~別に、参加してくんなくっても。足引っ張られんのゴメンだしぃ」
銀時の言葉に負けず嫌い気質が刺激されてカチンとくる。
「だからやるって言ってんだろ。話よく聞ぃとけや、タコ」
「ムリしなくていいんだぜ?踊りとか出来んの?」
「んなもん、意地で覚えてやりゃあ!動画あんならよこせ。授業中に見て、放課後までに覚えてみせてやるよ!完コピしてやらぁ!」
この言葉を引っ張り出せればしめたもの。生真面目で負けず嫌いな高杉のこと、本当に放課後には完コピしているかもしれない。
・・・とちょっと期待してたのだが。
「ぜっんぜんダメじゃん、てめぇ!!何が完コピだ!どこがだよ、それじゃ完コピじゃなくてピコ太郎だよ!!」
「ピしかあってねぇじゃねぇか。てか、マジ、ちょ、休憩。息苦しいわ」
かれこれ1時間、放課後のグラウンド脇の倉庫裏で練習を始めたのだが、すでに4人は息が上がって、高杉と共にへたり込んでしまった。
「てか、きっつー・・・歌って踊ってこれで3時間とかコンサートやんのって、凄くね?マジアイドル舐めてたわ、オレ。どうしよう、どこに謝ったらいい?」
「知らん、心ん中でアイドルに向かって頭下げとけ」
「AKB48人全員に下げんの、キツイわぁ」
「平成ジャンプも忘れたちいかんぞ」
「あ~そっちもあったかぁ」
「うるせぇ。いい加減鬱陶しいミニコントやめろ」
「そうだな。銀時と坂本のミニコントなんか聞いてても完コピできるわけじゃないし・・・」
言うと桂は立ち上がり、3人に向かって言い放った。
「さ、やろう。本番まで時間ないんだし。とにかく練習しかないよ」
それから毎日、休み時間は廊下で集まってステップとフォーメーションの確認、放課後は銀時と桂のバイトの時間まで学校で4人で練習。
二人のバイトが終わってから公園に集まって深夜にまた練習。
その成果と4人本来の運動神経のよさもあって、用意した曲はほぼほぼマスターできた。
歌は練習している時間が足りないので、カラオケでダンスを披露するスタイルに決定。
衣装も、先日の日曜に原宿でイメージにあったのをそろえることが出来た。
そして、今日は本番当日である。
「うお~ねみぃ・・・朝9時集合って何だよ。日曜に有り得ねぇ時間だろ」
「ジジババは朝が早ぇんだろ」
ホームまでの道中、銀時に続き、高杉もダルそうな言葉を吐いた。
ホームの前に到着すると、先に荷物と共に到着していた坂本が「こっちじゃ、こっち!」と手を振った。
用意したのは人数分のサイリウム。人力で運ぶにはちょっと重かったので、坂本が家の人に車を出して貰って運んだのだ。
「悪かったな、お前に任せちゃって」
「別にこれくらい平気ちゃ、って、あれ、ヅラはどうしたぁ。一緒じゃなかったのか?」
「あぁ、少し遅れるから先に行ってくれ、言うから、先に来た」
「あれ、そうじゃないか、来たぞ、銀時」
「ホントだ、おい、ヅラ!こっちこっち!」
集合に間に合わないと余程急いだのか、息を切らしながら3人の下に到着。
「ワルイ、遅れて」
「何だよ、風呂入ってたのか?」
「何でわかる?」
「お前の髪からいい匂いしてるもん」
「あぁ、そっか。まだ湿ってるんだ、実は」
「どら」と、桂の長い髪の先を握って「ホントだ」と憮然とした。
「ちゃんと乾かさねぇと、風邪ひくだろ。大体こんな寒い日に朝風呂とか風邪の元だろ。気をつけろ!」
「昨日、宿題してたら遅くなったからそのまま寝ちゃったんだよ。仕方ないだろ」
「いいじゃねぇか一日くらい入らなくたって」
「そういうわけにいくか」
「そうろうなぁ。今日は幼稚園の先生たちも来てるし、女子中学生もおるし、なんだかんだで若い女のコがこじゃんと来てるしの」
「あ、それで?」
「なわけあるか!お前らと一緒にするな!」
「お前らってどういうことよ。銀時と坂本と一緒にすんじゃねぇよ」
「何言ってんだよ。お前だっていつもならつけないようなアクセつけてノリノリじゃん」
「な、これは別にそんなんじゃねぇよ!たまたまだよ、たまたま」
桂に突っ込まれて普段つけたとこなんか見たことのない細い金のネックレスをつけた高杉は真っ赤になった。
その時。
「おはようございまぁす」
明るい可愛らしい声に4人が振り向くと、可愛い幼稚園児を引率してきた、まだ大学生にも見えるような可愛らしい先生3人からニコニコ笑顔で「今日はよろしくお願いしまぁす」と、頭を下げ挨拶された。
さっきまでの争いはどこへやら。
負けない笑顔で「よろしくお願いします!!」と、声を揃えて4人一緒に頭を下げた。
「うふふ、可愛いね」
「高校生だよね、あれ」
「若くていいなぁ。私も高校生に戻りたい」
口々にそんな会話をしながらホーム内へ入って行った先生らを見送った後。
「なんだよ、ヅラ、興味ねぇって態度だったくせによ」
「勘違いするな。俺は後ろのあの可愛い子供たちに挨拶したんだ」
ウガーッとつかみ合ってケンカを始めた銀時と桂は放って、「先に行くぜよ」と、高杉と二人、ホーム内へと荷物を持って入って行った。
自分の荷物とサイリウムの箱を抱え、二人で並んで歩きながら坂本は口を開いた。
「なぁんで金時はあぁヅラにお節介やくかのう。ヅラにしてみりゃあ鬱陶しいじゃろ」
「あぁ・・・まぁ、昔っから、あいつにとって、ヅラは特別だからな」
「特別?」
「そ、特別なんだよ、あの二人は」
「なんかよおわからんわ。もっと詳しく話してくれんと」
「そのうちわかる日がくんじゃねぇの?俺が推測して言うことじゃねぇし。これ以上しゃべる気もねぇからもう聞くな。この話は終わり。ところで坂本、金時じゃない、銀時だ」
「え、わし、ちゃんと言うてただろ?」
「言ってねぇよ」
「あんたら、こっちだよ」
お登勢に呼ばれて、ホーム内の一部屋に4人は入った。
スタッフらが忙しなく用意する中、一人の若い女性の介護職員が笑顔でやってきた。
「今日はありがとうござます。よろしくお願いします」
深々と頭を下げられ、4人も挨拶を返す。
「で、確認なんですけど、会場を少し暗くして、配ったサイリウムを振ってもらうんですね」
「そうです、用意の方、よろしくお願いします」桂が優しく笑んで答えた。
今日の演出の打ち合わせを軽く済ませ、後は衣装に着替えて、出番まで控え室で待機。
「いやしっかし、マジ、どんだけジジィババァばっかかと思ったら、結構若いネェちゃん多くね?」
「わしもそれ思った」
着替えながらそんな話で盛り上がる二人とは別に、高杉は桂が気になっていた。
(こいつ、また痩せたんじゃね?)
豪快にパンツ1枚になっている姿を見ながらそんなことを考える。
そんな視線に、桂が気付いた。
「どうした?」
お前、また痩せた?そう言おうと口を開くより先に銀時が反応した。
「ヅラ、なんだよ、そのアバラ!また痩せただろ、お前!」
「ちょっと忙しかったからそのせいだ。ちゃんと食ってるから心配するな」
「肉食ってるか」
「食ってる」
うるさいなぁ、という顔をする桂と、世話を焼く母親みたいな顔をする銀時。
そんな二人から目を逸らした高杉を、坂本は黙って見ていた。
10時から始まった慰労会は、地元町内会の寸劇や幼稚園児らによる歌の発表とプレゼントの手渡し、地元小学生、中学生の出し物、等々、着々とプログラムが進んでいっていた。
50人ほどのホーム入居者は、8割が女性。確かに、お登勢の言う通り、圧倒的にお婆さんの方が多かった。
みんな、心からの発表を見て、明るい笑顔を見せていて、終始和やか。
「もうすぐだな。お前ら、準備はいいか」
リーダー銀時が、皆に声をかける。
「あぁ」
「いつでも行けるぜよ」
「皆に楽しんで貰おうな、頑張ろう!」
黒いインナーに短い丈の白いファーのついた黒のジャケット。黒のタイトなパンツにハードな黒ブーツ。それに軍帽をイメージした黒い帽子。
指先がない皮の黒いグローブをはめ、全身全て黒で統一し、アクセサリーを身につけ、衣装はバッチリ。
元々、雑誌のモデルもできそうなメンツ。彼らのイケメンぶりを衣装がさらに際立たせる。
「うわ、うわ、凄い!カッコイイ!!」
近くで聞こえた声の方を見ると、さっきの幼稚園の先生の一人だった。
「あざっす!」銀時が親指を立てニッと笑う。
「わしら、今日限定の地域アイドルっちゅう設定で踊るき、応援頼むぜよ」
「え、応援!?します!!皆でめっちゃ盛り上げます!!頑張って~!!あ、写真、撮らせて貰っていい?」
「もっちろんじゃ!」
皆でスマホのカメラに納まっていると「ステージの用意できました。次、お願いします」と、声がかかった。
「よっしゃ、行きますか」
銀時の声で円陣を組む。
「盛り上げてこうぜっ!!」
「「「「おーっ!!」」」
「次は最後、なんと、おじいちゃんおばあちゃんの為に銀魂高校の有志たちが今日限定でアイドルをやってくれます!!みんな、サイリウム持った?それを思い切り振って、大きな声援送って応援しようね!それじゃ、お願いします!」
司会の若い女性職員の声がかかった。
それを合図に、4人がステージに出て行くと、途端、学生のコたちや、幼稚園の先生たちがいち早く反応した。
「え、え、なに、すっごいカッコイイ!!」
「誰あれ、本物?本物来ちゃったんじゃないの?」
「あれ、なんか、エミちゃんがやってるなんとかっていうゲームのキャラに似てる!!カッコイイ!!」
「なんであのヒト、銀髪なの?本物かなあれ?凄いキレイ!!」
口々に歓声が上がり、皆、スマホを取り出して動画撮影スタンバイ。
一瞬でテンションが上がった会場内に向かって4人で手を振って応えながら、スタンドマイクの前に銀時が立った。
「銀魂高校有志4人、名づけて、GTM4!今日が最初で最後のパフォーマンスです。楽しんでくだっさぁい!!爆音注意!!年寄りとちっこい子供は耳塞げよぉぉぉ!!いっくぜぇーっ!!」
ノリノリのMCの後、アップテンポのダンサンブルな音楽がスタートし、4人のダンスパフォーマンスが始まった。
用意した曲は3曲。短い持ち時間だが、最初から会場はハイテンション。
アップテンポの明るい曲の後はどこか妖艶な香りのするダンスナンバー、そして、あっという間に最後となる。
「えと、次で最後です。ちきしょ、やっぱ、3曲だと短えぇな。でも、その分、濃厚だったよな。最後まで楽しんで盛り上がってくれよぉ!!」
最後の曲が流れる。
「皆も踊れぇーっ!!」
銀時の絶妙のMCが皆を乗せる。
足腰が丈夫なおじいちゃんおばあちゃんは立ち上がって職員の補助のもと身体を揺らす。
幼稚園児らは適当に身体全部を使ってはねまくる。
小学生、中学生は恥ずかしがりながらも楽しそうに踊りだす。
そして、職員も引率の先生らも。
皆の嬉しそうな様子をお登勢が満足そうに眺めていた。
(さすがだよ、銀時、やってくれるねぇ。あんたに頼んで正解だったよ。どんなことでもこなしてしまうこの器用さは、あのコの才能だねぇ)
最後に用意した曲は最初から会場中で盛り上がってもらうのに、自分らで編集してロングバージョンにしていた。
それでも、やっぱり終わりはくる。
やがて曲が終わると、4人は息を切らしながらセンターである銀時の元に集合。
「えと、今日、ここに呼んでくれて良かったです。皆が嬉しそうにしてくれると、自分も嬉しくなるんだなって、なんか初めて気付いたっていうか・・・凄く優しい気分になるんだなって、思った。ありがとう、皆、ノってくれて。爺さんも婆さんも、元気で長生きしろよ。違う形になるかもしんねぇけど、オレらと会いたいって思ってくれるなら、オレらまた来るし。だから、皆、元気で!!本当に・・・」
「「「「ありがとうございましたーっ!!」」」」
4人一緒に頭を深く下げた。
拍手と歓声が沸きあがる。
そして、入居者らの下に降りて行って、全員でわちゃわちゃになりながら握手と記念撮影大会。
「今日はありがとう、お婆ちゃん。楽しんでくれた?」
一際高齢のお婆さんが気になった桂は、真っ先に寄って行き、優しく声をかけた。
思いがけず、力強く両手を握られ、戸惑った。
「あら、フネお婆ちゃんはこのお兄ちゃんが気に入ったのかしら」
戸惑う桂に助け舟を出す職員。
「かわえぇのう、ほんに、かわえぇ。高校生か?」
「えぇ、そうですよ」
「勉強、頑張りぃや。ありがとうな来てくれて。ほんにありがとう。また来てや」
涙を流しながら嬉しそうな顔をする、この、フネと呼ばれるお婆さんの言葉に桂まで涙ぐむ。
それは、自分の唯一の肉親である祖母と面影が重なるせいでもあった。
「うん、お婆ちゃん、また来るから、元気でいてね。風邪ひいちゃダメだよ」
「うんうん、ありがとう、ありがとう」
こうして、銀時らの「当日限定、一日だけの地域アイドルやっちゃいましょう企画」は終わった。
~後編に続く~
銀ちゃんらがやった曲はお好きなので妄想してください^^
公式でまたテンション上がるのきましたね^^
銀河侍やら、妖怪やら色々やってて、今度はマフィア!
スーツはカッコイイ。男ってスーツ着れるの、マジ、いいな~って思ってるアタシですw
そんなに色々やってんだから、アイドルもやってくれていいよね~と、MMD観ながら
考えてましたw
GTMは銀魂、これが銀ちゃんだけならSKT(坂田)になるw
ずっと前に、全部銀ちゃんモデルでSKT48として動画作ってた方いました
何がビックリって、PCのその高スペックぶりですよねw
ところで、マフィアのやつ、銀ヅラで予約w
でもこのケース、6に使えるのかな。企画がわかんないんだけど、頼んじゃったよ^^;
一番予約あるのは、タペストリーみたいです。
確かに、デカイサイズで眺めたいよね^^
ウチはかける壁がないんで諦めたけどw