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コロナのせいもあって、13年ほどアメリカに行っていなかった。明日、ハワイ経由でサンフランに。大谷選手が出場する8日のエンジェルスの試合を見た後、レンタカーで翌日ユージーンへ向かう予定。10時間ほどの運転は辛いので、マウントシャスタのホテルで一泊。

ユージーンのフランク宅で2泊させてもらって、シアトルへ。帰国は23日。さあどんな旅になるかな?

第四章

(五)ペットたちの災難

 

 飼っていたヒヨコが、わけも分からないまま、死んだのはしんちゃんたち兄弟妹にとって大変なショックでした。

 

 日本にいたとき、いつかほしいと思っていた金魚を、あるえん日でついに一ぴきだけ両親に買ってもらったことがあったのですが、たった一日で死んだので、ペットとは言えないほどの短いおつきあいだったのです。

 

 だから、金魚よりもずっとペットらしいペットに、三人は目をかがやかせていたのに。

 

「お母さん、なんで、ヒヨコたちはあんなに早く死んでしまったんやろ」

 なんどもしんちゃんたちは聞きましたが、

「たぶん、何かの病気か、もともと弱かったとよ」

 という説明しかかえってきません。

 それでも、「なんで、なんで」と三人がまるで山びこのようにたずねるので、お父さんはあることを思いつきました。

 

 数日後の夕方。

 しんちゃんの家の中で、子どもたちの笑い声がひびいていたとき、お父さんが、スーソさんから、また、ヒヨコをもらって来てくれたのです。それも、なんと、こんどは四羽も!

 

 兄弟妹三人のよろこびようはそれはそれは。まるで、正月とお盆とクリスマスがいっしょにきたような。しんちゃんなんか、うれしすぎて、手の中のヒヨコの首がおれるんじゃないか、と思われるほどヒヨコを見ながら、ふってふって、お母さんから注意されるほど。

 

「またきた、またきた、ヒヨコちゃんがまたきた」

 そっきょうの歌をしんちゃんがうたうと、じょうじちゃんとまち子ちゃんも、それをまねてうたいました。

 

「よーし、じょうじ、まち子。もっと大きなダンボール箱をもらいにいこう」

 

 翌朝、いつものボデーガで三人はさっそく大きいのをもらってきました。

 

 ヒヨコたちは、この前のヒヨコたちと同じように、かわいらしい動きでピヨピヨなきながら、広い段ボール箱の底を走ったり、おたがいにつつきあったりしています。

 

「じゃあ、これからヒヨコのお昼ごはんの時間やきね」

 しんちゃんたちは、この前のように、あのテーブルに横たわっているハエたちをひろって来ては、ヒヨコたちのいる箱の中に落としました。

 

 今度は四羽いるので、ハエ取りきょうそうはさらにすごいのです。ハエを一ぴきずついれて、どれが一番早くとるか、また、「百万円」をかけあいました。

 

 ところが……。

 

 数日後。日の出とともにおきたお母さんの声が家中にひびきました。

 

「あらっ、まあ!」

 

 ふだんとはちがったお母さんの声に、しんちゃんはベッドから飛び起きて、居間に行きました。

 

「どうしたと、お母さん!」

「ああ……」

 

 お母さんの目はしんちゃんにではなく、ヒヨコの箱にくぎづけになっていました。

 しんちゃんは、まさか、と思いながらその箱の中をのぞきこむと……。

 

 小さな黄色いヒヨコたちのむくろが、箱の底に横たわっていたのです。

 

しんちゃんがその一羽を手に取ると、数日前に手の中に入れた時の、あのあたたかくてやわらかな感じはなく、冷たくてかたい感しょくだけがありました。

 これは本当に心が痛みました。こんどこそ、元気なヒヨコたちと思っていたので、また死んでしまうなんて。

 

 あとから起きてきたじょうじちゃんとまち子ちゃんも、ただ、もうぼうぜんとしているだけです。

 

 お父さんが、

 

「なぜまた死んだのかなあ?……、しんいち、ヒヨコたちになにを食べさせちょったと?」

「これ」

 

 しんちゃんは、テーブルの上のハエの死がいを指さしました。

 

「えっ?これを食べさせちょったとか?そりゃあだめばい。これは毒で死んだハエばい」

 

 そういわれて、しんちゃんは、ヒヨコたちが死んだ理由がはじめて分かったのです。

 

「親鳥くらい大きければ死なないかもしれんが、体の小さなヒヨコにとっちゃ、たとえ小さなハエでもたくさん食べれば、毒が少しずつたまって死ぬとよ」

 

そうお父さんが説明してくれました。

 

 でも、もうおそすぎましたた。お母さんも、畑に出ていることが多いので、しんちゃんたちがヒヨコにどんなものをあげているのか、知らなかったのです。

 

 しんちゃんはうまれて初めて、悲しみで心が重くなる気持ちを知りました。じょうじちゃんもまち子ちゃんも、なみだがかれるまで泣きました。

 

 三人でおそうしきをすることになりました。ヒヨコたちを家の後ろの木の下にうめ、まち子ちゃんが、また「ヒヨコたちのおはか」と紙きれにえんぴつで書いて、小さな土もりの上にそれをさしました。そして、三人でいっしょに手を合わせて、

(ヒヨコちゃんたち、ごめんなさい。ぼくたちのせいで死ぬなんて。どうかみんないっしょに天国に行ってください)

 いっしょうけんめい、ほんとうに、いっしょうけんめい、おいのりをしたのでした。

 

第四章

(五)ペットたちの災難