防御率2.14

勝利15
投球回202
奪三振200
完投10
完封8
菅野が今年達成したリーグ一位の一部の記録だ。
無四球、WHIPやら細かい所で1位になっている指標は多くある。
そして上記のうち勝利数以外は12球団1位。
今年は主要タイトルである最多勝・最優秀防御率・最多奪三振を獲得、更には沢村賞を二年連続、しかも勝率を含む七項目全項目達成で獲得した。
球史を彩る名投手が名を連ねる賞だが、二年連続て獲得したのは杉下茂、金田正一、村山実、斎藤雅樹に次ぐ5人目の大偉業だ。
 
2017年のWBCからの鮮やかな活躍に胸躍った一方、
「来年はどうなるのか」「いや菅野なら大丈夫だろう」そんな不安と期待が交錯しながら始まった2018シーズン。
だが、開幕2戦はオフの間に修得したはずだったシンカーをうまく扱いきれず連続で敗戦投手。
続けるのか、捨てるのか。菅野の答えは明快だった。「捨てる」。
答えを出したあとの菅野の強さは去年に匹敵、シーズン終盤に至っては越えたといってもいい活躍を見せ、そして今季最終試合での、史上初ポストシーズンでのノーヒットノーラン締め。
「もしシンカーを取得していなかったら」と考えるのが馬鹿らしくなるような結果で終えた。
もっとも、交流戦前後に一度疲労や(毎年真夏に調子は落としているが)組み慣れていない大城と組んだりするなどもあり、成績を一時的に落としたこともあった(6月防御率3.09、7月防御率4.29)が、特に勝負の8月以降連続完封でチームの中継ぎの窮状を救う正しくエースの活躍をした。
「良い投手だが大事な試合で勝てない」という菅野評を吹き飛ばすCSをかけた争いでの熱投は、菅野の進化を証明するものだろう。
2017年も素晴らしかったが、2018年は沢村賞の全項目を達成するなど更に進化した姿を仲間に、私たちファンに、そして他球団にみせつけた。

しかし、どんなに凄い選手になっても変わらなかったのは捕手への接し方。
驕らず傲慢にならず18.44m越しに意思疎通をかわし感情を共有しながら投げていった。
特に今年はハグや握手しながらのハグなどバリエーション豊かになり、若い内野手陣が時に気まずく時に冷えた目をしながらゲームセットの直後を迎えるのは恒例行事となりファンのネタの対象となったほどだ。
常に忘れない捕手への敬意と感謝。
投手の記録はあくまでも投手の記録だ。何勝した、防御率はいくらか…もっといえばノーノーですらというのは投手にしか帰属しない。仮に投手リレーでのノーノーでも「投手リレーで達成したノーヒットノーラン」としか報道も記録もされない。
しかし、菅野はコメントで、あるいは勝利後の儀式で小林の存在を強調し続けた。
当の本人はいかなる時でも謙遜を貫くが、年間で活躍し非常に多くの指標で1位若しくは準ずるような数字を残し続けられたのは、間違いなく3242球の9割以上を受けた小林のおかげだろう。
菅野だって人間だ。常に同じ状態とはいかないだろう。そこをうまく汲み取ってその時の状態を正確に把握しながら勝利を組み立てていく。
平均15.49球/回はセ・リーグの規定投球回達成者の中で最少という。
凄く小さな積み重ねかもしれないが、出来るだけエコに投げることで最も燃費よく菅野の力を発揮できたのではないかと思う。
菅野の最大の武器はその精緻な制球力や投球術といわれるが、それを最大限に生かせる相方がいることで大きく生きる。
小林でなくても勝てる。それは今年の大城が証明した(良くも悪くも、だが)。
自分の頭で考えて配球を組み立て投げることができる…がそれを続けていたら当然持たないし、いかに負担を抑えるかも一年…連続してハイレベルで活躍する条件だろう。
そういう点では「阿吽の呼吸」と菅野自ら表現する小林の存在はとても大きな存在だと思う。
残念ながら最優秀バッテリー賞の受賞はならなかったが、二年連続沢村賞の快挙に少なからずの貢献をしている点は確信する。

王手をかけるは、金田正一氏の持つ3年連続の沢村賞受賞だけに、まずはしっかりこのオフ疲れを取ってまた新たにシーズンを迎え、獲得してほしい。小林と共に。
そしてなによりも優勝を。