このブログでは、時間外労働についての裁判例を紹介しています。
第二 事案の概要
一1 本件は,第一審被告を退職した第一審原告らが,その在職期間中,時間外労働(残業)に従事したのに一律3万円もしくは4万円の勤務手当が支給されたのみで割増賃金(残業代)が支払われなかった旨主張し,〔1〕〔イ〕法定外時間外労働(残業)については平成5年改正前の労働基準法37条1項(以下,単に「労働基準法37条1項」という。)に基づき,〔ロ〕法定内時間外労働(残業)については就業規則11条及び給与規程14条に基づき,それぞれ割増賃金(残業代)の支払いを求めるとともに,〔2〕法定外時間外労働(残業)につき労働基準法114条に基づいて付加金の支払いを求め,かつ,これらに対する訴状送達日の翌日(平成3年6月6日)以降支払済みまで,年6分の割合による金員の支払いを求めた事案である。
2 本件の主たる争点は以下のとおりである。
〔1〕タイムカードで労働時間を把握できるか。他に代わり得る資料はあるか。
〔2〕労働基準監督署に届け出た就業規則につき,事後に労働者への周知性を欠いて無効である旨主張することが許されるか。
〔3〕付加金の支払いを命じることが相当でない場合に該当するか。
〔4〕第一審被告が割増賃金(残業代)の請求に対し,時効を援用することは権利の濫用であるか。
〔5〕第一審原告横野,同小倉,同斉藤,同萩原政彦,同久保田,同八巻は,本訴請求期間の全部もしくは一部において,労働基準法41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」に該当し,割増賃金(残業代)を請求できない立場にあったか。
〔6〕第一審原告らは,事業場外労働に従事し,業務遂行や勤務時間につき自ら決定していたので労働基準法38条の2第1項により,労働時間の算定ができず,時間外労働(残業)がないといえるか。
〔7〕第一審原告らに支払われた出張日当・会議手当は,時間外労働手当(残業代)の性格を有するか。
3 原判決は「〔1〕第一審被告は,時間外手当(残業代)から定額の勤務手当に代わった後もタイムカードを設置し,これにより勤務時間の管理を厳密に行い,第一審原告らは一部の者を除いてタイムカードへの打刻を継続的に行い,記載内容も労働実態に合致した不自然なものではないので,右タイムカードに基づき第一審原告らの時間外労働(残業)を算定できる。一方,タイムカードがない部分,タイムカードに記載のない部分は,時間外労働(残業)時間を算定できないので,第一審原告らが従事した時間外労働(残業)時間について特段の立証がない限り,タイムカードの記載のみによるべきことになる。〔2〕第一審被告の就業規則・給与規程によれば,時間外労働(残業)に対する賃金の支払いについて,就業規則上,法定内時間外労働(残業)か法定外時間外労働(残業)かによる区別をしていないので,法定内時間外労働(残業)時間についても割増賃金(残業代)を支払う趣旨であると考えられる。就業規則について従業員の意見聴取や周知の手続きを取るのは,その作成・変更について労働者の意見を述べる機会を与えようとする趣旨であるから,使用者が右手続を経ていないことを理由に,その効力を否定することは許されない。〔3〕第一審被告が定額の勤務手当に代えたのは従業員間の公平の確保のみならず,人件費の抑制という面もある。第一審被告も従業員の時間外労働(残業)が常態化して,定額の勤務手当では労働基準法に違反すると認識し,時間外手当(残業代)の支給を検討していた点からすると付加金の支払いを命じないとすることはできない。〔4〕〔イ〕証拠保全の申立は権利の行使そのものでなく,訴訟の準備行為に過ぎない。したがって,権利の存在が公に確認される訳ではないから証拠保全の申立を時効中断事由である「請求」ないし「仮差押,仮処分」に準じたり,「裁判上の催告」としての効力を認めることはできない。〔ロ〕また,第一審原告らが第一審被告に対し,タイムカードの提示を要求したからといって,第一審被告がこれに応じなければならない訳ではなく,証拠保全の際にタイムカードの検証ができなかったからといって,第一審原告らの権利行使に対する妨害行為となる訳でもない。以上から,第一審被告の消滅時効の援用が権利の濫用に当たるとはいえない。右〔イ〕,〔ロ〕によれば,第一審被告の時効の援用により,昭和63年12月分から平成元年4月分までの割増賃金(残業代)等の請求権は既に時効消滅しているといえる。〔5〕労働基準法41条2号にいう「監督もしくは管理の地位にある者」とは,労働条件の決定,その他労働を管理する地位にある者のことをさし,右管理監督者に当たるか否かはその名称にかかわらず,実態に即して判断すべきである。第一審原告らは,それぞれの課や支店において責任者の地位にあったものと認められる。しかし,他の従業員と同様の業務に従事し,出退勤の自由もなかったから,経営者と一体的立場にあるとはいえず,割増賃金(残業代)等が発生しないなどとはいえない。〔6〕第一審原告らと同様の業務に従事していた契約社員は,タイムカードに基づき時間外手当(残業代)が支給されていたのであるから,第一審原告らの勤務時間はタイムカードで把握できるし,実際にもタイムカードで勤務時間が管理されていた。仕事量の増大によって,第一審原告らの時間外労働(残業)が常態化していた実態に照らすと,第一審原告らがその勤務時間を自ら決定していなかったことは明らかであり,第一審原告らが勤務時間の算定が困難な事業場外労働に従事していたとはいえない。〔7〕勤務手当と出張日当,会議手当は,それぞれ,その支給の目的,支給条件及び支給対象者を異にしているので,出張日当や会議手当は時間外労働(残業)に対する手当としての性格を有するものではない。」などと判断して,第一審被告の争点〔2〕・〔3〕,同〔5〕ないし〔7〕の主張をいずれも排斥したが,第一審原告らのタイムカード以外の時間外労働(残業)時間の算定を認めず,かつ,第一審被告の時効の援用を認めて,第一審原告横野,同斉藤,同久保田及び同小倉の請求を棄却し,その余の第一審原告らの請求を一部認容した。
4〔1〕第一審原告らは主としてタイムカードに記載がない部分について全面的に割増賃金(残業代)を否定された点を不服として,〔2〕一方,第一審被告は原判決が労働基準法上の労働時間とはいえない部分についても割増賃金(残業代)を認めたとして,いずれも原判決を不服として本件各控訴に及んだ。
企業の方で、残業代請求についてご不明な点があれば、契約している顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、不当解雇、保険会社との交通事故の示談交渉、敷金返還請求・原状回復や多重債務(借金)の返済、遺言・相続の問題、家族の逮捕などの刑事事件などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。
第二 事案の概要
一1 本件は,第一審被告を退職した第一審原告らが,その在職期間中,時間外労働(残業)に従事したのに一律3万円もしくは4万円の勤務手当が支給されたのみで割増賃金(残業代)が支払われなかった旨主張し,〔1〕〔イ〕法定外時間外労働(残業)については平成5年改正前の労働基準法37条1項(以下,単に「労働基準法37条1項」という。)に基づき,〔ロ〕法定内時間外労働(残業)については就業規則11条及び給与規程14条に基づき,それぞれ割増賃金(残業代)の支払いを求めるとともに,〔2〕法定外時間外労働(残業)につき労働基準法114条に基づいて付加金の支払いを求め,かつ,これらに対する訴状送達日の翌日(平成3年6月6日)以降支払済みまで,年6分の割合による金員の支払いを求めた事案である。
2 本件の主たる争点は以下のとおりである。
〔1〕タイムカードで労働時間を把握できるか。他に代わり得る資料はあるか。
〔2〕労働基準監督署に届け出た就業規則につき,事後に労働者への周知性を欠いて無効である旨主張することが許されるか。
〔3〕付加金の支払いを命じることが相当でない場合に該当するか。
〔4〕第一審被告が割増賃金(残業代)の請求に対し,時効を援用することは権利の濫用であるか。
〔5〕第一審原告横野,同小倉,同斉藤,同萩原政彦,同久保田,同八巻は,本訴請求期間の全部もしくは一部において,労働基準法41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」に該当し,割増賃金(残業代)を請求できない立場にあったか。
〔6〕第一審原告らは,事業場外労働に従事し,業務遂行や勤務時間につき自ら決定していたので労働基準法38条の2第1項により,労働時間の算定ができず,時間外労働(残業)がないといえるか。
〔7〕第一審原告らに支払われた出張日当・会議手当は,時間外労働手当(残業代)の性格を有するか。
3 原判決は「〔1〕第一審被告は,時間外手当(残業代)から定額の勤務手当に代わった後もタイムカードを設置し,これにより勤務時間の管理を厳密に行い,第一審原告らは一部の者を除いてタイムカードへの打刻を継続的に行い,記載内容も労働実態に合致した不自然なものではないので,右タイムカードに基づき第一審原告らの時間外労働(残業)を算定できる。一方,タイムカードがない部分,タイムカードに記載のない部分は,時間外労働(残業)時間を算定できないので,第一審原告らが従事した時間外労働(残業)時間について特段の立証がない限り,タイムカードの記載のみによるべきことになる。〔2〕第一審被告の就業規則・給与規程によれば,時間外労働(残業)に対する賃金の支払いについて,就業規則上,法定内時間外労働(残業)か法定外時間外労働(残業)かによる区別をしていないので,法定内時間外労働(残業)時間についても割増賃金(残業代)を支払う趣旨であると考えられる。就業規則について従業員の意見聴取や周知の手続きを取るのは,その作成・変更について労働者の意見を述べる機会を与えようとする趣旨であるから,使用者が右手続を経ていないことを理由に,その効力を否定することは許されない。〔3〕第一審被告が定額の勤務手当に代えたのは従業員間の公平の確保のみならず,人件費の抑制という面もある。第一審被告も従業員の時間外労働(残業)が常態化して,定額の勤務手当では労働基準法に違反すると認識し,時間外手当(残業代)の支給を検討していた点からすると付加金の支払いを命じないとすることはできない。〔4〕〔イ〕証拠保全の申立は権利の行使そのものでなく,訴訟の準備行為に過ぎない。したがって,権利の存在が公に確認される訳ではないから証拠保全の申立を時効中断事由である「請求」ないし「仮差押,仮処分」に準じたり,「裁判上の催告」としての効力を認めることはできない。〔ロ〕また,第一審原告らが第一審被告に対し,タイムカードの提示を要求したからといって,第一審被告がこれに応じなければならない訳ではなく,証拠保全の際にタイムカードの検証ができなかったからといって,第一審原告らの権利行使に対する妨害行為となる訳でもない。以上から,第一審被告の消滅時効の援用が権利の濫用に当たるとはいえない。右〔イ〕,〔ロ〕によれば,第一審被告の時効の援用により,昭和63年12月分から平成元年4月分までの割増賃金(残業代)等の請求権は既に時効消滅しているといえる。〔5〕労働基準法41条2号にいう「監督もしくは管理の地位にある者」とは,労働条件の決定,その他労働を管理する地位にある者のことをさし,右管理監督者に当たるか否かはその名称にかかわらず,実態に即して判断すべきである。第一審原告らは,それぞれの課や支店において責任者の地位にあったものと認められる。しかし,他の従業員と同様の業務に従事し,出退勤の自由もなかったから,経営者と一体的立場にあるとはいえず,割増賃金(残業代)等が発生しないなどとはいえない。〔6〕第一審原告らと同様の業務に従事していた契約社員は,タイムカードに基づき時間外手当(残業代)が支給されていたのであるから,第一審原告らの勤務時間はタイムカードで把握できるし,実際にもタイムカードで勤務時間が管理されていた。仕事量の増大によって,第一審原告らの時間外労働(残業)が常態化していた実態に照らすと,第一審原告らがその勤務時間を自ら決定していなかったことは明らかであり,第一審原告らが勤務時間の算定が困難な事業場外労働に従事していたとはいえない。〔7〕勤務手当と出張日当,会議手当は,それぞれ,その支給の目的,支給条件及び支給対象者を異にしているので,出張日当や会議手当は時間外労働(残業)に対する手当としての性格を有するものではない。」などと判断して,第一審被告の争点〔2〕・〔3〕,同〔5〕ないし〔7〕の主張をいずれも排斥したが,第一審原告らのタイムカード以外の時間外労働(残業)時間の算定を認めず,かつ,第一審被告の時効の援用を認めて,第一審原告横野,同斉藤,同久保田及び同小倉の請求を棄却し,その余の第一審原告らの請求を一部認容した。
4〔1〕第一審原告らは主としてタイムカードに記載がない部分について全面的に割増賃金(残業代)を否定された点を不服として,〔2〕一方,第一審被告は原判決が労働基準法上の労働時間とはいえない部分についても割増賃金(残業代)を認めたとして,いずれも原判決を不服として本件各控訴に及んだ。
企業の方で、残業代請求についてご不明な点があれば、契約している顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、不当解雇、保険会社との交通事故の示談交渉、敷金返還請求・原状回復や多重債務(借金)の返済、遺言・相続の問題、家族の逮捕などの刑事事件などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。