空飛ぶタイヤを買ってみました。少しだけ読んでいます。

走行中のトラックのタイヤが外れて転がり、歩行者に直撃し即死させてしまったという事件をご記憶の方も少なくはないと思います。その事件をテーマにした本です。

最初に被害者家族について書かれているので、最初の所は一人でコッソリ隠れて読んでください。

事故の責任を誰がとるかということで、運送会社とトラックの製造会社に警察の調査が入ることになります。

事故の原因が運送会社の整備ミスかメーカーの製造上の欠陥にあるのかということになります。

 

赤松運送では、丁寧な整備が行われていたのですが、メーカー側の調査結果が整備ミスとなり、家宅捜索をされて、業務上過失到死の罪に問われるかもしれないという状況に追い込まれます。

そういう状況の時に、同じような事故が過去にもあっとということを知り、群馬まで当時の事故の関係者に会いに行き、事故現場まで足を運んで、詳しく話を聞き、当時の事故調査の内容に納得できないものを感じ、今回の事故と共通する傾向を見出します。

 

メーカーの担当者には何回電話をしても連絡がとれないので、直接会いに行くことにします。

約束の日時に製造メーカーの本社を訪問するのですが、担当者(沢田)が不在で長時間待たされます。

代わりの社員(村上)が出てくるのですが、「再調査をする必要性がない、馬鹿げている」と言われ全く話し合いにならず喧嘩のようになってしまいます。

結局、何時間待っても担当者(沢田)は、現れず全く相手にされていないことを実感します。

 

製造メーカー(ホープ自動車)の会社は、営業部と車両製造部と品質保証部と検査部とカスタマーサービス部と販売部に分かれていて、それぞれに成績を競い合っていて、良い成績を出した部署の人間が、偉そうにして威張り散らすことができるというのが独特の社風となっていました。

そういう緊張感もあってか品質保証部の調査結果に疑問を持つ意見も聞かれるようになってきて、沢田ももう一度資料を見直さざるおえなくなります。

 

赤松社長達も専門家を招くなどして、自分たちで独自に調査して事故の原因を突き止めようとします。

そんな中、警察に渡した過去のデーターを調べていくうちに「ハブに摩耗、亀裂あり」という整備担当者の記録を見つけます。

つまり、今回の事故に関わる危険とリスクを赤松運送側では、整備時に指摘していたということがはっきりしたのです。

 

沢田は調査結果について品質保証部に聞いてみた結果は、S1でした。

不具合の程度は、S1、S2、S3、にランク分けされていて、S3がリコールの対象になり、S1は、緊急性のないものとして判断されます。

沢田も情報を集めようと各部署の若手の中心的な社員を集めて飲み屋に誘います。

酒を飲みながら雑談などをしている内に、幹部を中心にしたT会議(秘密会議)というものがあることを知ります。

そして何年か前に今回の事故と同じような事故が群馬で起こって、その事故の対応策についての検討会が行われていたのがT会議だということを知ります。

群馬の事故は、どうにでもなる内部的判断によってS1とされたため、国土交通省に報告されることもなく、事故の原因は警察によってスピードの出しすぎによるものとされ、表沙汰になって騒がれることはありませんでした。

(どうしてトラックのタイヤが外れる事故が、S1になるのだ!なんで普通に走っててスピード出しすぎになるのだ!)

要するに「リコール隠し」のための方策が秘密会議によって練られていたということです。

沢田は「リコール隠し」を止めさせようとして、上司や社内の色々な人に働きかけるのですが、「お前には関係ない、口出すな、お前は経営に関わるな」と言われ、相手にされません。

 

同じグループ企業の系列銀行のホープ銀行の伊崎は、同業他社の影響で業績低迷が続くホープ自動車の収益状況があまり良くないので、融資の時にはいつもフルマラソンを走るような苦労をしていました。

学生時代の友人で週刊潮流で記者をしている榎本から久しぶりに連絡を受け、ホープ自動車が内部告発されて、事件が記事になることを知らされ、ホープ自動車からは手を引くように忠告されます。

 

ホープ自動車の幹部)(三浦)は偉そうな態度で「金を貸せ」と言ってきて、伊崎が「検討するので、時間がかかります」と言うとそん「なことは、お前の考えることではない」」と怒り出す始末で、その様子を見ていた同僚の紀本は冷や汗が出てきそうになります。

ホープ自動車は、内部告発されたことが記事になるので、融資はしばらく見送るべきことを上司に内々に告げると顔が引きつって真っ青になります。

具体的にどういう内容のことが内部告発されるのかが分かれば何か手を打てることもあるだろうと、上司に頼まれ、伊崎は榎本に聞いてみますが、「たとえお前の頼みでもそれはできない」と断られてしまいます。

伊崎は「俺が詳しく調べるから、それを記事にすれば良いではないか」と言いますが、「そんないい加減な内容のものは扱えない」と断られてしまいます。

 

銀行は、取引している企業の活動に関して責任を負わなければならないものだと、伊崎はホープ自動車の過去の記録を調べ始めます。

ホープ自動車が3年前にもリコール事件を起こしていて、リコールの届け出をせずに闇改修を続けていたことが問題となり、社長が交代して、事故調査委員会と倫理委員会をもうけ社内の体制の見直しが図られていたのでした。

しかしながら、それは名目だけのことで、現実の危機管理体制は旧態以前としたままで、ほとんど変化がなかったのでした。

 

赤松運送はメインバンクの東京ホープ銀行と一行取引をしていたので、いつもの通り資金繰りのための融資を頼みに行くと、家宅捜索をされるようないかがわしい企業に資金の支援をすることはできないと、手の平を返したように冷たく断られ、資金繰りが難しくなってしまい、結局、専務の宮代が取引先に支払いを待ってもらうよう頭を下げることになりました。

 

不公平な調査結果に納得できない赤松社長は外部の調査機関に事故の再調査をしてもらうため、ホープ販売の益田に壊れた部品を返してもらうように連絡してありました。

 

「事故の壊れた部品を返して欲しい」という赤松の要望は、すぐに沢田のもとに届き、沢田の立場はとても複雑なものになりました。

製造メーカーとしては、すでに調査結果のでた部品を再調査されることが分かっていて、返却するなどということはあり得ないことであるからです。

しかし、経営陣と結託してなりふり構わない謀略武人な品質保証部を追い落とし鼻を明かすには、再調査で品質保証部に不利な結果が出れば好都合になります。

沢田の中で全く相矛盾する二つの論理が同居することになってしまったのです。

非常に微妙な立場に立たされた沢田の頭中に、今回の事件と赤松を利用すれば、諸悪の根源である品質保証部を中心とした権力構造とパワーバランス、派閥体制を一新することができるのではないのかという誰にも悟られてはならない思いがいつの間にか存在しているのには本人も動揺を隠すことに神経を使ってしまうほどでした。

 

沢田も本心は、所有者が返してくれと言うのだから、返却するのが道理であると思っていたのだが、そのことが現実的に不可能であるというのがホープ自動車の実態であった。

顧客対応の責任者の沢田は、部品返却の要求を断るように上層部から指示されていてた。

何かしら理由をつけて断れば良いということなのだが、もし後で問題になった時、顧客対応に問題があったということで、責任を取らされるということにもなりかねない、今回の事故の責任を全て押し付けられることだってあり得るという「トカゲのしっぽ」にされかねない立場の沢田としては、「はい、分かりました」と素直に言うことなど到底不可能であった。

 

ホープ自動車は、部品は検査のために切断したりしてバラバラの状態になっているから、返却しても意味がないというようなことを言ってくるので、バラバラでも粉々でも構わないから所有者が返せと言っているのだから、返却する義務があるはずだと赤松は言い返した。