
ある小高い丘に、
黄金の木が立っていました。
その木には
かみさまから委ねられた役目があり
ひとが訪れては、
それぞれの思いを木に打ち明けて
ほんの少し勇気をもらってかえってゆくのです。
黄金の木には訪れたひとの数だけ、
とても綺麗な宝石が生まれ出て、
葉のつかないその木の姿を飾ります。
ほとんどの人間は、それをただ綺麗だね。と
眺め満足して帰ってゆくのですが
なかには自分だけ得をしようと考える者がいて
無理やりに木から宝石を剥がし取ろうとします。
ちょうど一昨日もそんなことがありました。
その男は釘抜きとハンマーを手にやってきて
ひときわ大きく光る宝石に手をかけました。
宝石は思ったよりあっけなくコロリと音を出して外れました。
男が手を叩いて小躍りしていると
宝石はみるみるその光を失ってゆきます。
賢明なみなさんはもうおわかりかと思いますが
木になっている宝石は、黄金の木から離れると
川辺の石ころのように光をなくしてしまうのです。
何も物言わない黄金の木は
傷ついて涙することもありませんが
何百年も丘でのすべてのできごとと
訪れたひとびとの暮らしや悩み、想いで話を
その幹に記憶しています。
ただかみさまから委ねられた役目を
よろこんでいつまでもそこに佇んでいるのです。