はい、ずいぶんご無沙汰しました、夜月なつめです。
まぁ半年も間は空いてないから別にもんだいは(ry

このお話は、もしかしたらまとまってないかも知れないですね……
親に見せてないですから、添削してもらってないですので……


最近学校とバイトが忙しくて小説が書けてなかったので、久々に書き上げたものになってしまいました。
まぁ半年も(ry


将来の夢は、ツアコンしながら小説書く事なので、頑張りますよ!
体力もつけますよ!
でも、バイト始めたから体力が付いた気がする。
あと、心に思ったことがすぐに顔に出るのもなおって……ないか。

でも、お客様相手だとどうしても自分が下なので、そう考えると、本当に下手に出るね。
上から目線にならないというか……
やっぱ人間意識を持つのが大切だと思うのですよ☆




なんか作品内容に触れてないねorz
これは、好きな人のために自分を変えようと努力する女の子を書きたくて書き始めました。
んで、そのままの君が好きなんだよ的な?(←ここはどっかに行ったけど。


あ、そうそう。
私はエブリスタを読んでいるので、「あの作品に似てる!」って思われる作品があれば、もしかしたらそれに影響されて書いたやつかもしれませんww



ちなみに次書いてるやつは男主人公です。
そしてこの作品にもタイトルに不器用が入るww
どんだけ不器用好きなんだよっていうww


次回の話は割と起承転結決まって書き始めてるので、こっちのよりは、まとまりがあるはず!!
でも結局書きたい事詰め込みすぎてまとまってなかったり……
「ちょっと良いかな?」
朝方恥ずかしさに任せて逃げ出し、微妙な空気になってしまった彼が、目の前に立っていた。
「……何で……」
クラスメイトは全員私たちに注目している。
最近は全く私の教室へさえ来ていなかった先輩が、再び私の目の前にいる。
多分一番驚いているのは私だ。
「うん、ちょっとさっきの埃っぽさが気になってね。勝手に調べた」
「……はい?」
「ちょっと来て」
そう言って、先輩は私の手を引いた。
ずんずん歩く先輩の顔は見えない。私は不安でいっぱいだった。
“埃っぽさが気になってね。勝手に調べた”
先程先輩はそう言った。……それって、私にあった昨晩から今朝にかけての出来事を調べたって事だよね?
って事は先輩が今連れて行こうとしているのって……
「はい、着いたよ」
先輩の教室。予感が確信に変わる……
教室の中を見れば、先輩のクラスメイト達が、教室の後方に固まって黙ってこちらを向いていた。
そして、教室の前方、つまり黒板の前には、私を体育倉庫に連れて行ったあの先輩達が……
「……どういう事ですか?」
「謝ってもらおうと思って」
先輩はやっぱり突き止めたんだ。私にあった出来事を。恐らく、今朝会った体育教師にでも話を聞いた。
それだけで、犯人まで調べ上げたんだ。
「彼女たちでしょ? 犯人。彼女達は否定しているけど」
先輩が犯人だと疑っているその先輩達は、私の事を睨み付けている。その行動は、自分達が犯人ですって言っているようなものだと思うが、先輩はその目には気付いていない。
「違います」
「……え?」
「私には何もなかったんです。授業サボって体育倉庫で寝ていたら気が付いたら朝だったんです」
告げ口をするような事はしたくなかった。先輩に、守ってもらわないと何も出来ない女だと思われたくなかった。
「……君はそんなに僕を信用してないの?」
「へ?」
思ってもいない彼からの言葉に思わず間抜けな声が出る。
「君が嘘をついているのが分からない程、僕はバカじゃないよ? それなのに君はいつまでも僕を欺こうとする。僕を信用していないから、本当の事を話したくないの?」
私が考えてもいない事を、先輩は考えていた。
「ち、違います! 私はそういうつもりじゃ……!」
「じゃ、どういうつもり?」
「っ!」
思わず先輩から目を逸らす。
言えるわけない。先輩に嫌われたくなくて必死なんだとか……
そんな事言ったら、先輩はきっと……
「ほらやっぱり、君は僕の事を……僕は君の事を好きなのに、君は僕なんか眼中にも入っていないんだろう?」
「いや……私は別に……」
 そこで、先輩の言葉に違和感を覚えた。
「……え? ……先輩が私を好き?」
今も私に興味を持ってくれている?
「……だから初めから言ってるでしょ? 君に一目惚れしたんだって」
「だって先輩はもっと綺麗な女の人に囲まれてて……だから私なんかは一瞬興味を持たれただけだって、周りにいないタイプの人間だったからだって……」
「誰がそんな事言ったの?」
誰も言ってない。いや、正しくは今目の前にいる女の先輩方に言われたけど、それは、言われる前から思っていた事。
「だって私には何にもなくて、だから、先輩に好きになってもらう資格もなくて……」
「一目惚れは理屈じゃないでしょ? 気が付いたら好きになってたんだよ。好きな所なんて僕にも言えない。全部が好きとしか言い様がないんだよ」
あまりに急な出来事過ぎて何も言えなくなってしまった。
「だから、君の事を守りたいんだよ。君を暗い倉庫の中に閉じ込めて、さらにそこで一夜を過ごさせた犯人を、僕はこのまま見逃すわけにはいかない」
「……それでも私は、先輩にその人達の正体を明かすつもりはありません」
 この言葉で、その出来事が本当だという事が先輩にも伝わってしまっただろう。
「……何で? やっぱり僕の事を……」
「いえ。ただ、私の中でその事は本当にあって良かったと思える出来事だったんです」
「……もしかしてMなの?」
「……違いますよ」
だって、先輩が気付いてくれたから。
確かに、あの場で助けてくれるのが嬉しかったのかも知れない。
倉庫のドアを蹴破って先輩が助けに来てくれると嬉しいなって思いもした。
そんな事は起こりはしなかったけど、先輩は私の僅かな異変に気付いてくれた。ただそれだけで嬉しかった。
「先輩に好きって言ってもらったこの瞬間で、今朝の出来事なんかどうでも良いくらいに嬉しくなれたんです」
本当の事を言うのは恥ずかしいと思って別の事を言おうとしたのに、気付けばより恥ずかしい言葉を発していた。
周りの男子からは冷やかしの声。怖々辺りを見ると、クラス内の女子からは冷たい目。
それに気付いて一歩後ずさりすると……
グラッ
「あっ」
 急に世界が揺れ、目の前が真っ白になる。立っていられなくなって、そのまま足が縺(もつ)れ後ろに転がりそうになって……
バフッ
体が一瞬にして動かなくなった。どこも痛くない……?
次第に良好になって行く視界には先輩がいっぱい映っていた。
よく見ると、先輩の腕が私の背中に回っていて、私の目の前には近過ぎる程の距離に先輩が……
「っ!!!」
先輩が私を抱きとめていた。
驚きと先輩の力と多少に眩暈(めまい)とで、動く事も出来ない
「みきちゃんさ、自分に熱がある事気付いてないでしょ?」
「……へ?」
「バケツの水かぶったまま一晩過ごすからだよ」
 ……本当に先輩はどこまで把握しているのだろうか。
「ほら、保健室行くよ」
 段々と頭の痛みが増してきて、我慢出来ずに私は先輩に身を任せた。
「先輩、私、名前、美紀って書いて『みのり』って読むんです……だから、みのりって呼んでください……」
 その言葉を最後に、私は意識を手放した。

「みのりちゃん? 起きた?」
耳元で先輩の声がする。
ここは……あ、保健室か。
「みのりちゃん? 具合大丈夫?」
 私の顔を心配そうに見つめる先輩の顔が目の前にあった。
ガバッと起き上がり、先輩から顔を逸らす。
どきどきして顔が赤くなっているのが自分でも分かる。ただでさえそうなのに、先輩はより私を赤くする言葉を発した。
「好きなの? 僕の事を?」
急に、思いもよらない先輩からのその言葉。思わず目をパチパチさせる。
「へ?」
「それとも嫌いなの?」
思わぬ言葉でも、その質問に対する答えなんか決まりきっていた。
「き、嫌いなはずがないです!」
「じゃあ、好きなんだ?」
「あ、いやそれはその……」
こんな言わされたような感じでその言葉を口にしてもいいのだろうか……それに、未だ口にした事のないその言葉を紡ぐのはとても恥ずかしい……
「……ごめんなさい」
「……何で謝るの?」
「いや、だって……」
先輩からの言葉にいちいち真っ赤になって反応する私は、先輩から見たらきっと子どもで……
「好きなの? 嫌いなの?」
「いや、その……」
「どっち?」
「だから急に何でそんな……」
「どっちなの?」
「き、嫌いじゃないです……」
「だめ。答えは好きか嫌いかしかないの」
何で先輩はこんなに私の目を真っ直ぐ見ていられるんだろう。不安なんてないのだろうか……
「いや、あの……」
あ、そうか。真っ赤になっている私をみて、先輩は私の気持ちなんてとっくに分かっているんだ。
その証拠に先輩の表情は自信に満ちている。
「す、す……す……」
 口にしてみようとしても、その言葉は簡単には口から出てくれない。
「ほら、たった二文字言うだけだよ?」
「じゃ、先輩が言ってくれたら言います!」
 咄嗟にその言葉を発して後悔した。先輩はきっとこんな言葉言い慣れていて……
「なら、良いや」
「……え?」
 あっさりと言って私にも言わせるかと思ったのに、先輩はそう言って私に背を向けた。
「……怒りました?」
「……」
「先輩?」
 今の一言で嫌われたのかも知れない……
「ご、ごめんなさい」
 私は慌ててベッドから降り、先輩の顔を見に行った。
「……真っ赤……」
「面と向かってそんな言葉恥ずかしくて言えないよ!」
「じゃ、じゃあ、何で私には言わせようとしたんですか……」
「……言って欲しかったから」
 急に先輩が子どもに見えてくる。
 そんな先輩が愛おしく思えて、気が付いた時には先輩の頭に手を伸ばしていた。
「何でよしよしするの……?」
「あ、すいません、つい」
 思わず手を引く。そしたら恥ずかしさが一気に込み上げてきた。
「もうちょっとしてくれても良いよ?」
 先輩が笑いながらそう言ったが、私は必死に首を横に振った。
「まぁ良いや。いつか言ってくれるんでしょ? その言葉」
 先輩のその質問に、私は俯きながら首を縦に振る。満面の笑みを浮かべた先輩がそこにいた。
「じゃ、帰ろっか」
「え? まだ学校……」
「誰かさんが寝すぎてもう放課後」
「え!」
 もしかして先輩はずっと付き添ってくれいたのだろうか……
「ほら、帰るよ?」
 先輩が目で示した位置を見ると、私のカバンが置いてあった。一体いつの間に取りに行ったのやら……
「……はい」
 先輩の彼女という立場が未だに理解出来てはいないが、多分そんなのは次第に理解できていく事なのだろう。
「じゃ、行こっか」
 先輩が当たり前のように手を差し出す。私はその手を震える手で握った……
「飽きられるの、早かったわね~」
「たかに告白されたからって調子に乗るからすぐポイされるんだよ」
「ただ私達とは違うあんたに、たかは一瞬興味を持っただけなんだから」
 放課後になった瞬間に体育館の横まで連れて来られて、私は先輩のクラスメイト五人に囲まれていた。
 調子に乗ってなんかいない……はずだったけど。
 先輩が私の元に来てくれなくなったという事はそういう事なのだろうか。
 一緒にいられたのは一日のみ……
 まだ先輩の事も良く知らないし、先輩にだって私の事まだ知ってもらってない。
 私の名前だって呼び間違えたままで、多分本当の読み方だって先輩は知らなくて……
(あ、そうか)
 ふと気付く。先輩は最初から私の事なんて何とも思ってなかったんだ。
 告白し終わって私が「はい」の返事をした時点で、先輩は既に私に興味が無かったんだ……そっか。
 私がそうこう考えている間にもその先輩達は何か言っていたみたいだが、全く耳に入っては来なかった。
「とにかく、一度頭冷やすべきだと思うのよね」
 一人がそう言いながら私を体育倉庫に押し入れ、別の一人がバケツの水を私にかけて、カギを閉めた。
(うっわ~マンガみたい)
 本当にあるんだ、こんな事……
まさか現実世界で、しかも自分がこんな状況に陥るなんて思ってもいなかった。
でも二次元の世界での主人公のように焦る事は特になく、冷静な自分に驚いた。
不幸なことに、今日は両親共に出張中で帰って来ない。しかもテスト前のために、部活も休みで、体育倉庫を使う人もいない。
私がいない事に気付くのは、早くても明日の朝のHR。
先輩がここで倉庫の扉を蹴破ってでも私を助けに来るのがロマンチックなんだろうけど、生憎、今は疎遠となってしまった仲だ。まず無理だろう。
(ま、いっか。お腹はすくけど)
急に連れて来られたために、身一つで、携帯すら持っていない。
何もする事のない私は、時間をつぶすのに最適な、“寝る”という行動に移った。

「ちょっと、ちょっと大丈夫⁉」
人の声で目が覚める。目を開けると眩しい光が……
「まさか、一日中ここに閉じ込められていたわけじゃないでしょうね?」
私は目を細めてその声を発したらしき人物を見る。
そこには一人の先生の姿が。確か自分の担当ではないけど体育の先生。
「朝ですか?」
「え、えぇ、七時よ」
 学校に来てまず体育倉庫を開けるのが日課なのだろうか。授業が始まるにはまだ早い時間だった。
私は、あれから一度も起きる事のないまま朝を迎えてしまったらしい。
それにしても、本当に誰も助けに来てくれないとは……
「ちょっと大丈夫なの?」
「あ、はいサボって寝ていたら寝すぎたみたいです」
 私はその場で考え付いたテキトーな言い訳を口にする。
「どこにも報告とかしないでください。面倒な事になるんで」
私はそれだけ言い立ち上がった。
寝過ぎなせいか少し痛む頭を押さえながら歩き出す。一度家に帰る余裕はありそうだ。
先生が色々言っているのを軽く受け流し、体育倉庫を出ていった。
まだ朝のHRまでは時間がある。走らずとも大丈夫だろう。
ただ何も考えずに家に向かって歩いていただけなのに、何でこういう時に彼に会ってしまうんだろう。彼の登校時間は毎日こんなにも早いのだろうか……
「……」
「……」
お互いに気付いてはいる。その存在に。
それでも話しかけることが出来ずにいるだけ。
「……あれ?」
丁度私と先輩がすれ違い、隣になった瞬間、急に先輩がそう言った。何も言わずに通りすぎると思っていたのに……
自分の事じゃないかも知れないのに、思わず立ち止まってしまう。
「……」
「……」
 お互いのしばしの沈黙の後、先輩が口を開いた。
「どうかしたの? なんか埃っぽい匂いがする」
思わず目を見開く。気付かれるとは思わなかった。よもやそれを聞かれるとも。
「いや、別に、何でもないです」
後から考えれば、私に言った事じゃないって思って過ぎ去ってしまえば良かったのかも知れない。でもその時の私はいっぱいいっぱいで、本当は倉庫の中に閉じ込められたのが怖かったんだとか、先輩がそれに気付いてくれたのが嬉しかったんだとか、そんな気持ちが急に溢れてきて……
「……何でもないなら何で泣くの?」
先輩はこっちを見ている。声の向いている方向からして恐らくそうだ。
でも私は先輩の方を向けずにいた。
涙なんて流すつもりはなかった。先輩の目の前でのその行動は、姑息な手段っぽく感じていたから。
でも気付いたら堪えられなくなっていた。
先輩が私の小さな変化に気付いてくれた。ただそれだけが嬉しかった……
「ありがとうございます」
「……え?」
私はその一言だけ残し、先輩に背を向けて駆け出した。
先輩は特に何を言うわけでもなく、私が角を曲がる瞬間にチラリと視界に入った時も、変わらずそこに立っていた。
「……みきさん? 僕、紺野(こんの)孝(たかし)」
 私の名前すら知らなかったようで、名札を見ながら彼は私の名前を口にした。……読み間違ってはいるが。
「いきなりで悪いんだけど、付き合ってもらえる?」
 週の中間水曜日。突然私のクラスに顔を出した先輩。
 相手は、学校中で有名な程イケメンな彼。何で今私の目の前にそんな先輩が立っているのかもよく分からなくて……
「……どこへですか?」
「それはわざと? それとも本気?」
 先輩の表情は真剣そのもの。恋愛的意味ととらえて間違えないようだ。
「えっと……」
「返事はこの場で求めたりしても平気?」
「……え、いや」
 この場で? このクラスメイト全員が注目しているこの中で?
「今朝一目惚れしたんだよね。人生初の一目惚れ」
多少軽い言い方ではあるが、突然の告白。
それは、学校中の人気者で、告白される事はあっても告白する事なんて無いような人からのもので……
 そんな人からの告白をこんな大勢の前で断る勇気も理由もあるはずがなく……
「わ、分かりました」
 人生初の告白は、あなたからのものでした。

「みきちゃん!」
 その日のお昼休み。先輩は平然とした顔で私の教室に入ってきた。
「え、何で……」
「ご飯一緒しよ」
 彼は満面に笑みを浮かべそう言った。
 先輩……クラスの女子が私を睨んでいる事に気付いていますか……?
「……あの」
「ん?」
「出来ればその……」
 人前であまり頻繁に声をかけないでもらいたいとか、そんな事を先輩に直接言えるはずがなくて……
「……やっぱり何でもないです」
「そう? じゃあ、お昼一緒しよ」
「はい……」
 今まで周りに嫌われないように人の顔ばかり窺(うかが)っていたせいでロクに友達もいなくて、ましてや男の人と付き合った経験もない。
 恋なんて、勿論した事もなくて……
「お弁当ですか? 学食ですか?」
「僕的には学食が良いね。かわいい彼女のお披露目も出来るし」
 か、かわ……
 いや、決して私は、自慢じゃないですがかわいくなんてないです!
「わ、私は、二人でお弁当が良いです……」
 だってその方が周りの目も気にならなくて……
「二人で? 二人きりで?」
「……え?」
 数秒後に、自分が大胆な発言を、教室のど真ん中でしてしまった事に気付く。
 自分でも分かるくらいに顔が赤くなる。
「いや、あの……」
「ちょ、ちょっと来て!」
 先輩がとまどう私の手を引いて席を立った。
「え……?」
前を歩く先輩の顔は見えない。
周りの女子が上げている悲鳴なんか聞こえてもいないかのように、先輩はその手を離さないまま、私を引っ張ってどんどん歩く。
 連れて来られたのは、人通りの少ない特別教室ばっかりの別校舎。
 一度も振り返らず黙々と歩き続ける先輩。
「あの、先輩?」
 私がそう声をかけた瞬間、先輩は一気に後ろを振り返った。
「もう、何でそんなに可愛いの」
そう言う先輩の顔は真っ赤だった。
そして次の瞬間、私は先輩の腕の中にいた。
「……へ?」
 先輩に抱きしめられてる……? 初めての体験にパニックになる私。
「ちょ、ちょっと先輩!」
「黙って抱きしめられてなさい」
 珍しく命令口調の先輩に、ドキリとする。
 抵抗のために先輩の体を押していた手は行き場を失って重力に従い力無く落ちる。
 人が通らないのを良い事に、先輩はいつまでも腕の力を緩めない。
 一体どのくらいの時間が経ったのだろうか。
 コツコツ コツコツ
 足音が聞こえてきた事により、私はハッとした。
「せ、先輩誰か来ましたよ!」
「……うん」
 先輩はしょうがないって感じで私から離れた。
「ごめんね、ご飯行こうか」
「……はい」
 結局食堂になったのかお弁当になったのかは分からずじまい。でも既に歩き始めてる彼にわざわざ“お弁当ならこっちに行きたいです”とは言えず……
「……」
「……」
 お互い何も話さず足を進める。途中、音楽教師とすれ違った。さっきの足音の犯人はこの先生である事は間違いなかった。
 この先生が来なかったら、まだ抱きしめられていたのかな何て考えてみる。
 瞬間ドキドキが止まらなくなったのに気付きつつも、それに気付かないフリをした。

「たか~」
「今日はから揚げ定食かさんま定食だよ~」
 食堂に着いた瞬間に女の子に囲まれる先輩。
 その勢いに身を引き、このままこの場を逃げ出しても大丈夫かな、なんて考えてしまい、慌てて首を振る。
「あれ? 誰、その子」
 ついに気付かれ、肩をビクッと震わせた。
「ん? 僕の彼女」
 先輩は平然とそう言った。途端に歓声とも悲鳴ともとれる声が食堂中に響き渡る。
改めてすごい立場になってしまった事を実感する。
「何でこの子なの⁉ 意外!」
「超恋愛初心者って感じじゃん?」
「今までの子とは違うタイプ」
 ドキッ
 そうだ。先輩は今までに多分何人もの女の人と付き合った事があって……いっつも女の人に囲まれていて……
今先輩を囲んでいる先輩達の中にだって、友達以上の関係になった事のある人もいるはず……
先輩は、もっと恋愛慣れしてて余裕のある女の子が良いのかな……
「前は前だよ。彼女が心配するから、昔の話は出来れば避けてくれるかな?」
 表情は一切変えずに、にこやかにそう言った先輩。
 ……気を遣(つか)わせてしまったのかな。迷惑をかけてしまったのかな。
「だ、大丈夫です。気にしてないので……」
 本当は気になって仕方がないクセにそう言い張る。
 だって今まで先輩の側には、私みたいにウジウジ考えてから行動するタイプの女の子はいなかったんでしょ?
 だったら私も、先輩に嫌われないように、一生懸命そんな女の子にならなきゃ……

 私は正門に立っていた。
ご飯を食べ終わって離れる時に、“放課後待っててね、一緒に帰ろう?”って先輩に言われたから。
何人かが私に気付き振り返る。先輩ってやっぱりすごい人だ。たった一日で私の噂はこんなにも広がっている。
私は周りからの視線を避けるように足元を見ていた。
「ゴメンね、待った?」
 先輩の声に顔を上げる。彼の両脇にはそれぞれ女の人が一人ずつ……
「ほら、だから、彼女と帰るって本当だったでしょ?」
 先輩はその女の人達をなだめるように言う。
「分かったわよ」
「じゃあね、たか。また明日ね」
 きれいな女の人はしぶしぶ先輩から離れて帰って行った。
「ごめんね、待たせちゃったでしょ?」
「いや、全然大丈夫です」
 私は自分で最高だと思える笑顔を先輩に向けた。
「……」
 先輩は、そんな私の顔を食い入るように見た。
「……何ですか?」
 人前なのに先輩は気にぜず顔を近づけてくる。
「僕、今、女の子といたんだけど」
「……知ってますよ?」
「……何とも思わないの?」
「……はい、何も、特に、別に」
 心の中を見透かされているのかと思い、慌てて目を逸らしながら否定する。
 先輩の周りには沢山の女の人がいる。
 私なんかよりずっと可愛くて、キラキラした女の子達。
 先輩は私に告白してくれたけど、本気じゃないのかも知れない。
 変わった子を手中に収めたかっただけなのかも知れない。
 でも、もしそうなら、それでも良い。先輩の隣にいる事が出来るなら。
 好かれなくても良い。
 ただ嫌われないように。
 それだけの願いだったのに。それすらも、私なんかには大ぎる欲だったのだろうか。
 その日以来、先輩は私の教室に来なくなってしまった……
はい、長編でした!!

完読した方、お疲れ様でした☆


まず、なつめママ、朴雪には毎回お世話になってます♪
ここにてスペシャルサンクスをば……


今実家を離れて暮らしているもので、わざわざ書いた小説を実家のパソコンにWardで送り、ドコモの家族無料通話をフルに活用して電話で添削していただきました!
ほんと長々ありがと♡



ひとまずサンクスはここまでにして……

このお話は、体の強くない女の子が書きたくて書き始めました。
そしたら気付くと短編では収まらない原稿用紙の枚数に……
全く、相変わらず私の思うままに動いてくれないキャラ達ばっかで困ります。



この小説はまぁ長編なだけあり長い時間をかけて書いたわけですが、その間に漫画も描いたりしてました。
でもつくづく、自分には小説が合ってるなぁと……

何か、漫画は描いてて飽きるんですよね……
1ページ書くのにものすごく時間がかかるし。
小説はパッと見、上手い下手が分かりにくいし、思ったことを文章でつづるだけなので……
まぁ勿論、だから簡単だとは言いませんけど。
むしろ言えませんけど。


これと、ちょっと前に公開した七本の虹は、12月発売のコバルト1月号に結果発表があります!

今からわくわくして待ちます!
長編は添削表(評価シート)も付けてくださるんで!
それを見て精進しようと思います☆
 時々訳の分からない行動をとる礼央だけど、それでも私の事を好きでいてくれているって自信はあった。沢山の女の子達を捨てて私を選んでくれた礼央。
 毎朝マンションまで迎えに来てくれて、帰りも送ってくれる。
 私の事を好きでいてくれてるかと言うより、他のどんな女の子よりも私を選んでくれたっていう事実だけで、私の心は十分に満たされていた。
「そういえば、以前も聞いたけど、学校に遅刻しない理由、聞いても良い?」
 礼央がふとそう言った。
「あの時は教えてくれなかったから」
 その事かと思いながら私は口を開く。
「私の体調では、欠席、欠課、早退は仕方のない事。でも、遅刻は私の中ではサボりなの。だって、朝起きられなかった言い訳みたいじゃない?」
「……」
 私のその言葉に、礼央は一瞬だまった。
「……どうしたの?」
「ねぇ、じゃあ、今から一緒に遅刻しない?」
「……どこ行くの?」
「折角良い天気なんだし、もうちょっと二人でいたいじゃん?」
 礼央はそう言いながらニッコリ笑った。まったく、ずるい誘い方をする……
「学校あんまり休んじゃいけないんじゃなかったの……?」
 照れ隠しに多少話を遠ざけてみる。
「まぁ良いよ、一日くらい遅刻しても」
「……一回やってその楽しさを覚えたら、結局またやりたいって思うようになるんじゃないの? もっとってなるよ?」
「まぁその時は最悪、また1年生やるよ」
「それは嫌」
 即答した私に礼央は首をかしげる。
「……何で?」
「留年してほしくないし。一緒に卒業式迎えたいじゃない?」
 私のその言葉に礼央は顔を赤くした。礼央は恋愛には慣れてないみたいで、愛情を素直に表現されるのに弱いらしい。
「時間は将来沢山あるんだから、すれ違っていた時間を取り戻す余裕はまだまだいっぱいあるよ」
 私は多分一生礼央しか好きになれない。
「そ、それはプロ、プロポ……」
「プロポ?」
 顔を真っ赤にしたまま礼央は動揺しているようだった。一方の私は礼央が何を言いたいのか分からなかった。
「ほら、早くしないと学校遅れるよ?」
「う、うん……」
 私達はつないだ手を離さないまま学校へと足を進めた。


 願わくば、これからもずっと、君の隣にいられますように……
「あ、起きた」
 目が覚めて一番に目に飛び込んできたのは礼央の顔だった。
「っ!」
 思わず上半身を起こす。
 私の顔を覗き込んでいた礼央とつい顔がぶつかりそうになった。
「な、何で……」
 お昼休みに入って佐和ちゃんと会話をしたのは覚えてる。
 でもその後多分過呼吸になってそのまま気も失って……ベッドの上にいて、礼央が目の前にいる事以外は、私が気を失った時となんら状況は変わりがなくて……
「中学の時の話を聞いたんだってね」
 彼が目の前にいる状況も理解出来ていないのに、彼が真剣な顔でそう聞いてきた。彼の久しぶりに見る真顔に、私の心臓が跳ねる。
 その言葉の後に何を言われるのか、想像も出来なかった。
「えっと、あの……」
 それ以上聞くのが怖くて無理矢理話を変えようとしたのに、話題が咄嗟(とっさ)に浮かばなかった。
「もし俺がさ……」
 聞きたくないのに、話を始めようとする彼の目の前で耳を塞ぐ勇気もなく、私は布団を握る手に力を込めた。
「もし俺が他の女とは遊ばずに菜々の傍にいるって言ったら、菜々は俺の事“好き”って言ってくれる……?」
「…………へ?」
 思ってもいない彼からの言葉に思わず間抜けな声が出る。
「それってもう私以外の女の子、横にして歩かない?」
「おう」
「……他の子抱かない?」
「お、おう」
 既に目頭が熱くなっていたが、まだ足りなかった。最後にこれだけは聞いておかないと……
「私が“好き”って言っても離れない……?」
「……うん。不安にさせてゴメン」
 その言葉を聞いた瞬間、私は礼央に飛びついた。嬉しくて嬉しくてしょうがなかった。
 涙を溢しながら何度も何度も頷(うなず)いた。
「ほら、そんなに泣いたらまた過呼吸になっちゃうだろ?」
 礼央の優しい声が聞こえても、結局泣き止む事が出来なかった。それでも礼央の腕の中はすごく暖かくて、私は今までで一番安心して目を閉じた……


「今日は調子良いの?」
「うん、最近は保健室に行く回数も減ってきてるし」
 俺達の気持ちが通じ合った日から、菜々が体調を崩す日は減っていった。改めて俺が彼女の心をボロボロにしていた事に気付かされる。
 菜々が体調を崩しにくくなったおかげで、登下校を共にする機会も多くなっていた。
「体調良いならさ……」
 昨日の夜から何回も脳内シュミレーションをした言葉を発す。
「体調良いなら明日どっか行かない?」
 俺のその言葉に一瞬キョトンとし、それから一気に顔を赤くする菜々。
「そ、それってデートっていう……」
「そ。俺の可愛い彼女をデートに誘ってんの」
 俺はニンマリ笑ってそう言う。
 自分でも顔が赤くなっているのが分かるのか、菜々は顔を伏せる。こういう彼女を見ると、どうしてもイジワルしたくなってしまう。
「あ、そっか。俺、まだ菜々に“好き”って言われた事ないんだよね~もしかして、菜々が俺に好意を持ってくれてるかも知れないって、俺の勘違いなのかな~」
 菜々は一瞬顔を上げたが、すぐにまた伏せた。
「れ、礼央も私に言ってくれてないもん」
「は? そうだっけ? “好き”。はい、これで良い?」
「そんな適当な感じじゃなくてもっとこう……」
 自分ですごい事を言っているのに気付いたのか、菜々は途中でその言葉を切った。
「菜々が言ってくれたら俺もまたちゃんと言ってあげるよ」
「……」
 菜々は相変わらず顔を伏せたまま。でも、耳まで真っ赤になっているから顔なんてみなくても表情の想像はつく。
「す、す……す……」
「やっぱ待って」
 俺は思わず彼女の口を手で塞いだ。瞬間彼女が顔を上げる。
「え、何で! だって礼央が……」
「うん、そうだけど……やっぱ良い……」
 今度は俺が菜々から顔を背けた。
「……何で?」
「良いから! 気にしないで!」
 頑張ってその言葉を言おうとしてる菜々が思ってた以上に可愛くて、俺の方が耐えられなくなったとか、菜々に初めて言ってもらうその言葉はもっと二人だけの時に言ってもらわないと誰かに聞かれたらもったいないだとか、そんな事彼女には恥ずかしくて言えない……
「……ん、分かった。機会があったら言う事にする」
 まさか菜々からそんな言葉が出てくるとは思っておらず、思わず彼女を凝視してしまった。
「……何?」
「いや、熱でもあるんでない?」
「ないよ、失礼な」」
 菜々はそう言いながら手をつないできた。……熱があるのは俺の方かも知れない。
 俺は真っ赤な顔を見られないように、空を見上げる振りをした……
「お昼、保健室から出た後に何かあったんでしょ?」
 礼央が保健室から出ていってから数秒。私が体を起こしたわけでも目を開けたわけでもないのに、佐和ちゃんはそう言った。
「よく分かりましたね、タヌキ寝入りだって」
「そりゃ、途中から呼吸が規則正しくなくなっていたもの」
 先生の席から私のベッドまでは五メートル程もあるのに、私の呼吸が聞こえたと……?
 私の鼻息が荒いのか先生の耳が良いのか……勝手に後者にしておこう。
 先生はクスリと笑って足を組みながら、私に言う。
「城東が運んでくれたのよ?」
 思わず眉間にシワを寄せる。そのせいで、一瞬先生を睨(にら)んでしまった。
「分かってます。体が思い通りにはいかなくても、意識が無かったわけではないので」
 先生は無言のままニヤニヤを続けている。
「何ですか?」
「いや、お姫様だっこされた気分はどうかな~と思って」
「何でそんな事まで知ってるんですか……」
 礼央が私をここへ運んできた時には佐和ちゃんはいなかったはず。
「私が知らない事なんて少ないのよ?」
 ……なるほど、説得力のある言葉だ。
「じゃあ、何で私が倒れる程悩んでいたのかも分かってるんでしょ?」
「同級生の噂話聞いたんでしょ?」
「……本当に何者ですか、先生」
 先生の言う通りだった。昼食を終え教室に戻る時にすれ違った同級生。
“二組の礼央くん、今週から学校来てるらしいよ!”
“礼央って、あの城東礼央?”
“そうそう! 中学校の時、女を落として回ってた!”
“落とした女は抱いてポイするっていう、あの?”
“そうそう! 入院も、女の逆恨みで大怪我したって噂だよ!”
 聞こうと思って聞いたわけではなかった。でも自(おの)ずと耳に入ってきた。
「もっとも、先生はこの噂を既に知っていたようですけど?」
 自虐的に私は笑う。
「私が好きになったら、礼央は私から離れていっちゃうんです。だから、私は礼央を好きになったらダメなんです」
「……もうその言葉が“彼の事好き”って言ってるようなものよ?」
 先生が軽くはにかみながらそう言う。
「他の誰にバレようが、礼央にさえバレなきゃ良いんです……」
「でもそれ、私に言っちゃっても良いの?」
「だって、“自分で考える事に意味がある”んでしょ?」
 佐和ちゃんはフッと笑った。
「そうね」
 彼の事を好きになってはいけない。そんな事出来るはずがないのに、私はそんな無謀な事を本気でやろうと思っていた。
 だから、彼から離れようとすればするほど、それに比例するように保健室で寝込む時間が増えていったんだ……


 菜々が教室で倒れて以来、彼女は俺をあからさまに避けるようになっていた。話しかけても無視が続き、目も合わせてくれなくなった。
 折角(せっかく)人の隣にいる喜びを知ったのに、彼女は俺の元から去っていった。
 そのために開(あ)いた穴を埋めるように、俺は中学の時のように女遊びを始めるようになっていた。
 毎晩違う女を抱く。うちの高校の生徒だけでなく、年上や人妻にも手を出した。
 そして時々その女の彼氏とやらがやって来て、“制裁”とか言って俺を殴っては満足したように帰っていく。
 中学の時はそれで俺の存在が自覚出来ていたのに、今はそれを何度繰り返しても心が満たされない。
(菜々はとんでもねぇ物(もん)俺に教えたもんだ……)
 誰か一人がいればそれだけで十分だなんて、不便でしょうがない。しかもその一人は俺に見向きもしないのに。
 彼女が離れていった事で、俺も俺で、拒まれるのが怖くて菜々に近付く事が出来ないでいた。
 そうやって俺達は離れた。
 元々友達のいない菜々だ。俺が話しかけなければ自然に離れていく。
 それに追い打ちをかけるように、席替えにより、体自体も離れてしまった。
 菜々の保健室に行く量が増えたのには気付いていた。でも先生の言う通り、あれ以来教室で倒れる事はなかった。
 クラスに打ち解けて友達が増えていく俺とは対称的に、彼女は独りに戻っていった。

「ついに、彼にとって私は必要のない存在になってしまったみたいです」
 お昼休み。あまり動いていないために食欲の湧かない私は、お弁当の包みを開けただけで蓋は開けず、それを膝の上に乗せたままそう呟(つぶや)いた。
 保健室には佐和ちゃんしかいない。私はその佐和ちゃんのいる机の横に椅子を持っていき、そこに座っている。
 この高校の学生は割と真面目で、授業をサボりにベッドを使いに来る人はいないので、割と頻繁に彼の相談を先生にする事が出来ていた。
「礼央、友達も沢山出来たみたいです」
「……」
「彼女もいっぱいいるって噂も聞きました」
「……」
「昨日の夕方、とある女の子と歩いてるのを見ました。そして今日の朝、また別の……女の子と登校しているのも……見ました」
「……」
「どうやら噂は本当みたいです」
 わざわざ噂が事実かどうかを確認したわけじゃない。でも、礼央の女の子達に向ける表情が、私に向けるものと全く違うのは正直ショックだった。
 私には笑顔を向けてくれないのに、私以外の女の子達には平然と私が見たいその表情を見せる。
 先生は私の方を見て、黙って話を聞いてくれている。私は、そんな先生を見る事が出来ずに、手元のお弁当を見つめていた。
「まぁもともと彼は私の事何とも思ってなかったようなので、今更……何とも思いませんけど……」
「……」
「だから別に彼が誰と友達になろう……と……私と全くタイプの違う女の……女の人の隣に……」
 堪える事の出来ない涙がどんどん溢れてくる。それに気付いた先生は、慌てて立ち上がった。
「礼央に……私は要(い)らない……」
 段々と呼吸が苦しく、目の前が真っ白になっていく。
「ほら、落ち着いて。また過呼吸になり始めてるよ? 授業出れなくなっちゃうよ?」
「礼央の事好きになってもならなくても……礼央は私から離れて…………せんせ……どうしたら……礼央は私の……」
 ガシャン
 体に力を入れる事すら出来なくなって、私は椅子から落ちた。その衝撃で椅子が倒れ、お弁当も落ちた。
 私の体だけは先生がしっかりと支えてくれた。
「だ、大丈夫だから。ひとまず呼吸を整える事に集中して」
 今まで見せた事の無い私の涙に、流石(さすが)の先生も動揺を隠せないようだった。
「怖いよ……礼央が離れていくの…………怖い……ヤダ」
 先生の声も徐々に遠くなっていく。そしてそのまま、私は意識を手放した。


「一年二組、城東礼央。一年二組、城東礼央。今すぐ保健室へ来なさい」
 昼休みを半分程過ぎた時、佐和子先生の声で校内放送があった。
 声のトーンと“来なさい”という命令口調である事から、先生の機嫌が良くない事は容易に想像出来た。
「俺ちょっと行ってくるわ」
「おう! しっかり怒られろ!」
 一緒にご飯を食べていたクラスの男子やら女子に見送られながら、俺は教室を出た。
 いつもと変わらない足取りで保健室に向かう……ように心がける。何を言われるかなんて分かっていた。だから自然と心拍数も上がり足も重たくなるわけで……
「佐和子先生?」
 俺は何食わぬ顔で保健室のドアを開ける。先生は、菜々がいつも使っているベッドの横にある、俺が以前運んだ椅子に足を組んで座っていた。
「……城東、あんた一体何をしてんの?」
 先生の声がいつもより低い……
「先生に呼ばれたからここに来ました」
 先生は深くため息をつく。“私が言いたいのはそういう事じゃないでしょ?”って、意味のため息だって事は俺にだって分かる。
「今日彼女が初めて私に涙を見せたわ。悩んでの生理的な涙ではなくて、明らかに泣いてた」
「……」
「しかも、初めて心からの弱音を吐いて……」
 つい先生から目をそらす。
「柳瀬の事を支える存在としてあなたを選んだのに、あなたが柳瀬の精神をボロボロにしちゃダメじゃない……」
「先生が勝手に俺を選んだだけでしょ? 俺に責任押し付けないでよ……先生の人選ミスだよ」
「城東!」
 先生が怒鳴るのを初めて聞いた。もちろん驚いたが、俺はそれを表に出さなかった。
「彼女は俺が嫌いなんですよ? その証拠に俺が彼女に会ってから彼女の保健室に通う頻度が増えたみたいじゃないですか」
 先生は俺に近付いてきた。
「……だから俺は柳瀬さん(・・・・)の事を考えて離れ……」
 パンッ
 俺の左頬が高い音を立てた。さすがにこれには驚きの表情を隠せなかった。思わず先生の顔を見る。
「イライラするわ。あなたを見てると。私最初に、柳瀬は人付き合いの経験が極端に少ないから、分かりやすい態度とりなさいって言ったわよね? それなのに城東は……確かに私から見たら分かりやすい行動よ。好きな子が自分を好きになってくれないからって、モテないわけじゃないって、自分のプライドを守るために、心を満たすために他の女で遊んで……」
 俺はまたしても先生から目をそらした。
「何でこんな男を柳瀬は好きになったのかねぇ」
 …………は?
「菜々が俺の事……好き?」
 俺に続いて、先生まで“?”を頭に浮かべる。
「……まさか本当に気付いてなかったの?」
「え、いや、だって菜々は……」
「好きよ。あんたの事。あんなに分かりやすかったのに、本当に分からなかったの?」
 俺は必死に頭を回転させる。
(だって彼女はあんなに俺を避けて……冷たい態度で……)
「ん……」
 丁度その時、菜々が目を開け上半身を起こした。カーテンを開けたままの菜々のベッドは、、俺からもよく見えた。
「あれ? 先生誰か来て……」
 その言葉の最中に菜々は俺に気付いたらしく、一気に目を見開いた。
「れ……お」
「なぁ、俺の事好きってホント?」
 俺は直球で聞いた。
 その言葉に体をビクッと震わせた後、何かに気付いたようにベッドから飛び出して、菜々は、フラフラな足取りで俺の元へと駆け寄ってきた。
「や、ヤダ! は、離れないで! 好きにならないから、だから離れていかないで! 礼央! ごめんなさい……好きだけど、好きになったらダメだから、でも好きで……だから離れていかないで!」
 今まで見た事無いくらいに、涙をボロボロ溢(こぼ)しながら取り乱している。
 しかもそのまま彼女は俺の足元に崩れ落ちた。
「お、おい!」
「はぁ、はぁ……」
 もはや喋る事も出来ないくらいに呼吸に必死な菜々。そんな菜々を見て、俺も動揺を隠せなかった。
「城東! この前見せたみたいにあんたがやりなさい。彼女の心の苦しみを、城東が一番近くで感じなきゃ!」
 先生が差し出してきたコンビニ袋を受け取り、俺は深呼吸をした。そして、彼女の体勢を整え、先生が以前したようにそれを彼女の口に当てた。
 目も開けずにただ早めの呼吸を繰り返す彼女を見ているだけで、自然に目頭が熱くなった。
「ゴメン、菜々……俺もう離れないから……ちゃんと、ずっと傍で支えるから……」
 俺のその言葉の後で、苦しそうな彼女の表情に一瞬だけ笑みが見えた気がした。俺はそれが嬉しくて、涙をこぼした。
「先生! 菜々が!」
 手が塞がっている俺は、足で保健室のドアを開けた。でもそこには目的の人物の姿は見えなかった。
「佐和子先生……?」
 応答はない。どうやら姿が見えない場所にいるだけでなく本当にいないらしい。
 俺はひとまず菜々をベッドに下ろした。
「菜々? 菜々、大丈夫?」
 声をかけても返答は無い。ただ、ものすごい速さで呼吸を繰り返しているだけ。
(このまま寝かせて良いのか……でもかなり辛そう……)
「あれ? 何でドア開いてんの?」
 その時、先生が保健室に入ってきた。
「あ、城東。どうしたの?」
「先生! 菜々が!」
 それだけで、俺の言いたい事は伝わったようだった。先生が慌てて、俺が菜々を寝かせたベッドに近寄ってくる。そのベッドは、毎回菜々が使っている場所。
「過呼吸になってるみたいね」
「……過呼吸?」
「そこの袋持って来て」
 佐和子先生は自身の机を指した。そこには中にパンの入ったコンビニ袋が乗っていた。俺はパンを取り出し、それをつかんで先生の元へ持って行った。
「やり方覚えておいてね。彼女、過呼吸になりやすいから」
 先生はコンビニ袋の口を彼女の口に当てた。菜々の速い呼吸に合わせて袋が膨らんだりしぼんだりしている。
 先生は「ゆっくりね」なんて良いながら彼女の口に袋を当て続けた。
 時間をかけて、菜々の呼吸は次第に整っていった。
「寝ときな。熱も上がってるから、今日は授業止めときなさいね」
 彼女は赤い顔でゆっくり頷いた。


「今まで無かったのよ?」
 俺が教室に戻らずに、菜々のベッドの横に椅子を持って行って座ると、先生がそう言った。
「何がですか?」
 出て行けと言われなかった事と、彼女のベッドの横にいる事を拒否されなかった事に少し安堵する。
「柳瀬、さっき教室のドア付近で倒れたらしいじゃない? 今まではそんな事無かったのよ? 教室や廊下で倒れると私以外の人に迷惑がかかるからって、必ず自分の足で保健室まで来てた」
 先生が言いたい意味が分からない。それってただ、いつもより体調が悪かっただけでは……?
「小さい頃から付き合ってる、決して良いとは言えないけれど自分の体よ? 彼女はいつも自分の体に異常なくらいに気を遣(つか)っている。そんな彼女だから、過呼吸がどのタイミングで来るかなんて分かっているわ」
「?」
「さっき私が彼女の過呼吸を抑える時に見たけど、彼女の目には少し涙が浮かんでいた。あれは多分、悩み事があった時に出る生理的なもの。彼女はそんなに何を悩んでいたのかしらね」
 彼女が悩んでいた……? 何を?
「先生のその言い方からするに、先生は分かってるんですよね? 彼女があれ程までになるくらい悩んでいた理由……」
 俺には分からなくても、先生はきっと分かっている。だからこそ俺にそれを伝えようとしている。
 でも先生の性格なら、その答えを簡単に俺に教えたりはしないだろう。“自分で考える事に意味がある”というはず。
「それは城東が考えてこそ意味のあるものだと思うわよ?」
 ほら。思った通り。
 とはいえ、彼女に何かあっただろう昼休みに、俺は彼女の近くににはいなかった。これでは、考えようにも考えられない。彼女と共に昼食をとらなかった事を昼食以来再び後悔する。
「昼休みの彼女に何があったのか、せめてそれだけでも教えてもらえませんかね?」
 俺はダメ元でそう頼む。
「無理ね。私にも何があったのか本当の所は知らないもの」
「……は?」
 思わず間の抜けた声が出る。
 昼休み、菜々は先生とご飯を食べていたはず。その時に何かあったのでは……?
「昼食をとっている時の彼女は普通だったわよ? 考え事程度の事はしてたみたいだけど、悩むような様子は無かった」
「……どういう事?」
「保健室から教室に戻る間に何かあったんじゃないの? お昼前だったら、私に相談すると思うし」
 先生は淹れたてのコーヒーをカップに注いだ。“要(い)る?”というような目を向けて来たため、俺は首を横に振る。
「……相談か。信頼されてるんですね、菜々に」
「妬ける?」
 先生がニヤニヤしながら俺にそう尋ねる。俺も少しの笑みを含めて言葉を発した。
「先生は女なんで大丈夫です」
「あら、分からないわよ? 同性愛って言葉が世の中にあるの知ってる?」
 本気とも冗談とも取れるような曖昧(あいまい)な言い方をする先生。
「……先生が言うと冗談に聞こえないんですけど」
「安心しなさい、ちゃんと彼氏いるから」
「はい、嘘!」
「……何で知ってるのよ」
「中岡先生が数学の授業中に言ってましたよ」
「あいつ、後でシメる!」
 ……今のセリフは多分本気だろう。
 それにしても、菜々が保健室から教室に戻る間に起こる出来事……
 そんなの考えれば考える程絞りきれない程の事が有り得る。
 それにそもそも、菜々はどんな事があると悩むのか、傷付くのか。喜ぶのかすらも、俺は分かっていない。
「俺って、菜々の事何も知らないんです……」
 独り言に近いそれに、一瞬俺の事を見たが、先生は何も言わなかった。
「菜々の方は俺に興味すら無いようだし……」
「……」
「俺に対して冷たいんです、彼女。先生への態度と違って」
「……」
「菜々は、本当に俺の事迷惑に思ってるのかも知れません」
「……」
「俺が菜々に初めて会った日だって、俺が話しかけなければ菜々は倒れなかったかも知れない」
 一度考え出すと、その不安は怒涛(どとう)のように襲ってくる。菜々が、俺が傍にいる事で悩むようなら、俺は彼女から離れる事も考慮しないといけないのかも知れない。
「迷惑……ではないとは思うわよ?」
 先生がポツリとそう言った。
「え?」
「確かに悩んでいる原因はあなただと思うけど、それは、彼女にとって良い傾向じゃないかと思うけどね」
「?」
 先生はまたしてもニヤニヤしている。
 悩んで倒れる事が、菜々にとって良い事?
 彼女の体に負担をかける事が?
「さぁ、そろそろ教室戻ったら? 女の子の寝ているベッドの横にいつまでもいると、変な気起こしかねないでしょ!」
 佐和子先生は軽く笑いながらそう言う。
「先生は俺をただの変態ヤローだと思ってるんですか……?」
「男はみんなオオカミよ? それにあなたの中学時代やってた事を私が知らないとでも思ってるの?」
「あれは別に性欲に掻き立てられてたわけじゃ……」
 でも完全に否定も出来ない俺は、おとなしく教室の戻る事にした。
「今日彼氏と一緒に登校してきたらしいじゃない?」
「……誰かさんがそう仕向けたものでねぇ」
「あら、結局あなたも“礼央”と呼んでいるそうじゃない? 関係は私が協力した以上に
進展していると思うけど?」
「本当に佐和子先生は何でも知ってるんですね……」
「柳瀬が私の事を裏で“佐和ちゃん”って呼んでる事も知ってるわよ?」
「……もう、じゃあ、先生の前でも“佐和ちゃん”って呼ぶ事にする」
「まぁ、そっちの方が親しい気がして良いわね」
「私からすると、保健室の先生と仲良いのはあんまり良くない事なんですけど……」
「……確かに本音はそうかも知れないけど、それは流石(さすが)の私でも傷付くわよ?」
 今はお昼休み。体調も回復したため、私は普段通りに食事をとっていた。
 私はいつも保健室でご飯を食べる。消毒液の臭いが多少するけど仕方がない。
 うちの学校は屋上は解放されていないから、友達のいない私が周りの目を気にする必要なく食事をとれる場所を求めたら、自然にここに落ち着いていたのだ。
 礼央もてっきり一緒に食べるのかと思っていたが、さっき教室にわざわざ迎えに行った時、友達と食べると言っていた……
(何よ、私がいれば良いみたいな事言ってたくせに!)
 そう考えた事に私はハッとする。
(べ、別に他に友達や彼女の十人や二十人……)
「彼女が十人もいるのはどうかと思うけど」
「っ!」
 声に出していないはずなのに、先生は何食わぬ顔でそう言った。
 もう先生に隠し事なんて出来ないな……そう思いながらミニトマトを口に頬張る。
「礼央は、私の事どう思ってるんでしょうか……」
「どういう意味?」
 私が箸を止めて深刻な顔でそう聞いたからか、先生も真剣に答えようとしてくれた。
「……いえ別に、やっぱり何でもないです」
 これ以上彼の事を考えている自分を認めたくない。
 折角先生が聞いてくれようとしていたが、私の口から出るはずだった言葉は尻込みしてしまった。
 私が変に言葉を切ってしまったせいか、しばらく沈黙が流れた。
 沈黙を破ったのは先生の方だった。
「柳瀬が他人の話を自分からするなんて珍しいわね」
 先生のその優しい口調に、私の口から素直に言葉が出てくる。
「どう接したら良いのか分からないんです……」
「どう……って?」
「私は本当に友達と言える人も、ましてや彼氏もいた事ないから、礼央にどう接して良いのか分からないんです……そしたらついつい冷たい態度になってしまって……まぁ意図してその態度をとる事もあるんですけど」
「何だかんだで城東くんが気になる存在になってるじゃない」
「……そりや、あれだけ近くにいれば意識するなって方が難しい話ですよ」
「うふっ、そうかも知れないわね……」
 先生は自分で私達をくっつけておいた分、私達が仲良くなっていくのを、とことん、冷やかしも含め見守っていたいらしい。
「一つだけ、教えといてあげるわ。相手の心の中なんて完全に理解出来る人なんていないわ。その本人でさえ分からない時もあるくらいだもの。だから、どうせなら自分を中心に考えて彼に接するのが一番楽だと思うわよ?」
「礼央の気持ちは考えなくて良いの? それじゃ、自己中ってやつじゃ……」
「男なんて振り回してなんぼの生き物よ!」
 ……先生に彼氏が出来てもすぐに別れる理由が今分かりました。
 危うく言いそうになったその言葉を私はギリギリで飲み込んだ。
「ひとまず教室戻ります……」
 私はそう言ってお弁当に蓋を被(かぶ)せた。
「私の話が少しでも参考になれば嬉しいわ」
 先生のその言葉に、“全く参考になりそうにありません”とは、とても言えそうになかった……


「俺は一体何をしてるんだか……」
 屋上へと続く閉ざされた扉の前の、少しスペースのある場所で、一人、コンビニのパンを食べている俺。
 菜々に偉そうに“友達と食べる”なんて言っておいて、結局俺は一人。
「何の意地を張ってるんだよ、俺は……」
 本当は友達なんていないくせに。
「まるで、彼女に妬いて欲しくて女を周りに置く男みたいだ……」
 実際そうなのかも知れない。
 彼女は俺がいなくても平気なのかと思う事がある。というか常に思っている。だからそれを確かめるために、ちょっとでも離れてみようと思ったのかも知れない。
 でも結局は今、俺の方が彼女を欲して仕方がない。自分から言った分、今更彼女のいるだろう保健室には行くに行けない。
「実は寂しがりやなんだよ、俺は」
 ポツリと呟(つぶや)く。けれどその声は誰に届くはずもなく空中に溶けていった。
 どんなに女を作って遊ぼうと、今まで本気になれる女(やつ)はいなかったし、抱いている時に寂しさを紛(まぎ)らわす程度にしかならなかった。俺が遊んだ女の中にも、本当に俺を愛してくれる奴はいなかった。
 誰かに必要とされたい。愛情を注(そそ)がれたい。親に捨てられた俺は、その気持ちが人一番強いんだと思う。
(でも彼女は、本当に俺なんかいなくたって大丈夫なんだろうな……)
 考えたってどうしようもない事なのに、考えずにはいられなかった。
 今までの女と違うのは、俺自身が彼女を必要としているか否か。
 初めてだった。道具ではなく一人の人間として女を見たのは。だから、自分が求めているのに相手に求められない事がどんなに苦しい事なのかも、初めて知った。
 でも佐和子先生は俺に菜々を任せてくれた。菜々にとって俺が必要な人間であるように思わせてくれた。
 だから、俺は菜々に愛してもらう事を諦めはしなかった。


 ガタン
 お昼休みが終わってすぐの四限目。菜々が突然席を立った。驚いて彼女を見た俺とは対照的に、先生はいたって冷静だった。
「柳瀬か、行ってきなさい」
 菜々は無言で席を離れた。
(なるほど、保健室か……)
 今日の午前中は変わった様子が無かったから忘れていた。彼女は保健室の常連……
 教室を出ていこうとする菜々に目を向けもしないクラスメイトと、いかにも慣れている先生の様子が、このような事は日常茶飯事だという事を物語っていた。
 だから気付かなかったのだろう。俺以外の誰一人。
 彼女の顔色が、尋常(じんじょう)じゃない程に悪く、体もかなりフラフラしている事に……
 気になった俺はそのまま菜々を目で追った。彼女は教室の扉を開け、そしてそのまま……
(倒れた!)
 俺は慌てて菜々に駆け寄った。クラスメイトも、菜々が倒れた事に驚きの表情を隠せないようだった。それだけ菜々がサボりだと思っていた奴等(やつら)が多かったという事だろう。
「菜々!」
 息遣いを荒くして、立つどころか目を開ける気力さえないような菜々。額には薄(う)っすらと汗が浮かんでいて、顔も少し赤い気がした。一度彼女が倒れた姿を見た事があるとはいえ、落ち着いてなんかいられなかった。
「だ、大丈夫か柳瀬?」
 先生のそんなセリフを聞き流し、先生の許可を取る事なんかすっ飛ばして、俺は彼女を抱え、保健室へと走った。