魚の煮付けはもともとあまり好きな方ではなかった。



長期の出張や海外勤務から一時帰国で父親が帰ってきたりすると、母親はよく金目鯛の煮付けを用意した。父親はそれをいかにも美味そうに食べたが、自分にとってはけしてテンションの上がるメニューではなかった。煮魚の良さはよくわからなかった。



帰国を意識し始めてから、帰ったらまず最初に何を食べたいかを考えた。



あれこれ考えたけど、一番しっくりきたのは「金目鯛の煮付け」だった。俺も老けたなあ、と思う。「魚に添える長ねぎと豆腐とごぼうをいつもより多くして」とバンコクから電話でリクエストすると、「細かいね」と母親は言った。





当たり前なことを当たり前に突きつけられ、また、当たり前に問われた、そんな一年だった。





太陽は偉大で、時に厳格で、


風は心地良く、時に薄情で、


水は寛容で、時に冷淡で、


日なたは暖かく、時に暑く、


日かげは涼しく、時に寒い。




男のコは女のコに馬鹿みたいに夢中で、女のコは男のコよりも愛を知ったかで、




ママはよくしゃべり、パパは無口だ。






思ったよりも世界はずっとスマイリーで、数えきれない乾杯は地表を埋め尽くすかのようで、地球は人々の団欒で暖をとる。とりわけ家族の食卓は温かく、優しい。







一年ぶりの「ただいま」や「おかえり」はどこか照れくさく、







台所からは煮付けの匂いがした。