「お前の助けにはなれないのか。」
先生のこの言葉が、ずっと頭の中で繰り返される。
分かっている。
先生の、あの言葉は、本当に俺を心配してくれたから出たってことを。
あのとき、俺を見ていた先生の眼は真剣そのものだった。
それなのに、僕は先生の言葉を受け入れなかった。
「友達」だと思っていた人が、「友達」じゃなかった。
「友達」は、僕が同性愛者だと知った瞬間、僕を軽蔑した。
だから、先生も僕を軽蔑するのではないかと、思った。
そう考えると、表現は陳腐だけれども、
僕はまた嫌われたくない人に、嫌われるのではないかという、恐れがあった。
一目惚れから、僕の恋は始まった。
先生なんて好きにならなきゃよかった。
先生を見ていると、先生の声を聞いていると、先生と廊下ですれ違うと、僕は、泣きたくなった。
「悲しい」だとか、「切ない」だとか、そういう単純な気持ちではない。
先生のことが誰よりも好きだから。
好きだから、泣きたくなった。
女の子に、なりたいと思う。
男に生まれて、今まで後悔などしたことはなかったけれど、
先生を好きになった今、僕は、女の子になりたい。
女の子になれば、先生に告白できる。
女の子になれば、もしかしたら先生も僕を好きになってくれる。
「簡単に助けるって言わないで下さい。」
先生に言ってしまった、言葉。
言わなきゃよかった、と今は思う。
僕は、先生に謝るために、先生のいる体育科職員室へと向かった。