キズナ 25 優志目線




4時間目の授業を受けるのがめんどくさくて、俺はサボりの穴場スポットの旧校舎で昼寝をしてたら、聞き慣れた声が聴こえた。


声のする方をみてみたら、案の定 翼が居た。

どうやら親に電話している様だ。


翼はガキの頃からの付き合いで、いつの間にか一緒にいるのが当たり前になっていた。

いわば、家族みたいなモンだ。


もちろん翼の弟の龍ともよく一緒にいたが、翼とは同じ歳で、クラスがよく一緒になってるから龍よりも一緒にいる時間が多かった。


俺の父さんと翼の父さんは学生時代からの親友で、俺たちが物心着く前から家に家族で遊びに来てたらしい。

そんな昔の事なんて憶えてねェが、小学1年生の春休みに、翼達は隣に引っ越してきた。


俺から見て、翼は 母親の有希さんと距離を置いているような感じがした。

虐待を受けたり、仲が悪いわけではないが、どこか一歩引いたような感じだった。


俺はそんな翼に、最初は違和感を憶えたが、しばらくして その答えはスグに分かった。

有希さんが、翼への接し方と龍への接し方が明らかに違うからだ。

有希さんは龍に対してどこか依存している様にもみえた。


そりゃ上の子よりも下の子の方を構うのは仕方がない事だが、有希さんは全てにおいて龍を優先していた。


引っ越しのタイミングも龍が学校に馴染みやすいように小学校の入学に合わせたり、龍の帰宅時間に合わせて夕飯作ったり、

誕生日も翼の時は祝わずに、数ヶ月先の龍誕生日に一緒に祝ったり、遊びに行く時も全て龍の要望が通ったりなど、全てが龍のタイミングで動いていた。


授業参観の日も、龍のだけ出席していたらしく、親子でやる時授業では翼はいつも1人か先生と組んでいた。


大人からしてみれば"お姉ちゃんなんだから我慢しなさい"って

一言で片付けられるかもしれないが、子ども心としては納得がいかないだろうし、その違いが子どもの俺でも露骨にも分かってしまう程だった。

まるで翼と龍のお父さんに会えない寂しさを龍で埋めてる様にも見えた。


本来こんな親だったら兄弟の仲も悪くなるはずだが、翼と龍はむしろ仲が良い方だ。

龍は、翼と違って感情が殆ど顔に出ない上に、そんなに喋る方じゃない。

だけど、龍が翼を大事に思ってるのは家族じゃない俺でも充分わかる程だった。

翼もそれを分かってるから、龍にあたったりできないんだろう。


そういう環境のせいか、翼は人に上手く頼れず、なんでも自分でなんとかしようとするクセがついている。

そのせいで危なっかしくて目が離せない。


転校して馴染めなかった澪を虐めから助けようとして水浸しになったり、ひったくりを追いかけて跳び蹴りしたり、龍を守ろうとしてケガしたり。

とにかくほっとくと何をしでかすかわからねぇし、あいつは優しすぎる。

だからムチャするアイツを俺が守らなきゃって思っちまう。


誰かがアイツを支えねえと・・・

守らねえと・・・

今にも壊れそうだから・・・。

強がっているけど、本当は泣き虫で弱い女の子。


優志「あーあ、携帯壊れちまったな・・・」


翼「・・・優・・・志??」


優志「有希さん、相変わらずだな・・・」


俺は見ていられなくて翼をつい抱きしめちまった。

翼は滅多に人前では泣かないが、抱きしめられて気が緩んだのか、俺の腕の中で泣き続けた。


しばらくして翼は泣き止んだが、恥ずかしいのか下を向いたまま俺から離れた。

確かに今思い返すとかなり恥ずかしい事をした。

多分俺も翼も顔が赤い。


俺は、翼と少し会話した後、恥ずかしくてその場を後にした。


優志「アホだろ・・・俺・・・」





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