【映画】砂の器~「宿命」に集約される情感的作品 | 鶏のブログ

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観た映画、読んだ本などについてのメモです。
”ネタバレ”を含みがちなので、その点ご容赦下さいませ。

【監督】野村芳太郎

【脚本】橋本忍、山田洋次

【原作】松本清張「砂の器」

【制作国】日本

【制作年】1974年

【上映時間】143分

【配給】松竹

【出演】丹波哲郎(今西栄太郎)

    森田健作(吉村弘)

    加藤剛(和賀英良)

    加藤嘉(本浦千代吉)

    島田陽子(高木理恵子)

【公式サイト】

丸の内TOEIで開催中の『昭和100年映画祭 あの感動をもう一度』企画の3本目。本作は配信で観たことがあるものの、劇場では初めての鑑賞でした。
一応刑事物、推理物に分類されるものの、主題は犯人である和賀英良(加藤剛)の人生そのもの。そして彼が作曲した「宿命」という曲が、自らのピアノとオーケストラで演奏される調べに乗って流れる回想シーンこそが見所中の見所でした。「宿命」は、本作の中心に常に存在しており、やはり劇場で味わうにひと味もふた味も違いました。
一方、推理物として観ると、前半部の今西刑事(丹波哲郎)らによる日本中を歩き回る捜査は中々結実せず、後半になって犯人が特定されて逮捕状が発行されて行く過程はかなり省略されている感がありました。捜査会議で和賀英良の人生を振り返り涙する今西刑事の姿は、こちらにも涙を誘うものであり、またこの演出により、映画としてのテンポは担保されているものの、推理物としてはちょっと不完全燃焼に思えなくもありませんでした。
 
それにしても俳優陣は超豪華であり、また野村芳太郎監督、橋本忍と山田洋治の脚本、さらには原作が松本清張と、隅から隅までオールスターで作られており、ややもすれば船頭多くしてとなるところを、きちんと統合された作品に仕上げた野村監督の手腕は流石と感じざるを得ませんでした。
 
あとちょっと気になったのが、終盤の捜査会議で、刑事部長らしい人が「順風満帆」を「じゅんぷうまんぽ」と読んだこと。ん?これって誤読じゃないのかしらと思ってググったところ、この「じゅんぷうまんぽ」問題は結構有名なようで、いろいろなコメントが確認できました。結論とすると、映画制作当時は「じゅんぷうまんぽ」という読みも容認されていたようで、「じゅんぷうまんぱん」が正しいとされるようになったのは最近のことであるらしいとのことでした。これは意外なお話でした。
 
そんな訳で、本作の評価は★4.6とします。

 

総合評価:★★★★★

詳細評価:

物語:★★★★
配役:★★★★★
演出:★★★★
映像:★★★★★
音楽:★★★★★