この本は、日本のチェーンストアを牽引してきた「ペガサスクラブ」の創始者である渥美俊一氏によるものである。同クラブはイオンやニトリ、西松屋など今日の小売業の先頭に立つ多くの会社を排出している。

チェーンストアと言うと、価格は安いが品質は中〜低で、面白みのないものだととらえられがちだ。しかし、それは初期の葛藤によるもので、最終的な目標は果てしなく大きい。

渥美氏によると、チェーンストアの目的は「生活者のインフラ」になることで、日本人の生活を豊かにするものである。人々は毎日のように来店し、価格を気にせずに買い物ができるようになる。

インフラになるためには、価格を下げなければならない。そのため、店数の拡大や標準化、ローコストオペレーションは必須なのである。また、どこへ行っても同じサービスを受けられるために、画一化は正義なのである。

この本によると、数十店舗クラスでは国民生活を変えるに至らず、全く十分とは言えない。800店舗でようやく一人前、そこが出発点だ。

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この考えに沿って拡大を続けたのがダイエーだ。一時は隆盛を誇ったが、環境の変化によりなくなってしまった。「何でもたくさん安く」では通用しなくなったのだ

代わって勢いをつけたのが、ニトリやユニクロなどの専門店だ。かなり浸透してきたように見えるが、その勢いはまだ衰えるところを知らない。株式市場でも常に注目の的だ。

これらの企業は、単なる流通業から製造小売業(SPA)へと変貌を遂げている。これこそが、チェーンストアが目指す形だ。これまでのメーカーによる押し付けではなく、消費者に最も近い小売店からニーズをくみ取ることができる。

ニーズに合った商品を安く提供することで、真に生活者のためのインフラになることができる。また、同時に販売側の利益率を上げることにも貢献するのである。

世の中は二極化が進んでいる。ディズニーランドの値上げに代表されるように、「特別な体験」の価値は相対的に高まっている。

一方で、普段の生活はユニクロの服にニトリの家具、百均のキッチン用品で十分だ。それをいつでもどこでも手に取れるようになれば、真にインフラとしての地位を確立したことになるのだろう。

このような視点を持てば、自分がこれまで懐疑的だったチェーンストアの株式価値も見出せるかもしれない。株式市場はまさに「ロールス・ロイスに乗った人が、地下鉄に乗る人の意見をありがたく聞く」場所なのだ。