ついに飛び出してしまった。会社を辞めたのだ。しかもやや見切り発車気味で。

1月20日のこと。いつものように会社へ行き、特にすることもなく席に座っていた。すると、部長と課長に呼び出された。

「これから始まるビューティ・コンテストに参加してくれ。」

青天の霹靂だった。頭の中を色々な思いが駆け巡った。当局からの連絡さえあれば今にも独立しようとしている時に、新たな案件なんてとても身が入らない。そんな奴が入っても迷惑極まりないだろう。

さらに、ビューティ・コンテストはそのまま帰りが深夜になることを意味している。子供もこれからという時に、そんな生活はまっぴらごめんだ。自分の求めるものとは程遠い。

一瞬承諾した形を見せたが、すぐさま課長だけ呼び出し告げた。

「実は辞めるつもりなんです。」

そこからの動きは早かった。翌日までに残務処理を済まし、そのまま最終出社日となった。(情報管理の関係上、退職が決まったら即最終出社日なのだ。)辞める理由が理由だけに、慰留もなかった。

親しい人には辞める理由も話した。どこまで本心かはわからないが、応援してくれると言ってくれた。羨ましいと言っていた人は本心かもしれない。何はともあれ、苦楽を共にした同僚は温かかった。

しかし、辞めると言った時点で、当局からの連絡はなかった。完全に見切り発車だ。一番仲良くしてくれた先輩は「そこまで慎重に進めてるのに、最後に無茶するところあるよね。鹿児島人の性質か。」と言われた。確かにそうかもしれない。

幸い、辞めると言った翌日に当局からの連絡が入った。満額回答ではなかったが、かなりの前進だった。何もなくてもこの連絡で辞めていただろう。本当に綱渡りだった。

会社を辞めたからには、やることはますますたくさんある。新会社の設立、マーケティング、ホームページ作成、運営体制整備など挙げればきりがない。忙しくなりそうだが、これこそが求めていた形だ。後ろは振り向かずに突っ走ろうと思う。