著者のジェレミー・シーゲルはペンシルベニア大学・ウォートン校の金融学の教授である。彼は米国株の半世紀以上に亘るリターンについて調査した。その結果、バイ・アンド・ホールド戦略の肝を導き出した。重要なのはバリュエーション配当だ。

株式投資で儲けようと思ったら成長株に投資しなければならないというのはは間違いだ。1950~2003年のダウ平均採用銘柄の長期リターン(配当再投資)を調べたところ、業績の成長率ではIBMがスタンダード・オイルを圧倒的に上回る一方、リターンはスタンダード・オイルがIBMを上回るという結果が出た。

これには2つの要因がある。一つは「成長の罠」だ。成長が見込まれる株には多くの人の期待が集まり、その結果株価は過剰に高くなってしまう。高くなった株に投資しても、その期待を更に上回る結果を出さなければ株価は上昇しない。株価は期待を上回った時初めて上昇する。つまり、ハイ・バリュエーションの株に手を出しても成果を出すことは難しいということだ。

一方で、スタンダード・オイルのリターンを引き上げたのは配当の再投資である。スタンダード・オイルは成長性が評価されていなかったから株価は低く、その結果高い配当利回りとなっていた。その配当を再投資することで、安い株価で取得できたのである。ドル・コスト平均法の応用とも言えるかもしれない。

ただし、シーゲルの調査は期間があまりに長い。IBMとスタンダードオイルのケースでさえ半世紀以上に及んでいる。これでは僕のビジネスにはならない。

シーゲルの調査結果を応用すると、要は低いバリュエーションの株式を、ドル・コスト平均法の要領で「たくさん」買うということだ。たくさん買うためには現金が必要で、配当はその助けとなる。もちろん、それ以外の収入が重要なのは言うまでもない。

個別株を買うなら、バリュエーションの低い株を買うべきだ。ただし、少なくともその企業がその後も存続し、業績を維持できなければバリュエーションの意味はない。逆に言うと、会社として衰退を免れて存続する企業を、安い株価の時にたくさん買う戦略がいいということになる。この本のサブタイトルである「永続する会社が本当の利益をもたらす」というところに行き着く。

現実的には、不祥事や業績見通し悪化で市場が過剰にネガティブになっている銘柄を段階的に買うということだ。第一報で買い、そこから更に下がるようだったらラッキーと思って買い増しするといい。したがって、同じ銘柄を何回も推奨することはあり得る。(単純なナンピン買いとは一線を画したいところである。)

あとはとにかくバリュエーション、バリュエーション、バリュエーション。これをしつこく訴えていきたい。

株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす/日経BP社

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