経営学を学んだことのある人なら知らない人はいない「イノベーションのジレンマ」を提唱したクレイトン・クレステンセンが人生について書いた本。経営学の観点を交えつつ、非常に深い洞察が書かれている。

僕が一番重要だと感じたことは、人生の目的を明らかにし、それに対する投資を惜しまないということだ。これはまさにイノベーションのジレンマの観点である。短期的に収益を稼げる目の前のことに執着していては、やがてイノベーションにより廃れていってしまう。

クリステンセンはハーバード大学を卒業しているが、エリートとなった同級生が高い給料を得ながら幸せな家庭を築けなかったり、犯罪に手を染めてしまう場合だってある。彼らは目の前の社会的な「成功」を追い求めたために、本当に大事な物を見失ってしまったのだ。

報酬は大事であるが、あくまで衛生要因である。衛生要因とは、なかったら不満を増すものであるが、あっても満足度を増すものではないものである。「仕事に不満がある」の反対は「仕事に満足している」ではなく、「仕事に不満がない」ことである。(MBAでも学んだはずだが、この本で初めて本当の意味を理解した気がする。。。)

人生に満足するためには、本当にやりたいことを明らかにし、それに向けた戦略を立てることが重要だ。戦略には意図的戦略と創発的戦略がある。目的に向かって意図的戦略を立てつつ、それがそのままうまくいくことはない。出てきた問題に対して新たなやり方(創発的戦略)を試すことで、実現を目指すことが必要だ。EntrepreneurshipのCrazy Quiltの考え方と同じだ。

自分がなりたいと思っている姿を「自画像」として描き、その姿の自分を妥協してはいけない。1回でも心を許すと、そこからみるみるつけ込まれてしまう。家族との約束を1回でも仕事のために反故にしてしまったら、必ず2回目3回目が訪れてしまう。

クリステンセンとは相性が良いようで、会社の戦略についても人生についても共感するところが非常に多い。他の本もどんどん読みたいと思う。

イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ/翔泳社

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